中国で医療セクターにおける反腐敗が加速化する中、たくさんの病院長や幹部が取締りの対象となっている。当局は賄賂を受け取った者に不正に取得したお金を指定した口座まで返還するよう要求している。
分析によれば、中国共産党(中共)の医療業界の汚職摘発の背後には2つの目的があるとされている。1つは人を丸め込むこと、もう1つはお金を搾取するためである。
ネット上で広がっている北京市健康衛生委員会(厚生局に相当)の通知には、医療衛生機関の職員が実名または匿名で、不正に受け取った礼金、有価証券、支払証憑(しょうひょう)、プリペイドカードおよび貴重品などの代金を、指定の北京銀行本部の口座に振り込むようよう求めている。
他には、河南、安徽、広東、広西、江西省などの地域で、一部の公立病院は病院職員とその配偶者、子女などの親族に対して、規定に違反して受け取った礼金と贈り物を期限内に指定した口座に振り込むよう要求している。
内モンゴルのウランチャブ市健康衛生委も15日、「振り込み専用」の10の口座を公表した。
米国在住の時事評論家・陳破空氏は自身のチャンネル番組で、当局は堂々とお金を巻き上げていると述べた。医者、医療機関の職員に賄賂を受け取ったら、自ら上納するという要求は、「上納すれば罪を追求しない」を意味していると陳氏は指摘している。
2012年に王岐山氏が「反腐敗闘争」を始めた後、中共党員や幹部が受け取った返却不可能な、または拒否しがたい現金や有価証券を上納するための口座を設立した。当事者が告発されたり、審査を受けたりした場合、以前にこの口座に入金された金額は、減軽事由とみなされる。しかし2015年以降、多くの地域でこのような口座は廃止された。
医療業界の腐敗は構造的なもの
8月14日現在、今年中国で少なくとも180人の病院長や病院の党委員会書記が汚職問題で取り調べを受けている。その数は昨年の同時期の2倍以上にあたる。
常州市の有名な乳腺外科主任医師である朱玉蘭容疑者が逮捕され、現金4千万元(約8億円)、住宅20軒、金15キロを含む1億5千万元(約30億円)を隠し持っていたというニュースがネット上で広がっている。常州市政府は公式サイトで、朱容疑者の収賄を否定しているが、逮捕されたことは否定しなかった。
また北京阜外病院カテーテルインターベンション (ステント留置術)室主任の徐波容疑者も取り調べを受けており、ネット上で徐波容疑者は12億元(約240億円)の賄賂を受領したとの情報が流れている。
阜外病院が2019年に実施した手術は5万2720件だった。徐波容疑者は大量のインターベンション手術に使用する消耗品の仕入れを管理していた。この部分は業界で公認される腐敗賄賂のグレーゾーンだ。
当局は今年6月1日、徐波が調査を受けていると発表した。徐波は12億元の賄賂を受け取っていたとの情報が流れている。国家衛生委員会は8月14日、12億元の賄賂は「事実無根」の噂だと発表した。 しかし、これまでのように「デマを流す者」の責任を追及することはなかった。
元北京のある有名な三級甲等医院(最高クラスの病院)の内科主治医の方氏(仮名)は8月20日、エポックタイムズに応じ、 このように語った「中国医療業界の汚職は構造的なものだ。地位の高い者は膨大な賄賂を受領する。地位の低い者は少額の賄賂を受領する。1998年頃、当院のある課長の引き出しから現金20万元(当時約420万円)が発見され、その課長は警察に連行されたが、すぐに病院に保釈された」
中国では、製薬会社の間、医療機器会社の間の競争は非常に激しく、自分の製品を売り込むために、病院の幹部に賄賂を贈っている。
方氏によると、江沢民(元国家主席)の『黙って大もうけ』の方針に誘われ、製薬会社や医療機器メーカーは、病院の院長や関連部署の主任に賄賂を贈っていた。医薬代表(医薬情報担当者)たちは、病院の幹部との関係を築くため、彼らを「招待」して旅行に行ったり、食事や飲み物、風俗やギャンブルなど、ありとあらゆることを提供したりしていた。これは業界で公然と行われていることだった。
「反腐敗」と称してお金を搾取
最近の中共による医療汚職の摘発について、中華圏の専門家らは地方政府の財政難を解消するために医療系・製薬会社が過去数十年間蓄積した資金を打ち消そうとしていると分析している。
時政評論家の季達氏は8月19日、エポックタイムズに対し、中共が製薬セクターで反腐敗を行うのは一種の「ニラ刈り(お金の搾取)」だと述べた。
中国の元弁護士・賴建平氏は8月14日に、エポックタイムズの取材で、中共が医療業界で反腐敗活動を展開したのは、政治上の目的をもって行われるもので、法の支配のもとで行われているものではないと指摘した。
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