中国政府の厳しい「ゼロコロナ」政策により、中国では「海外へ脱出する」「海外移住」「逃げる」を意味する「潤学」現象が起きている。多くの中国人は、中国に「未来がない」と悲観的になっている。
「潤学」の中国語発音表示はrun xueで、英訳はrunologyとなっている。英語の「run」にかけて、海外に逃げることを指す隠語である。
SNS上では「潤学」に関する投稿がここ3カ月で急増した。中国政府は3月末から国内最大の経済都市である上海市を約2カ月間封鎖、すべての経済活動を停止させ、市民約2600万人の外出や移動を厳しく禁止し、頻繁なPCR検査を強いた。それでも、中国政府は「ゼロコロナ」政策を堅持すると表明している。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)27日付は、米シンクタンク、米外交問題評議会(CFR)が行ったリサーチを引用し、中国政府が「ゼロコロナ」政策の堅持を強調した4月3日、中国SNS微信(ウィーチャット)で「移民」に関する検索数は440%増えたと報じた。
報道によると、中国人が移住先と考えている国の中で、カナダは最も人気だという。中国IT大手テンセント(騰訊控股)の調査では、3月28日~4月3日までの「カナダへ移住するための条件」というワードが含まれる検索数は2846%増加。移民仲介会社への問い合わせも急増したという。
CFRのキャシー・ファン(Kathy Huang)研究員は、当局の全面的な封鎖を経験している中国の人々は「中国がいくら繁栄しても政治力には勝てない」と気付いた、と指摘。「予測不可能で混沌とした封鎖措置」に閉じ込められた多くの中国人は、「今や永久に脱出することを夢見る」という。
ファン氏は、中国の富裕層だけでなく中間層も今、海外移住を検討し始めていると示した。
中国の人々は今、混乱に満ちた生活に強い不満を持ち「一時的な解決策ではなく、長期的な解決策を探している」と同氏は述べた。
いっぽう、中国政府は国民の出国規制を強化した。中国ネット上では、空港で出国手続きを行った際、出入国管理当局の職員にパスポートを破棄されたと訴える書き込みが相次いでいる。
今年2月に渡米したある中国人実業家はFT紙に対し、当局が出国規制を強化する前に中国から脱出できて「ラッキーだった」と話した。ただ実業家は空港で警察官らに出国の目的などについて執拗に聞かれたという。
中国政府の厳格な感染対策や米中関係、ウクライナ情勢などが原因で中国経済は急速に冷え込んでいる。
CFRのファン研究員は、中国人が国から逃げようとする試みは、中国政府に対する「忍耐力と信頼を失っていることを反映している」とした。
「中国人は抑圧的な政治環境と冷え込む経済に未来がないと感じている」
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