11月4日に中国による2年ぶり4回目の無制御降下となった、大規模なロケットブースターの太平洋落下を受けて高まった緊張がようやく沈静に向かっている。
死傷者の報告はなかったが、この事故によりスペインとフランスは一部地域の上空を一時閉鎖し、再突入を追跡していた米国と欧州の宇宙機関からは厳しい反応があった。 ブースターはメキシコのアカプルコの南西約1000kmの地点に着水した。
NASAのビル・ネルソン長官は声明で、「今回の中国の制御不能な再突入は2020年5月以降4回目で、いずれも過去30年間で最大規模だった」とした上で、 「宇宙開発国が、宇宙活動において責任と透明性を持ち、確立されたベストプラクティスに従うことが重要だ。特に、制御不能な大型ロケット本体の破片が再突入すると、大きな損害や人命の喪失につながる可能性が非常に高い」と述べた。
欧州宇宙機関のヨーゼフ・アシュバッハ長官も同様に批判的で、ツイッターに「今日の長征5号Bの制御不能な再突入は、持続不可能な宇宙飛行の実施によって宇宙と地上の重要インフラに対するリスクが高まっていることを強調している」と投稿している。
米国宇宙軍司令部(USPACECOM)によると、約21トンの長征5号Bロケットステージはまず、 打ち上げから約4日後の東部夏時間(EDT)午前6時1分に太平洋の中南部で再突入した。 米国宇宙軍司令部は、東部夏時間午前6時6分に北東太平洋上で 2回目の再突入を確認した。
中国有人宇宙局(CMSA)によると、このロケットは中国の天宮宇宙ステーションの最終モジュールを運搬し、打ち上げから約13時間後にステーションとドッキングした。 同機関は、最終段階の破片が西経101.9度、北緯9.9度の座標で太平洋に落下したことを指摘し、「ほとんどの部品が再突入時に破壊された」と述べた以外は、米国と欧州の懸念に直接回答していない。
ロイター通信によると、中国外務省の趙立堅報道官は、再突入によって航空活動や地上に被害が及ぶ確率は「極めて低い」と述べた。
しかし、ロケットが南ヨーロッパなど人口密集地の上空を通過するコースがいくつか候補に挙がっていた。
欧州連合航空安全局による11月3日の速報は、再突入がポルトガル、スペイン、フランス、イタリア、ギリシャ、キプロスの空域に影響を及ぼす可能性があると警告し、 さらに「CZ-5Bの質量は17トンから23トンと推定され、近年、大気圏に再突入した破片の中で最大級である」と報じた。
領空閉鎖は約1時間続き、地中海に浮かぶコルシカ島の南側やカタルーニャ地方などスペイン上空では数百便の遅れが発生した。
ロイター通信によると、長征5号Bは2020年5月の初号機打ち上げ以来、4回目の飛行となった。 最初のミッションでは、ブースターの破片がコートジボワールに落下し、西アフリカの複数の建物に被害を与えた。 2機目の残骸はインド洋に、3機目の残骸はフィリピンのスールー海に落下した。
中国有人宇宙局によると、最終モジュールは11月1日未明に天宮ステーションに到着した。
AP通信によると、このモジュールは10月31日に海南省にある文昌衛星発射センターから打ち上げられたという。 飛行とドッキングのミッションは約13時間に及んだ。
このモジュールは「夢天」と呼ばれ、「問天」と一緒に宇宙ステーションの2番目の実験モジュールとして「天宮」と総称されている。 どちらも、クルーが生活する「天河」のコアモジュールとつながっている。
リュー・ヤン(劉洋)、チェン・ドン(陳冬)、カイ・シュチェ(蔡旭哲)の女性1名と男性2名の宇宙飛行士で構成されるクルーは、2022年6月初旬に到着し、6か月間滞在して、ステーションの組み立てを完了し、宇宙遊泳や追加の実験を行う予定だ。
AP通信によると、このステーションは夢天が追加した32立方メートルを含め、全部で110立方メートルの与圧された内部空間で構成されている。 中国の有人宇宙開発は1992年に正式にスタートした。 夢天の打ち上げは、25回目のミッションだった。
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