割り込みを注意され「逆ギレする女性」が炎上 関連グッズで「ひと儲け」を狙う企業も出現

2023/05/12 更新: 2023/05/26

中国の労働節(メーデー)をはさむ大型連休のなか、浙江省金華市のとある景勝地の入口ちかくで今回の「騒動」は起きた。

「並んでいる列に割り込みをした」とされる2人の女性が、割り込みを注意した男性に対して猛烈に逆ギレ。2人ともライオンが噛みつくような凄まじい表情で、ヒステリックな反応を示している動画が中国のSNSを中心に広まり、華人圏の間でも炎上している。

あっという間に「関連グッズ」が出現

いま中国で「金華事件」とも呼ばれている同事件は、わずか1日でネット上で炎上したばかりではない。2人の怒り顔のイラストを使った衣服や車のステッカーなどの関連グッズがすぐに登場し、中国最大手ECモール「タオバオ(淘宝 Taobao)」でも売られている。

とくに、2人のうち年配の女性が発した罵声「あたしたちを、なめんじゃないよ!(我们不是好惹的)」は、この事件を象徴するキャッチフレーズとなった。この言葉は、これを機会に「ひと儲け」を狙う企業によって、即時に売り出された関連グッズにも記されている。

購入した関連グッズを実際に使用している写真も、中国のSNSなどに投稿されている。そうした関連グッズの一つとみられる「玄関マット」には、別踩我(踏むな!)など2人が発言していない言葉まで入れられてしまった。

関連グッズなど。(中国のSNSより)

また中国SNSによると、あまりにも「有名」になったこの2人について、面倒に巻き込まれるのを懸念した旅館が、当日の夜に予定されていた宿泊を拒否する事態まで起きていた。その投稿者は「いくら割り込みをしたからといって、旅館が宿泊拒否するのは、おかしくないか?」と疑問を呈している。

事件の翌日、本当に事件の当事者であるかどうかは確認できないが、女性2人のうちの1人とみられるユーザーが、ネット上でこの事件に関して説明を行った。

その投稿によると、2人はネット上で言われているような「母と娘」ではなく「祖母と孫」だという。また、ネット上では列へ割り込んだと決めつけられているが、実際には「並ぶ列を間違えただけだ」と釈明し、この騒ぎの早期収束を願うと述べている。

「本当の社会正義は、どこへ行った?」

今回の事件を受けて、いま中国のネット上には、女性2人の激しい言動を批判する側と、「これはネット暴力」だとして世論の過熱を抑制する側の両陣営に分かれている模様。なかでも以下のコメントが印象的だった。

「列に割り込むのは、もちろん良くないことだ。しかし、彼女たちをここまでバッシングするのはやり過ぎだろう。列の割り込みや女性のヒステリックな言動に神経を逆なでされ、自分の正義感を刺激されて、彼女たちに容赦ない攻撃を向ける人たちよ。いま中国では、あれほど多くの重大な社会的事件が起きているのに、そっちは批判しないのか。あなたたちの正義感は、どこへ行った?」

当該の女性2人が、興奮のあまり常軌を逸していたのは事実だろう。ただ、それをネット上でバッシングすることに熱を帯びるのは、いかがなものか、と同コメントは指摘する。ネット上で他人を攻撃して、日頃たまった自分の留飲を下げるだけならば、それは社会正義にはほど遠い。

中国共産党の政権下にある今の中国で、人間の理性や道徳心が、なぜここまで失われたのか。

皮肉たっぷりで、人をからかう関連グッズを面白がるばかりでなく、中国社会におけるこの問題を真剣に考えなければ、誰もが「怒り狂う人間」になり得る。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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