米連邦準備制度理事会(FRB)は3月18日、イラン紛争に伴う原油価格ショックの影響を見極めるため、2会合連続で政策金利の据え置きを決定した。
FRBは、家計や企業の借入コストに影響を与える主要指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を、3.5%から3.75%の範囲に維持した。
会合後に発表した声明で、連邦公開市場委員会(FOMC)は、雇用の伸びが低い水準にとどまり、失業率が安定する中で「経済は堅調なペースで拡大している」との認識を示した。
FOMCは声明で「経済見通しに関する不確実性は依然として高い。中東情勢の展開が米経済に与える影響は不透明である」と指摘した。今回の据え置き決定はほぼ全会一致で、11対1で承認された。
FRB理事のスティーブン・ミラン氏は唯一の反対票を投じ、0.25ポイントの利下げを主張した。
1月に利下げを支持していたFRB理事のクリストファー・ウォラー氏は、今回は多数派に同調した。パウエル議長は会合後の記者会見で、イラン紛争の影響について「現時点で判断するのは時期尚早だ」と述べた。
パウエル議長は、最近数週間で短期的なインフレ期待が上昇しており、これは中東での供給混乱による原油価格の大幅上昇を反映している可能性が高いと説明した。一方で、原油価格の急騰による影響は、エネルギー生産の増加によって一部相殺される可能性があるとした。
パウエル議長は記者団に対し、米国がエネルギー純輸出国であることから、石油企業の収益拡大や掘削活動の増加が、雇用や経済活動への影響を一定程度相殺する可能性があると述べた。さらに、企業は原油価格が長期間高止まりするとの前提で、慎重かつ合理的な判断を下すとの見方を示した。そのうえでパウエル議長は、インフレ上振れリスクと労働市場の下振れリスクの双方を考慮する必要があり、「FRBは難しい状況にある」と指摘した。
パウエル議長は「現在の金融政策は、引き締め的か否かの境界線上、やや引き締め寄りに位置している」と述べ、リスクの均衡を図る必要があるとの認識を示した。
政策見通し
FRBは最新の経済見通し(Summary of Economic Projections)で、今年1回の利下げ見通しを維持した。FOMC参加者19人のうち7人は、ドットチャートに基づき、今年は金利が据え置かれると予想している。政策金利の中央値は、年末時点で3.4%と見込まれている。FRBは成長率とインフレ率の見通しをともに小幅に上方修正した。実質GDP成長率は2026年に2.4%と予測し、昨年12月時点の2.3%から引き上げた。
FRBが重視する個人消費支出(PCE)価格指数は2026年に2.7%と見込み、前回の2.4%から上方修正した。エネルギーと食品を除くコアPCEも2.7%とし、従来の2.5%から引き上げた。ハリス・ファイナンシャル・グループのマネージングパートナーであるジェイミー・コックス氏は、「FRBは現時点では紛争による不確実性を見極める姿勢を取っている」と述べ、供給ショックの最中に金利政策で急激な変更を行うことはないだろうとの見方を示した。
また、次の政策変更が利上げとなる可能性についても議論されたが、パウエル議長はそれが基本シナリオではないと説明した。
金利見通し
インフレ指標の上振れを受け、市場ではFRBの利下げ開始時期の見通しが後ずれしている。トレーダーは現在、12月に0.25ポイントの利下げが1回実施されると見込んでいる。年初には春の利下げが予想されていたが、データの蓄積に伴い、見通しは夏後半へと後退していた。
物価圧力の再燃により、金融当局は当面、政策を据え置く可能性がある。3週目に入ったイラン紛争はエネルギー価格の上昇を招き、インフレ圧力を再び高める可能性がある。原油価格は1バレル当たり約100ドルで推移し、ガソリン価格の全米平均は1ガロン当たり4ドル近くに上昇している。
当局は、原油価格上昇による一時的なインフレ要因を見極めつつ、基調的な動向を分析する必要がある。最近の統計は、イラン紛争以前からインフレが上昇傾向にあった可能性を示しており、2%目標への回帰は平坦ではないとの懸念が高まっている。
2月の卸売物価指数(PPI)は前月比0.7%上昇し、市場予想を上回った。食品とエネルギーを除くコアPPIも0.5%上昇した。一方、1月のPCE価格指数は前年比2.8%に鈍化したが、コアPCEは3.1%に上昇した。
同時に、実体経済は停滞の兆しを見せている。第4四半期のGDP成長率は当初の1.4%から0.7%に下方修正された。1月の小売売上高は0.2%減少し、耐久財受注は横ばいだった。
FRBのもう一つの使命である最大雇用にも下振れリスクが生じている。
2月の雇用は9万2千人減少し、1月の12万6千人増から悪化した。ソーンバーグ・インベストメント・マネジメントの債券部門責任者クリスチャン・ホフマン氏は、エネルギー主導のインフレリスクの再浮上により利下げのハードルが大きく上がったと指摘し、成長は減速しつつあり、コアPCEは消費者物価指数(CPI)よりも高い水準で推移していると分析した。
ホフマン氏は、インフレの粘着性とエネルギーコストの上昇が重なり、FRBの政策運営余地を狭めていると指摘した。一方、ドナルド・トランプ大統領はFRBに対し、速やかな利下げを求めた。
トランプ大統領は3月18日の投稿で「『遅すぎる』パウエルはいつ金利を引き下げるのか」と述べた。今回の会合は、パウエル議長にとって任期中、最後から2番目の会合となった。議長としての任期は5月に終了するが、その後も2年間、理事として在任する予定である。
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