韓国の首都ソウルにある中華料理店が、中国当局が海外に設置する「警察署」になっているとの疑惑が浮上している。料理店支配人は12月29日、店舗前で記者会見を開き疑惑を否定したが、中国当局との関係について言及は避けた。
スペイン拠点の人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」が発表した報告書によれば、中国当局は在外華人の異見者を強迫的な方法で帰国させる「越境弾圧」の拠点を海外に設置している。「海外警察署」と呼ばれ世界53か国、計102か所に存在する。
同団体が12月初旬に発表した更新版報告書によれば、韓国にはソウル市松坡(ソンパ)区にある中華料理店「東方明珠」がそれにあたるとした。
12月29日、当該店舗の支配人、王海軍(ワン・ハイジュイン)氏は店舗前で記者会見を開き、その疑惑を否定。「利害関係者であれ政府官庁であれ、理由もなく圧迫と妨害を加えるのは不合理だ」とした。いっぽう、疑いについて具体的な釈明はなく、会見後の質疑応答にも応じなかった。
この日、王海軍氏は自身と韓国メディア幹部との関係について強調し、中国警察との関係を報道した一部媒体を「叱責」した。
「2022年8月19日、東方明珠で開いた『中韓国交正常化30周年祝賀メディア人連合会』を忘れてしまったのか。記者は知らないかもしれないが、経営陣や支局長、社長に聞いてみてほしい。本当に私のことを知らないのか?一緒に撮った写真を見せようか」
王海軍氏は韓国で20年近い在韓華人で、韓華中国和平統一促進連合会会長、中国在韓僑民協会の総会長、社団法人中華国際文化交流協会の会長など中国当局に近い組織の幹部を務めてきた。また、中国の地上波テレビ局協力会社であるHG文化メディアの代表でもある。
王氏は以前メディアで「在韓華僑として、祖国統一と民族の偉大なる復興を実現するために、悔いの残らない貢献をする」と語ったこともある。
中央日報によれば、韓国当局は同月20日にも、この中国海外警察について主権侵害や司法妨害などの疑いで調査を始めている。また、この中華料理店はソウル西部の国会議事堂真正面の9階建ビルに事務所を構え、同じビルに中国中央テレビも入っていると指摘した。
セーフガード・ディフェンダーズは韓国当局による中国警察の調査開始を歓迎し、情報分析と洞察を提供といった面で支援できると語っている。英字紙コリア・タイムスの取材に応じた同団体キャンペーンディレクターのローラ・ハース氏は「基本的自由と民主主義に脅かす、国際秩序の露骨な違反行為に対抗するため、民主主義国が協働するよう希望する」と述べた。
在韓中国大使館は疑惑を強く否定。「海外警察署」なるものは一切存在せず、この一件に関するいかなる報道も根拠がないとした。いっぽう、疑惑についての具体的な説明はなかった。
韓国外務省は、今現在各国と連携して状況を確認しているところであり、「現時点で公表できる情報はない」としている。
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