総務省は21日の報告書で、太陽表面の爆発現象「太陽フレア」により通信や電力網の異常が発生するなどの被害想定を発表した。過去に大規模停電や人工衛星の喪失等の実害が国内外で発生しており、社会経済や国民生活に甚大な被害をもたらす恐れがあることから、観測や警報の強化が求められている。
総務省の有識者会議「宇宙天気予報の高度化の在り方に関する検討会」は報告書のなかで、およそ100年に1回の頻度で発生する極端な宇宙天気現象(エクストリーム・イベント)によって引き起こされる「最悪シナリオ」を想定した。各種無線通信が2週間にわたり断続的に使用できなくなることから、防災無線や列車の無線に支障が生じ、地方自治体や公共サービスの維持が困難になる。
携帯電話の通信も断続的な停止に見舞われ、緊急通報などもつながりにくい事態が発生する。衛星測位システム(GPS)も精度の大幅な劣化や通信不能となる。
対策が施されていない電力インフラでは保護装置の誤作動が発生し、広域停電が発生するほか、設備の損傷による電力供給への影響も出てくる。
最近の被害例としては、米宇宙ベンチャーのスペースX社(イーロン・マスク最高経営責任者)が2月に49機のスターリンク衛星を打ち上げたものの、太陽活動に起因する地磁気嵐の影響を受け、そのうちの40機が大気圏に再突入したことが発表されている。
米国や英国では、深刻な宇宙天気を国家として対処するべき「国家リスク」として位置づけており、対処戦略を策定している。報告書は、「宇宙天気予報士」の資格を新設することや、一定の知識や能力を持つ人材を育成すること、警報の体制強化を提言した。
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