[台北 2日 ロイター] – アジア歴訪中のペロシ米下院議長が2日夜、台湾に到着した。米大統領の継承順位2位の下院議長による台湾訪問は25年ぶり。ペロシ氏は声明で、台湾に対する米国のコミットメントがこれまで以上に重要だと述べた。3日に蔡英文総統と会談する。
中国外務省は、ペロシ氏の訪台は台湾海峡の平和と安定を著しく損なうと非難。中国国防省は、ペロシ氏の台湾訪問を踏まえ、中国軍は厳戒態勢を敷き、「的を絞った軍事演習」を開始すると発表した。
<蔡英文総統と会談、人権主義活動家との会合にも出席>
ペロシ氏は他の6人の米議員と共に、米軍機でマレーシアから台北松山空港に到着。台湾のジョセフ・ウー外交部長(外相)らが空港で出迎えた。
ペロシ氏は到着後に声明を発表し、今回の訪台が「台湾の民主主義を支援するという米国の揺るぎないコミットメントを示す」とし、「台湾と米国の結束がかつてないほど重要になっている」と表明。「世界が独裁政治か民主政治かの選択に直面する中、2300万人の台湾市民と米国との連帯がこれまで以上に重要だ」とした。
また、台湾到着直後に公表された米紙ワシントン・ポストへの寄稿で、台湾の民主政治への取り組みを称賛する一方で、中国が近年、台湾との緊張を劇的に高めていると批判。「中国共産党による侵略加速に直面する中での米議員代表団の訪問は、米国が台湾を支持するという明確な声明としてみなされるべき」として訪台の理由を明かした。
台湾総統府によると、ペロシ氏は3日朝に蔡英文総統と会談。その後、昼食を共にする。
また複数の関係筋によると、ペロシ氏は3日に中国の人権問題に関連する活動家との会合に出席する。
米国のジョン・カービー報道官はペロシ氏の台湾到着後、今回の訪台は主権のほか、米国の長年の政策である「一つの中国政策」を損なうものではないと表明。「この訪問が危機や紛争に拍車をかける理由にはならない」とし、米国が中国の脅威や好戦的なレトリックに脅かされることはないと述べた。
ペロシ氏の訪台に合わせ、台北市内の超高層ビル「台北101」がライトアップされ、「ペロシ議長」「台湾へようこそ」などのメッセージを表示。ペロシ氏の車列に歓声を上げる市民の姿も見られた。
<中国は非難、「的を絞った軍事演習」実施へ>
中国外務省はペロシ氏の台湾到着直後に発表した声明で、ペロシ氏の台湾訪問で中米関係の政治的基盤が深刻な影響を受けると非難。米国に強い抗議を申し入れたと明らかにした。
また中国国防省は、中国軍は厳戒態勢を敷き「的を絞った軍事演習」を開始すると発表。人民解放軍東部戦区司令部も、2日夜から台湾周辺の空域および海域で合同軍事演習を実施し、台湾海峡での長距離実弾射撃などの演習を行う計画を示した。
これに対し台湾国防部(国防省)は、中国が今後数日間にわたり台湾周辺で軍事演習を行うと発表することにより主要な港や都市を脅かそうとしていると指摘。声明で、軍事演習は台湾市民を心理的に威嚇することを目的としているとしたほか、台湾軍は警戒レベルを「強化」しており、市民は心配する必要はないとした。
こうした中、関係筋によると、中国の軍用機数機が2日朝、台湾海峡を隔てる中央線の近くを飛行。台湾国防部は21機の中国機が2日に防空識別圏に入ったと明らかにし、台湾の軍隊は警戒レベルを「強化」したと表明した。
米海軍は原子力空母ロナルド・レーガンを含む4隻の軍艦を台湾東方の海域に配備。定期的な配備としている。
<ロシア、「米国の挑発行為」を非難>
ウクライナ侵攻で欧米と対立しているロシアは、ペロシの訪問を非難。ロシア外務省は、ペロシ米下院議長の台湾訪問は明らかな挑発行為であり、中国には自国の主権を守る措置を講じる権利があると表明。外務省のザハロワ報道官は「ロシアは『一つの中国政策』の原則を確認し、いかなる形であれ、台湾の独立に反対する」と述べた。
これに先立ち、ロシアはペロシ氏の訪台に関して中国を支持し、ペロシ氏が台湾を訪問すれば米国は中国と衝突することになると米政府に警告していた。
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