米金融政策に「レジーム・チェンジ」の波 ウォーシュFRB新議長 利下げへの道

2026/05/14 更新: 2026/05/14

ケビン・ウォーシュ氏が正式にアメリカ連邦準備制度の新たなトップに就任する。

5月13日、上院は賛成54、反対45で、ウォーシュ氏の第17代FRB議長としての4年間の任期を承認した。

これは、上院が同氏の14年間にわたる理事(FRB理事会メンバー)としての任期を承認した翌日の出来事である。同氏は以前、2006年から2011年まで理事を務めていた。

ウォーシュ氏の議長昇格は、同機関の100年にわたる歴史の中で、最も党派色の強い採決の一つとなった。

トランプ米大統領が指名した同氏に賛成票を投じた民主党議員は、ジョン・フェッターマン氏(ペンシルベニア州選出)のみであった。他の民主党議員らは、ウォーシュ氏の指名支持に難色を示していた。

本会議での採決を前に、上院銀行委員会の筆頭委員であるエリザベス・ウォーレン議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は、ウォーシュ氏がFRBの独立性を損なう可能性があると述べた。

「ドナルド・トランプが二度目の大統領に就任するやいなや、ウォーシュ氏はFRBが利下げを行うべきだと屋上から叫び始めた」とウォーレン氏は語った。「自身の原則を捨てた見返りに、大統領はウォーシュ氏に夢の仕事を与えたのだ」

しかし、ウォーシュ氏は中央銀行の独立性へのコミットメントを再確認しており、FRBは「ミッション・クリープ(任務の肥大化)」に手を染めるのではなく、物価の安定と最大限の雇用という「デュアル・マンデート(二つの責務)」に立ち返るべきだと主張している。

また、同氏は議員に対し、トランプ氏から利下げを求められたことは一度もないと断言した。

最終的に、独立を保てるかどうかはFRB次第であるとウォーシュ氏は述べた。

「FRBは本分を守らなければならない」とウォーシュ氏は委員会で語った。「FRBの独立性が最大の危機に瀕するのは、権限も専門知識も持たない財政政策や社会政策に踏み込んだ時である」

同時に、ウォーシュ氏は、選出された公職者が金融政策について意見を述べること自体は、FRBの独立性を脅かすものではないとも指摘した。

政策と人事の「レジーム・チェンジ」

56歳のウォーシュ氏は、FRBにおける政策と人事の「レジーム・チェンジ(体制転換)」を定期的に提唱してきた。

過去数年間の実績を引き合いに出し、同氏は信頼回復と公衆の信託のために様々な変革が必要だと信じていると述べた。改革の公式なリストはまだ提示していないものの、ウォーシュ氏は今後、同機関が取り得る異なる道筋について示唆している。

主な論点の一つは金利である。

「私の大まかな見解として、金利は先見的である必要がある」と同氏は述べた。

過去、ウォーシュ氏は人工知能(AI)ブームがもたらす供給力の向上が物価を抑制する要因になるためデフレ的環境になるとの認識から、利下げを支持していた。

低金利を望むウォーシュ氏だが、現実にはインフレ圧力が強まり、雇用情勢も不安定だ。この理想と現実の乖離は、新議長にとって大きな難題となる可能性がある。

フリーダム・キャピタル・マーケッツのチーフ・グローバル・ストラテジスト、ジェイ・ウッズ氏はエポックタイムズへの手記で次のように述べた。

「政策面では、インフレが上昇し、労働市場がAIの影響や失業率の急増の可能性を懸念している時期に彼は就任する。また、直近の発言では3名の投票メンバーが緩和的な表現に異議を唱えている。利下げを望む議長にとって、その仕事は困難を極めるだろう」

11名の他の投票メンバーを抱える中で、ウォーシュ氏は退任するジェローム・パウエル議長を含む数人の同僚に対し、政策制限の緩和を納得させる必要がある。

パウエル氏は、今後のFRB理事としての役割について、議長時代とは異なるアプローチを取るつもりだと述べている。

「理事としては、目立たない存在に徹するつもりだ」とパウエル氏は先月、記者団に語った。「連邦準備制度理事会の議長は常に一人しかいない。ケビン・ウォーシュ氏が承認され就任すれば、彼がその議長となるのだ」

投資家は年内の金利操作を予想しておらず、多くのトレーダーは来年の利上げを徐々に織り込み始めている。

また、ウォーシュ氏はバランスシートの縮小も主張している。

世界金融危機以来、中央銀行は経済的打撃を和らげ金利を下げるために、国債や住宅ローン担保証券を購入してきた。同氏は、このFRBの常套手段となった量的緩和(QE)がウォール街に利益をもたらしたが、金融市場を歪めたと述べている。

エコノミストは、保有資産を削減すれば長期金利の上昇を招くリスクがあると警告している。しかし、ウォーシュ氏は、これは政策金利を下げることで相殺できると考えている。

さらに、ウォーシュ氏は「トリム平均」または「中央値」インフレ率をより重視する姿勢も示している。この指標は、卵の価格であれ航空運賃であれ、月ごとの激しい変動を排除するものである。

「私が好む指標は、トリム平均と呼ばれるものだ」とウォーシュ氏は議員に語った。「テールリスクや一過性の項目をすべて取り除き、物価の一般的な変化が経済に二次的な影響を及ぼしているかどうかを自問するのだ」

開始から12週目に近づいているイランでの戦争に起因する石油ショックは、総合インフレ率を押し上げている。

4月の消費者物価指数(CPI)の前年同月比は3.8%に跳ね上がり、ほぼ3年ぶりの高水準となった。これはほぼ全面的にエネルギー価格によって引き起こされたものである。加えて、FRBが重視するインフレ指標である3月の個人消費支出(PCE)価格指数は3.5%に上昇した。

ダラス連銀が算出する「12カ月トリム平均PCEインフレ率」を用いれば、その数値は2.4%となる。

一方、ウォーシュ氏は、FRBの情報発信、特に「フォワード・ガイダンス」についても変更を提案している。アラン・グリーンスパン氏によって導入されたこのツールは、金融政策の道筋に対する期待を形成し、市場が将来の状況に適応できるように設計されている。

「FRBは全世界に対し、自分たちの予測がどうなるかを語っている」とウォーシュ氏は述べた。「だが、FRBも人間だ。そして彼らは、本来あるべき期間よりも長く、それらの予測に固執してしまうのだ」

これは、会合後の記者会見の回数や、FRBの政策・経済見通しを四半期ごとに更新する「経済予測要約(SEP)」の変更を意味する可能性もある。

ウォーシュ氏は、6月16日から17日にかけて開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で、議長として最初の会合を主導する。

アンドリュー・モランは10年以上にわたり、ビジネス、経済、金融について執筆。「The War on Cash.」の著者。
関連特集: アメリカ経済