露大統領の核の脅し…NATO事務総長「危険で無謀な言説」

2022/10/09 更新: 2022/10/09

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の核兵器使用に関する無責任な発言は、インド太平洋の核をめぐる利害関係を変える可能性がある。

2月に露軍がウクライナに侵攻して以来、プーチン大統領は核戦争の脅しを公然と続けている。9月21日には、プーチン大統領はロシアは「さまざまな破壊手段を持っている…我が国の領土的完全性が脅かされているとき、当然、我々はロシアと我が国の人民を保護するために我々の手になるあらゆる手段を使用するだろう。 これははったりではない」とした上で、 「核兵器で我々を脅そうとする者たちは、風見計が転回して自分たちの方に向くこともあると知っておくべきだ」と述べたと報道されるなど、核攻撃の排除を拒否している。

ロイター通信が報じたところによると、イェンス・ストルテンベルグNATO事務局長は、プーチン氏の最近のコメントを「危険で無謀な言説」と呼んだ。

米国をはじめとする国々もプーチン大統領の挑発を非難している。

9月25日、アントニー・ブリンケン米国国務長官はCBSニュースに対し、「核兵器に関する曖昧な言い方を止めるよう、公式にも私的にもロシアに対する姿勢を非常に明確にしてきた」とした上で、「いかなる核兵器の使用も、使用国にとっては当然ながら、他の多くの国にとっても壊滅的な影響を与えるだろう」と述べた。

ロシアによる無謀な侵攻以来のプーチンの言動は、すでに世界中の核兵器の脅威の増大を引き起こしており、北朝鮮の金正恩最高指導者は9月にも核の傾向と発言を高めた。

これを受けて、9月のホワイトハウス声明によると、韓国政府と米国政府は朝鮮半島の非核化へのコミットメントを再確認し、北朝鮮政府の「国連安全保障理事会の決議に違反する挑発的な核発言と弾道ミサイル発射」を非難した。 AP通信が報じたところによると、韓国と米国は今後の挑発への対応について日本との三国間協力を含めることをについても話し合った。

延世大学北朝鮮研究所のキム・ジョンデ(Kim Jong-dae)教授は、フランス通信社(Agence France-Presse)に対して「冷戦時代の教義とは対照的に、ある国が核兵器を使用することに寛容な新時代を迎えている」と述べ、 北朝鮮の指導者が9月に自国を「不可逆的」な核保有国とし、核兵器の強制使用の条件を定める「第一攻撃」原則を制定するために、自国の法律を変えたことに言及した。

さらに、北朝鮮による「自動的」な第一攻撃と戦術的核配備の導入は、「世界中で変化しつつある核の力学に対する金正恩の反応を反映している」と述べた。

日本の岸田文雄首相は6月中旬、「ロシアの核兵器使用の脅威の影響は、脅威そのものに限定されない。 こうした脅威はすでに核不拡散体制に深刻な被害をもたらしている可能性がある」と、国際戦略研究所が主催し、シンガポールで毎年開催されている国際安全保障会議「シャングリラ会合」で述べた。

さらに、岸田首相は「ウクライナ危機の以前から、北朝鮮はICBM級ミサイルを含む弾道ミサイルを頻繁に繰り返し発射しており、再び核実験が迫っていることを非常に懸念している」とし、 「日本付近で見られる核兵器を含む不透明な軍事力の蓄積は、地域の安全保障上の深刻な懸念となっている」、さらに、

「今日のウクライナが明日の東アジアになるのではないかという強い緊迫感がある」と発言した。

プーチン大統領は、紛争中に核兵器を利用して圧力をかけることができることを示した。

「北朝鮮が核兵器の保有で勢いづき、韓国や日本と戦争できるかもしれないと考える状況になっているのではないか」と 民主主義防衛基金(FDD)のアンソニー・ルッジェーロ上級研究員は、6月に「ワシントン・エグザミナー」誌に対してこう述べた上で、 「そして、もう一つ、威圧という側面もある。実際の紛争の可能性は、核兵器計画に支えられ、北朝鮮をさらに攻撃的にすることを可能にする。 そのことを日本は懸念しているのではないか」と語った。

一方で、中国も核武装姿勢を強めており、プーチン大統領の言動は中国共産党の軍事指導者を勢いづけた可能性があると一部の専門家は懸念している。

中国共産党は、2018年以降、陸・海・空から運用できる核兵器庫の規模と範囲を拡大しており、ますます先進的な弾道ミサイルシステムを増やしている。

ワシントンポスト紙によると、「核の力を利用した彼らの言動が飛躍的に拡大するのを、我々は目の当たりにしてきた。私の意見では、これは最小限の抑止力すら反映していない。 彼らは事実上、核の三本柱を有している」と9月中旬、米国空軍のアンソニー・コットン司令官は、米国戦略司令部を率いるための確認ヒアリングで、議員たちに語った。

独立系ニュースウェブサイト「シンガポール・ポスト」の2022年9月27日付の報道によると、中国の核戦力は2030年までに4倍になると予想されている。

三国間核競争時代の到来、プーチン大統領の発言、核の脅威環境の変化により、1970年に施行され、191か国が加盟する核拡散防止条約の強化を求める声が、国際連合などの国際統治機関、同盟国、パートナー国などから再び高まっている。 同条約はこれまで定期的に更新されてきたが、2022年8月下旬には参加国はこの重要な条約の改定について合意に達することができなかった。

アントニオ・グテーレス国連事務総長のはその後の声明で、「厳しい国際環境と、核兵器が偶発的または誤算を通じて使用されるリスクが高まる中、緊急かつ断固たる措置が必要だ」と述べた。

9月26日、ロシアのウクライナ戦争をめぐり国際的な緊張が高まり続けている中、グテーレス事務局長は世界的な核兵器の排除を呼びかけた。

「冷戦により、人類は消滅寸前のところまで行った。 ベルリンの壁崩壊から数十年が経った今、再び核の剣の音が鳴り響いている」とグテーレス事務局長は、2013年に始まった国連の核兵器の全面的廃絶のための国際デーを記念したスピーチで述べた。

さらに、「どんな国でも核戦争を戦えば勝利できるという考えは狂気の沙汰だ。 核兵器の使用は人類のアルマゲドンを引き起こすだろう。 我々は核から退く必要がある」と語った。

Indo-Pacific Defence Forum
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