LGBT理解増進法案が16日、参院本会議で可決した。LGBTに特化した差別禁止法はG7で前例がなく(外務省答弁)、日本が初めて。議会では与党議員から女性の権利侵害や子供の性教育をめぐり疑義が呈され、本会議採択では少なくとも与党議員3人が退席した。
参院内閣委員会通過から1週間のスピード採決となった。16日の本会議で、自民、公明、維新、国民民主の4党の賛成多数で可決、成立した。自民党の山東昭子議員、青山繁晴議員、和田政宗議員が本会議場を出て棄権した。
16日、野党から不信任案が提出されたが、否決された。岸田文雄首相の衆院解散の「大義」と目されたが、夜の会見で「今国会での解散はしない」と明言した。
これを受けて、青山繁晴参院議員は「LGBT法案を廃案にする最後の道は解散に打って出ることだった」と15日のブログ投稿で無念さをにじませた。自民党執行部が「このまま総選挙に突っ込めば、自由民主党が岩盤の支持層をはじめ広範囲に支持を喪い、負ける」との見通しに恐れを抱き、解散を先送りしたとの推測を示した。
同じく退席した和田政宗氏は「数多くの国民の声、自民党員の声、自民党支持者の声を受け止めた結果です。国民のこと、そして、自民党のことを考え行動した」と説明した。
ジャーナリストの門田隆将氏の党内民主主義さえ軽んじられていると厳しく批判した。「岸田総裁以下執行部は“党議拘束”という自民議員にとって決定的言葉により“衆参計5人”の造反に抑え込んだ事に高笑いだろう。だが国の為に働く意欲に満ちていた若手議員の頃に仰ぎ見た党幹部の老醜を今“自分が晒している”事に気づくべきだろう」
審議では法案によって予想される影響を深刻に懸念する声が上がっていた。
「(性的少数派の権利保護で)先行した欧米諸国では混乱が広がり、女性の安全や権利が脅かされたり、子供の教育に問題が噴出。悲鳴の声や訴訟が起きている」。山谷えり子議員は15日の内閣委員会で疑問を投げかけ、法制化はかえって社会の分断を助長すると懸念を示した。
活動家団体が教育現場に入り「発達段階を無視した教育が行われ学校現場が混乱することはないか」と質問した。山谷氏は20年前、故・安倍晋三氏と共に行き過ぎた性教育に関して防止措置を図った経緯から、子供への影響を注視している。
教育基本法は具体的な性行為に関する内容は取り扱わないと学習指導要領で定める。有村治子議員は同法によりマイノリティの性的描写は学校で行われるのかと問うと、文科省は基本法の規定に則ると答えた。
政府参考人として発言した滝本太郎弁護士は、先行国の事例として、性的少数派の権利教育が始まって以来「男だったのではないかという思春期の女子が格段に増えた」との報告を紹介。このほか「ホルモン治療や乳房切除、性別適合手術に進んでしまう危険性がある」と危惧を示した。「思春期は正常なる異常状態だ。慎重にならなければならず、後で後悔しても始まらない」と付け加えた。
修正案提出者の新藤義孝議員や厚生労働省は、法案が理念法であること、新たな権利を加えたり、何かの施設の仕方を変えたりということはないと強調した。また、学校教育に関しても発達段階に応じるとし、過剰な性教育との指摘も否定した。
山谷氏はLGBT法案について「むしろ法律ではなくて良識と思いやりの世界の問題というのが本質的なところ」であるとし、「社会の分断や混乱が起きないように、日本の美しい国柄が壊れないように努め続ける」と思いを語った。
早くもLGBT法による不安払拭を掲げた女性権利の保護議連が形成されつつある。読売新聞によれば、発起人には世耕弘成・参院幹事長や片山さつき・元地方創生相など。21日に初会合を開く予定という。
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