日本と韓国は臓器移植についてドナー不足という共通課題に直面する。この両国に中国が加わり、ドナーの提供臓器の情報ネットワークを3カ国で作成しようとの動きがある。韓国の倫理団体は、中国の臓器移植は良心の囚人が犠牲になってきたとの経緯から、この連帯は「恥知らずだ」と批判の声をあげる。
昨年11月、釜山市で「第1回韓中日アジア臓器提供国際シンポジウム」が開かれた。3カ国の関係者が参加する会議では、効率的な臓器提供の協力対策について意見が交わされた。
主催側は会議の中で「韓中日が臓器提供者情報を共有し、ジェット機などの空輸を通じて臓器を輸送する」案を提示した。こうした取り組みは、ドイツやオランダなど欧州8カ国で行う国家間臓器移植協力システム「ユーロトランスプラント(ET)」を模したものだという。
どのような仕組みか。主催側の説明によると、日中韓の枠組みで移植希望者の生体情報を管理し、ドナーが現れ次第、待機名簿から素早くマッチングさせる仕組みだという。
韓国臓器提供協会のカン・チヨン会長は2月までに中央日報の取材に応じ、ETにならう仕組みとして「3カ国は地理的に隣接しており、ETのような輸送共助が可能だ」と語った。
主催は韓国臓器提供協会だが、現地の移植界では「主要な組織ではなく、名前も知られていない」と韓国側の関係者は語る。韓国の主なプラットフォームは韓国臓器提供機構(KODA)だ。
日本側の出席者である愛知県の医療団体と医師に取材を申し込んだが、当人の研究に関するものではないとして、回答を辞退した。
中国を含む枠組みでドナー共有…「恥ずべきこと」
いっぽう、韓国臓器移植倫理協会(KAEOT)は、3カ国の臓器移植情報ネットワークの作成に反対している。「強制臓器摘出問題を抱える中国と連帯してネットワークを作ることは、犯罪行為の加担となる」と批判する声明を発表した。
11月のシンポジウムに、中国代表として北京大学附属第三医院泌尿器センター長・馬潞林氏の名前がある。馬氏はかつて強制臓器摘出の疑いがあると国際人権団体より指摘された人物でもある。
KAEOTは、3カ国の臓器共有ネットワークづくりを推進するため、中国共産党は日本や韓国の臓器移植希望者に「無償で臓器を提供する可能性もゼロではないだろう」と分析した。
「命のバトン」と銘打って、中国側が協力した日中間の心臓移植の事例がある。コロナ禍で厳格な海外渡航制限が敷かれる2020年、中国当局は心臓移植を必要とする中国人留学生のために、愛知発武漢着のチャーター機手配を支援し、武漢協和病院へと移送した。到着日からわずか10日間で4つの心臓を提供されたという。つまり、留学生の手術が成功するまで「命の提供」が続いた。
中国臓器移植問題に詳しいジャーナリストの野村旗守氏(故人)は以前、著書のなかで「コロナ禍で当局の協力を経たこの留学生の移植手術は、中国臓器移植界の実績を内外に広げるため広告的な役割があったのではないか」と指摘していた。
台湾・香港を巻き込んだ共有枠 推進する中国共産党
中国共産党が目下注目するのは、中国本土の臓器提供・移植ネットワークを香港やマカオ、台湾へと拡げていくことだ。1月、中国の移植臓器分配共有管理システム(COTRS)を担う委員会は2023年度第一回年次会を開き、臓器提供網を拡大していく考えを示した。
黄潔夫氏は中国臓器移植を拡大させた中国共産党高官として知られる。同氏は会議でいわゆる「一国二制度の精神」で香港、マカオとの臓器共有メカニズムを推進し、本土と台湾は「両岸一家、血は水より濃い」と称して同じ共有メカニズムを作ることを推すと述べた。
日本や韓国、台湾の議員や専門家は人道犯罪の濃厚な中国臓器移植の枠組みに加わることがないよう呼びかける。
ニューヨーク州弁護士で、台湾の反臓器収奪国際医師連盟の顧問弁護士を務める朱婉琪氏は、中国が関わるドナー共有は「人道的な協力ではなく、盗まれた臓器(に関する罪を)ホワイトウォッシュしようとしているのではないか」と推察した。
SMG地方議員ネットワーク代表世話人を務める逗子市議会議員の丸山治章氏は、人権団体の報告書や欧米議会の決議により、中国共産党が人類史上最も邪悪な「生きた人から臓器を強制的に摘出する」といった悪行を行っていることは明らかであると強調。人権と倫理を重視する日本国民が出所不明な臓器を移植手術に使用することは避けるべきだと訴え、日本政府と国際社会はこの中国による臓器共有メカニズムに反対するよう呼びかけた。
韓国啓明大学人文国際学部の中国学教授イ・ジヨン氏は「もし日本や台湾、韓国が中国の臓器共有の枠組みに入れば、より多くの需要が生まれ、より多くの無実の中国人が巻き込まれることになる」と指摘した。 アジア地域そして全世界がこの犯罪を直視し、中国共産党の犯罪を止めるよう協働すべきだと訴えた。
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