中国共産党の大規模軍事演習によって台湾海峡の緊張感が高まるなか、台湾の半導体大手・聯華電子(UMC)の曹興誠会長が約1億ドルの防衛費を拠出した。多くの民間人が戦闘訓練に自発的に参加するなど、防衛に対する民間の意識が高まっている。こうしたなか、台湾国防大学政治作戦学院の余宗基前院長は大紀元の取材に対し、台湾防衛の要(かなめ)は人々の防衛に対する意識だと指摘した。
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ーー台湾が抱える防衛面の課題とは。
なによりも重要なのは、台湾人が中国共産党についてはっきりとした認識を持ち、決して幻想を抱かないことだ。また、中国共産党の侵略に直面したとき、守銭奴のように経済的利益を最優先するのではなく、向かい撃つという確固たる決心を持つことができれば、台湾侵攻する中国共産党の意欲を削ることができる。
さらに、イスラエルで行われている全国民対象の国防教育は手本となる。イスラエル人は外部からの侵略戦争に対して、国を守らなければ祖国、家族、財産を全て失うことになる、ということをはっきりと認識している。
いっぽう、台湾海峡の緊張度が増しているにもかかわらず、台湾人はそれほど気に留めず、いつも通りだと思っているようだ。このような態度は兵士の士気を下げない点でメリットだが、一方で、実際に戦争状態に入った際に台湾人の心が折れてしまう懸念がある。
ロシアのウクライナ侵攻はいい例だ。当初ロシアは72時間で降伏させると意気込んでいたが今や5か月が経過し、戦争はこう着状態に陥っている。当初の予想を大きく覆した主な要因は、ウクライナ人の結束と防衛意識がロシアの打算をはるかに上回っていたことだ。
ーー中国共産党の認知作戦が台湾に与える影響とは。
中国共産党が認知作戦を行う目的は二つある。一つは、中共に有利な情報環境を作り出すこと。もう一つは、台湾内部の対立と恐怖を煽り、台湾人の結束を弱めて抵抗する意志を削ぐことである。
マルクス主義革命家のレーニンはかつて「最も強固な要塞は、内部から崩壊さなければならない」と語った。中共は、民主主義制度の言論の自由を利用してインターネット上で偽情報や悪意のある情報を流し、相手の認知に影響を与えようとする。
このような認知作戦への対策がなければ人々の戦意喪失を招き、長年整えた軍備がすべて水の泡と化す。
中共の認知作戦は手段を選ばない。相手の選挙期間中になると、大量の偽情報やフェイクの画像・動画がインターネット上に溢れかえる。中共が拡散する情報によって、政治的に影響を受ける可能性が高い。特にスマートフォンの普及率が高い台湾では喫緊の課題だ。
ーー中共の浸透作戦への対抗策とは。
中国共産党の統一戦線工作は、国内では統治を維持する道具として、国外では敵対国を内部から瓦解させる方策として長らく使われてきた。大枚を叩いてメディアやコンテンツ制作企業、広告業者を買収し、中国を美化するコンテンツを配信させる。同時に、批判的な情報は経済的な脅しで封じ込める。
相手を内部分裂させる統一戦線工作は中共の主要な手口の一つ。政界から政府機関、民間企業など至る所に中国共産党の組織を張り巡らせて情報収集と監視を行い、内側から侵食する。
中国共産党の統一戦線工作は多方面にわたり、多くの政府部門が関与している。したがって、台湾も国防部のみならず、政府各部門が一致団結して対応にあたるべきである。
ーー台湾人の意識改革について。
台湾人の意識改革を行わなければ、台湾の安全保障は成立しないことは中共もよくわかっている。70年前の国共内戦のときも、国民党軍は中共の手口にはまり、敗退することとなった。
軍事的に考えれば、台湾侵攻は海峡を跨ぐ上陸作戦になるため、中共は莫大な犠牲を払わざるを得ない。また、陰りが見える今日の中国経済では、戦争を継続することも困難だろう。
毛沢東はかつて「勝算のない戦いはせず、スパイ工作のない戦いもしない」と言っていた。したがって、中国共産党が台湾侵攻する前提として、台湾での浸透工作が成功している必要があると考える。今後、台湾への浸透工作はさらに激しくなるだろう。
このような外部からの圧力に直面する今、台湾人の意識改革が急務となる。台湾の人々が一致団結し、ウクライナ人のように徹底抗戦する意志を示すことができれば、民主主義陣営の支援も届き、中国共産党の台湾侵攻は相当難しくなるだろう。
(翻訳編集・王天雨、Wenliang Wang)
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