2016年米大統領選におけるロシア介入疑惑をめぐって、米司法省が任命したジョン・ダーラム特別検察官は15日、連邦捜査局(FBI)の捜査は不適切であると結論づけた。捜査には法規定の逸脱や職務怠慢等の問題があり、トランプ氏の政敵が提供する情報に依拠していたことも指摘された。
報告では、FBIが捜査に際しトランプ陣営とヒラリー陣営に対して全く異なる対応を取ったことが明らかになった。FBIの捜査は「権力濫用」であり、大統領選への干渉であるとして非難する声が上がっている。
捜査の欠陥とトランプ氏への敵意
コードネーム「クロスファイア・ハリケーン」と題するFBIの大規模な捜査活動はトランプ氏の政権運営に大きな影響を与えた。「捜査活動の重要な部分において、FBIの対応に重大な欠陥があったことを客観的事実が示している」と報告書は記した。
報告書によると、FBIは重要な証人への尋問や他の諜報機関への裏取り調査を行わず、「分析前の情報を評価する際に使われる標準的な分析ツール」の使用も怠っていた。もしFBIが捜査に関する規定を守っていたならば、捜査員は、トランプ氏本人とその選挙スタッフがロシア諜報員と接触した証拠をFBIもCIAも持っていないことを発見できていたはずだ、と報告書は記した。
FBIの遵法意識の欠如も問題となった。FBI捜査官はトランプ陣営のカーター・ペイジ氏を監視する正当な理由がないと分かっているにもかかわらず、秘密法廷令状の申請を複数回行っていたという。
ダーラム氏はこのFBIによる不適当な作業の動機を特定していないが、当時の捜査責任者だったピーター・ストラック氏は「トランプ氏に明白な敵対感情を抱いていた」と指摘した。
差別的な取り扱い
ダーラム氏によると、FBIはトランプ氏と対立候補ヒラリー・クリントン元国務長官に対し、まるで異なる対応をしていた。
クリントン氏は私用メールを公務で使用したとして、国務省の規則違反に問われていた。しかし、FBIと司法省はクリントン陣営への捜査を制限し、選挙までの数か月間は捜査活動をほとんど行わなかった。
情報筋によれば、クリントン陣営はロシアのプーチン大統領と結びつけることでトランプ氏を中傷する計画を立てていた。その狙いは、クリントン氏の私用メール送信に関するスキャンダルから注意を逸らすためだったという。
「FBIは、分析を経ず検証されていない情報に基づき、トランプ陣営にいるとされる未知の人物に対して全面的な調査を展開した。これとは異なり、クリントン陣営の『計画』とされる別件に対しては、いかなる調査も始めず、分析要員を採用することもなく、情報に関する分析報告さえも出さなかった」。
いっぽう、クリントン陣営の「計画」に関する情報は、FBIが受領後迅速に政府上層部に報告すべきものにもかかわらず、報告はなかったとダーラム氏は記した。
「クリントン陣営の『計画』に関する情報は、その受領から数日以内にCIA長官が大統領や副大統領、司法長官、FBI長官、および他の高級官僚に説明するほど重要だった。にもかかわらず、報告されなかった」
エポックタイムズはクリントン財団にコメントを求めた。
トランプ氏「米国民は騙されている」
トランプ前大統領は報告書の発表を受けて、「おお!ダーラム特別検察官は、FBIはトランプのロシア疑惑に関する捜査を始めるべきでなかったと結論付けた」と自身のSNS、トゥルース・ソーシャルに投稿した。「アメリカの偉大さを見たくない者によって人々が騙されているように、アメリカ国民は騙されているのだ」。
別の声明では「ダーラム氏の報告書は、私とアメリカ国民に対する民主党のデマを詳細に書いている。2020年の大統領選挙における不正行為と同等のものか、それ以上に深刻だ」と主張した。
そして「この完全に違法な行為は選挙に大きな影響を与えた。正直なメディアがあるから、私たちは世紀の犯罪に目を向けているのだ」と記した。
トランプ陣営のスポークスマン、スティーブン・チャン氏はエポックタイムズに宛てたメッセージのなかで「同報告書は、政府内の反トランプ活動家たちが嘘と欺瞞を使い、トランプ大統領を不当に告発しようとする組織的な取り組みがあったことを証明している」と主張した。
「ロシアとの共謀というデマの黒幕は、トランプ大統領とアメリカ国民から大統領の座を奪うことを画策する、司法省とFBIのディープステート関係者だ」。
上院議員「極度の権力乱用」
15日にダーラム氏の報告書が発表されたことを受けて、下院司法委員会委員長のジム・ジョーダン議員(共和、オハイオ州)は証言するよう求めた。
「来週、ジョン・ダーラム特別検察官に証言してもらうよう司法省に連絡した」とジョーダン氏はツイートした。別の投稿では、5月25日に公聴会が開催されることを念頭に、10分間の冒頭陳述で所見を要約し、委員からの質問に答えるよう求めた。
いっぽう、上院情報特別委員会副委員長のマルコ・ルビオ議員(共和、フロリダ州)は、FBIによる不適切な捜査は「極度の権力乱用」であるとして、説明責任を果たすよう求めた。
「ダーラム氏の報告書は、連邦法執行機関による重大かつ許しがたい違反を詳述している」。ルビオ氏は声明でこのように記した。「改ざんされた文書や党派の賛否に基づく捜査は、極度な権力乱用だ。米国の安全を守るために設計された国家安全保障ツールを政治的利益のために利用することは正当化され得ない」。
ルビオ議員はさらに「そのような行為に加担した者は、大統領選挙に対する妨害のみならず、我々の社会組織に与えた損害についても責任を負わなければならない。アメリカとその社会は彼らの行為によって弱まっている。FBIなどが信頼を取り戻すには年数がかかるだろう」と綴った。
「FBIの諜報活動を厳格に監視することは、上院情報特別委員会の最優先事項とすべきである」。
7年越しのピリオド
FBIは「法律を厳格に遵守するという重要な使命」を守ることができなかったとダーラム氏は結論づけた。
報告書では「記録文献が示すように、FBIは『クロスファイア・ハリケーン』に関する活動において、大きな機能不全に陥り、失敗を喫した。米国民の負託に応えなかっただけではなく、捜査活動の結果としてFBIにもたらされたマイナス評価による損害を防ぐこともできなかった」と酷評した。
FBIの指導原則である「信義・勇気・保全」が捜査官の心に浸透しなければ、これ以上規則を増やしトレーニングを強化しても、「全くの無意味」であると指摘した。
エポックタイムズの取材に対し、FBIはこう回答した。「ダーラム特別検察官が捜査した2016年と2017年の行為について、現在のFBI指導部はすでに是正措置を施している」。「これらの改革が2016年に実施されていれば、報告書で指摘された誤りは防げたはずだ」。
いっぽう、ダーラム特別検察官は、司法省とFBIに対して現行ガイドラインや政策の大規模な変更を推奨するものではないとし、「新しい規則を考案するのではなく、以前からあるルールに忠実に従うことこそ正しい道だ」と記した。
7年の歳月を経て、米国政界そして社会全体に分断をもたらした事件は、ようやくピリオドを打たれた。
Zachary Stieber、Petr Svab、Ivan Pentchoukov、Jack Philips、Janice Hisile、Gary Baiがこの報道に貢献しました。
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