アップルの脱中国依存で増えるインド拠点 進む「チャイナプラスワン」

2023/02/18 更新: 2023/02/15

昨年、中国政府の「ゼロコロナ」政策や上海市のロックダウン、米中関係緊張の高まりにより、サプライチェーン(供給網)を中国に一極集中するリスクが一段と浮き彫りになった。中国への製造業依存度を減らすために、中国以外の国や地域へ分散的に投資する「チャイナプラスワン」の動きが目立つなか、米アップルの中国に代わる生産拠点として名乗りを挙げているのがインドだ。

インドのピユシュ・ゴヤル商工相は先月、アップル製品の生産比率を25%引き上げると発表した。 現在、インドでのアップルの生産比率は5〜7%程度。

1月23日の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて開かれたビジネス会合「B20サミット」でゴヤル氏は、アップルはインドの製造業にとって「もう1つのサクセスストーリー」と強調。「インド発の最新モデル、……そしてそれに相応するエコシステム、サプライチェーンを立ち上げた」とした。

インドの強みとは

14億人超の人口を抱えるインドは、重要な技術的スキルを持つ労働者を含め、大規模で安価な労働力があり、製造業にとって大きな魅力の一つだ。

国際通貨基金(IMF)によると、世界的なリセッション(景気後退)が懸念されるなかでも、インドのGDP成長率は堅調に推移すると予測されており、2027年には名目GDPが日本を抜いて世界第3位となると見込まれている。

インドは、購買力が高い中間所得者層の増加などにより、底堅い内需が支えとなって高成長が期待されており、iPhone生産拠点見直しの「チャイナプラスワン」において外資企業による電子機器産業への大型投資が続くベトナムと並ぶ。

インドで現在、iPhone(アイフォン)を製造しているのは、フォックスコン、和碩聯合科技(ペガトロン)、緯創資通(ウィストロン)の3社。中国以外で新型iPhoneの生産が始まるのは通常数カ月遅れるが、昨年発売の最新モデル「iPhone14」生産は中国とインドとの生産開始時期のタイムラグが縮められた。

またインド政府は「メイク・イン・インディア」政策を推進しており、スマホ工場の外資誘致策を進めている。誘致の成功事例として、韓国のサムスン電子は、中国からスマートフォン組立工場をインドに移管した。

中国で人件費が上昇していることを受け、サムスンは中国以外での供給網の多角化を図った。 サムスンは現在、スマートフォン製造の拠点をベトナムとインドに置き、インドはサムスン製品の世界シェア約20%を占めている。

問われるiPhone製造ニーズへの対応

昨年半ばから、アップルはインドへの投資を増やしているが、インドがアップルの「メイド・イン・インディア」目標を達成できるかどうかは明確ではない。

CNNによると、市場調査機関カウンターポイントリサーチのリサーチディレクターであるタルン・パタック氏は、「理論的には可能だが、一朝一夕にはいかない」と述べた。

パタック氏は、アップルの対中依存は中国政府が電子機器製造のエコシステム全体の開発に25年近く投資してきた結果であると指摘。「アップル端末の95%近くは中国製だ」と付け加えた。

アップル社のティム・クック最高経営責任者(CEO)は、2日の2023年度第1四半期の決算説明会で、「インドは我々にとって非常に興味深い市場であり、主要な焦点だ」とし、「インド事業を見ると、四半期ベースで過去最高の売上高を記録し、前年同期比でも非常に力強い二桁成長を達成した」と述べた。

しかし、アップルがインドに中国式の巨大な生産拠点を建設するのには、課題も多い。パタック氏によれば、インドは物流やインフラ整備、労働者の確保に至るまで、さまざまな問題を考慮する必要があるという。

「現地で部品を調達する必要がある。つまり、サプライチェーンの関連企業の多くがインドに進出する必要がある」とパタック氏は指摘した。

アップルが直面する「チャイナリスク」

アップルが2日に発表した2023年会計年度第1四半期決算では、アップルの総売上高は前年同期比で5%減の1172億ドルなった。2019年以来の減収で、ウォール街の予想よりも大幅に減少した。

アップル減収の背景には中国での新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウン(都市封鎖)がある。昨年11月、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業のiPhone工場がある中国河南省の工業団地「鄭州航空港経済総合実験区」が封鎖された。

また、iPhone工場一帯で待遇改善などをめぐり大規模な抗議デモが発生し、従業員が大量辞職。アップルは、この工場を「著しく低下した生産能力」で操業していると表現した。

中国国内問題のほか、近年台湾海峡や南シナ海をめぐり米中関係が緊迫の度合いを増していることもアップルにとって懸念事項だ。昨年10月、バイデン政権は半導体製造装置の対中輸出規制の適用対象を大幅に拡大する一連の包括的な措置を発表し、米政府が指定する中国企業に輸出する場合、商務省の許可が必要になった。

張婷
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