統計データによれば、8月は香港への人民元の流入が増え、香港に預けられている人民元の合計は約1兆元(約20兆7千億円)に迫っている。一方、香港の為替レートを安定させるための外国為替基金、つまり香港政府の財政予備は、8月に358億香港ドル(約6802億円)の減少があった。よって、専門家の分析では、香港からの海外への資金流出の規模は非常に大きいと指摘している。
つまり、本土から資金が香港経由で、海外に流れている可能性が高い。
香港金融管理局が9月29日に発表したデータによれば、8月の預金総額は0.6%増加しており、香港ドルの預金は0.4%増、外国通貨の預金は0.8%増であった。年初から8月末までの預金総額は2%の増加を示し、その中で香港ドルの預金は1.9%の増加であった。
また、香港の人民元の預金規模は、8月に6%増加しており、8月末時点での額は9625億元(約20兆円)となっている。8月の国境を越えた取引の人民元の総額は、1兆1212億元(約23兆2千億円)で、前月の7月は1兆221億元(約21兆1600億円)であった。この結果、外国との人民元による取引総額は、前月比では9.7%の増加が確認されている。ここにも流出の痕跡が出ている。
香港はオフショア(海外の)人民元の最大の決済市場であり、オフショア人民元の決済の約70%を占めている。オフショア人民元は、中国の中央銀行の監督からは独立している。このため、外国通貨との交換時にはオフショアの為替レートが形成され、これが中国の人民元の為替レートに影響を及ぼすことが考えられる。
もし、人民元の大量流出が起これば、中国の中央銀行の為替レートの管理に、大きなプレッシャーをもたらす可能性がある。つまり、何らかの規制への不安があるということである。
最近、多くの中国本土からの市民が、香港の銀行での口座開設を進めている事実がある。9月7日の朝、香港の中港城の中国銀行の支店前には、長い列ができていた。西安出身の朱さんは、香港の銀行で口座を開設する目的で香港を訪れた。朱さんは10万香港ドル(約190万円)を預ける予定で、香港の銀行で高い利息を得ることを望んでいた。それは現実に、可能なのだろうか?
朱さんによれば、中国は利下げを継続しており、海外では利上げが進行中で、人民元の価値は下落している。中国の経済状況が、現在、よくないため、国内での利息上昇は難しいと判断した。彼女は香港に来る中国人が、一度に2万元(約41万円)の現金の持ち込みが許されており、多くの人々が徐々に資金を国外に移していることを明らかにした。つまり、国外に資金を移せば、高い金利にありつけるということだ。
香港のベテラン銀行家である呉明徳氏は、中国の市民が香港に大量の資金を移転している裏には、中国共産党の高官、私利私欲しか考えない者たちが介在しており、選択的に許可しているとの見解を示している。経済アナリストである羅家聡氏は、将来、香港と中国間の資金移動が厳格に制御され、その際、人民元の海外移動が難しくなると予測している。当然そうなるだろう。
また、国際銀行間通信協会(SWIFT)のデータによると、8月の人民元の国際決済のシェアは、7月の3.06%から3.47%に増加し、新たな記録を達成し、世界で5位にランクされている。これは、4位である3.68%の日本円との差が狭まっていることを示している。
一方、香港の金融管理局は、9月29日に、8月31日の外貨基金の総資産は約3兆9757億香港ドル(約75兆5383億円)とし、7月末時点と比べて、358億香港ドル(約6802億円)の減少があったと公表した。その内訳として、外国通貨資産は228億香港ドル(約4332億円)の減少があり、香港ドル資産は130億香港ドル(約2470億円)の減少があった。
金融管理局は、外国通貨資産減少の主因を、財政準備からの引き出しや市場価格の再評価としている。つまり、香港ドル資産減少の原因は、香港株価の市場価格が再評価されたことにあるとしているが、実際には。投資による利息収入の増加が一部を相殺したので、金額的にはこの程度に収まっただけであり、実際はもっと大きな金額ではないかと考えられている。
米国の連邦準備制度が利上げを継続している中、その利差が資金の流出を誘発していると見られる。経済の専門家である王剣氏は、「人民元が香港に大量に流入している一方で、中国の貿易が停滞しており、8月のSWIFTデータが示す人民元の決済額が過去最高を記録する中、香港の外貨基金が減少していることから、香港からの資金の流出は明らかに進行中で、その規模は著しく大きい」との分析を提供した。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。