中国は21日、米中央情報局(CIA)に情報を提供したスパイ容疑で、同国政府の中国人職員を摘発したと発表した。留学先の日本でCIA職員と知り合ったとしている。これについて、識者らは「国内の経済危機から国民の目をそらす」ための中国政府による策略や、政府転覆を狙った国民による犯行の可能性があると指摘した。
中国国家安全部によれば、摘発された職員は、日本留学中にCIA職員にスカウトされた。米国から訓練を受けたこの職員は、中国に帰国後、何度もCIA職員に情報を提供し、見返りに金銭を受け取っていたとされる。
国家安全部は11日にも、イタリアで知り合ったCIA職員に軍事機密の提供を同意したとして、別の中国籍の軍需産業職員の摘発を公表した。
中国の元弁護士で、現在は事件評論家として活躍する頼建平氏は、中国が立て続けに2つの摘発事案を公表したことについて、崩壊寸前の中国経済から国民の目をそらすために「怒りの矛先を米国に向けようとしている」とエポックタイムズに語った。
就職難が叫ばれる中国では、若者の失業率が6月に過去最高の21.3%を記録した。これを受けて中国当局は16~24歳までの失業率の公表を停止した。
さらに17日には、中国の不動産大手「中国恒大集団」が米国で破産を申請した。中国最大の不動産デベロッパー「碧桂園」もデフォルト危機に直面している。
「ひとたび経済が崩壊すれば、中国共産党は何を頼りに国を支配するのか。中国共産党は今、崩壊の危機に瀕している」「国民を完全に支配するという目的で、憎悪を煽り、焦点をずらし、怒りの矛先を米国に向けようとしている」と頼氏は述べた。
同氏はまた、摘発された職員が本当に米国のスパイである可能性もあると指摘。「中国の独裁体制に痺れを切らし、あらゆる方法でこの政権を転覆させたいと思っている人がいる」
シドニー工科大学の中国研究学者である馮崇義氏は、最近中国政府が「裏切り者」の摘発の宣伝を増やしているのは「見せしめ」のためだと指摘する。
「たとえスパイでなくても、見せしめのために何人か逮捕する。プロパガンダのためであり、話をでっち上げてメディアで拡散し(国民を)騙すためだ。これが中国共産党のやり口だ」
中国は先月、「反スパイ法」を施行し、スパイ行為の定義を拡大した。さらに「スパイ摘発」のため、全社会の動員を呼びかけるなど、取り締まりのさらなる強化が懸念されている。
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