利上げか 利下げか 据え置きか ケビン・ウォーシュ新体制の連邦準備制度が直面する難問

2026/05/28 更新: 2026/05/28

「今や非常に難しい立場にある」 ビアンコ・リサーチのジム・ビアンコ氏

 

連邦準備制度(FRB)の金融政策運営の定石は、世界的なエネルギー価格ショックの初期的な影響を一時的なものと見なし、基調インフレを精査することにある。

中東での戦争勃発から3か月が経過し、エネルギーコストの上昇を受けて企業・家計の負担が増す中、国内外の総合インフレ率は加速している。原油1バレルの価格は90ドルを下回ったものの、米国の運転者が支払うガソリン代の全国平均は1ガロン4ドルに達している。

米国の年間インフレ率は2023年5月以来の最高水準に上昇した。最近の各種指標は、イランとの戦争の余波が市場全体に波及しつつあることを示唆している。FRBは、百年の歴史を持つ同機関の二大使命のうち物価安定に対して持続的なインフレリスクが生じるかどうかを判断しなければならない立場に置かれている。

利下げを求める政治的圧力にさらされているとみられる中央銀行にとって、ケビン・ウォーシュ新議長の着任当初の数か月は試練の連続となりそうだ。市場は早くとも秋に利上げが実施されると見込んでおり、数か月前に投資家が1〜2回の利下げを予測していた状況から完全に転換した。

ウォーシュ議長はここ2年間、金融政策においてハト派とタカ派が混在したスタンスをとってきた。一方では、人工知能(AI)ブームを背景にトランプ大統領が求める利下げへの理解を示してきた。他方では、現在7兆ドルをやや下回る水準にあるバランスシートの圧縮を主張している。

2026年5月22日、ホワイトハウスでケビン・ウォーシュ氏がFRB議長に就任宣誓した際、最高裁判所陪席判事のクラレンス・トーマス判事(左から3人目)が宣誓を執り行った(Madalina Kilroy/The Epoch Times)

ビアンコ・リサーチ社長兼マクロストラテジストのジム・ビアンコ氏によれば、ウォーシュ議長が政策金利(フェデラルファンズ金利誘導目標)の引き下げを支持するならば、それが正しい政策判断であると市場に納得させる必要があるという。政策金利は企業・消費者の借入コストに広く影響を与える指標だ。

「市場が利上げを適切な政策と考えている中で、利下げが正しいと市場を説得しなければならない」とビアンコ氏は、エポックTVの番組「マーケット・インサイダー」の司会者シヤマク・コッラミ氏との最近のインタビューで述べた。

そのシグナルないし予測は米国債市場にも現れている。長期国債利回りは足元で上昇基調を強めている。

30年債利回りは世界金融危機以来の高水準となる約5.2%に達した後、米イラン紛争の解決への期待から5%を再び下回ったものの、10年債利回りも昨夏以来初めて4.6%を超え、1年ぶりの高水準に到達した。

これは、債券投資家がインフレの持続と高金利を予想していることを示している。

「トランプ大統領はウォーシュ議長が全力でアクセルを踏む、つまり積極的かつ迅速に利下げするものと全面的に期待している。しかし、それは市場が望んでいることではない」とビアンコ氏は語った。

「だから今や非常に難しい立場にある。利上げすべきだろうか。私は市場の見方に従う」

投資家は今年後半の0.25%ポイントの利上げをベースシナリオとして織り込んでいる。

しかしウォーシュ議長には、近い将来のインフレ圧力が高まる中、連邦公開市場委員会(FOMC)の他の11人のメンバーを緩和姿勢に同調させなければならないという課題もある。

これも、ウォーシュ議長が利下げを目指す上での障壁となりうる。

FRB理事のクリストファー・ウォラー氏は先週タカ派に転じ、インフレ率がFRBの目標である2%を明確に上回っている現状で利下げを示唆する時期ではないと主張した。

「近い将来に利下げを語り始められると言うのは、正直おかしな話だ」とウォラー理事は述べた。

「このデータを見て、9月にでも利下げできると言えるはずがない。中央銀行家として本気でそんなことを言えるわけがない」とも続けた。

次の政策決定を予測するには「時期尚早」としながらも、ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁は、イランとの戦争がもたらす「インフレの衝撃波」によって、FRBはインフレ抑制に注力せざるを得なくなるとの見解で一致する。

「世界的なインフレ高騰がかれこれ5年続いており、イランとの紛争がエネルギーと関連物価を押し上げている。事実上すべての国の経済に影響が出ている」とカシュカリ総裁はロイターに語った。

4月のFOMC議事要旨によると、多くの当局者が、インフレ率が2%目標を上回り続けた場合、次の決定は利上げになり得るとの見解を示していた。

当面、市場はFRBが夏にかけて現行の誘導目標レンジ(3.5〜3.75%)を維持するとの見方で大方一致している。

世界のマネーサプライ

米国のマネーサプライは今年3月に22兆8千億ドルの過去最高を更新し、2024年1月以来毎月増加を続けている。

しかし、輪転機を回し続けているのはFRBだけではない。国際的なマネーサプライも直近で過去最高の122兆ドルに達した。

増加する経済識者の間では、各国の中央銀行と政府が物価高騰から国民を守るために通貨の発行を加速し続けるのではないかという懸念が広がっている。

「政府は国民の高騰するコストを相殺しようと、より多くのお金を配ろうとしている」とビアンコ氏は語った。

「世界の大半の政府はマネーサプライを拡大することで生活の苦しさを解消しようとしているが、実際には問題をさらに大きくしているに過ぎない」

ウォーシュ議長率いるFRBは、通貨残高を縮小することで逆の方向に進む可能性もある。

ウォーシュ議長は2025年11月にウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿したコラムで、著名な経済学者ミルトン・フリードマンの主張を改めて確認した。インフレは政府の過剰な支出と通貨の過剰な発行によって引き起こされるという主張だ。

「FRBは大インフレをもたらした重大な過ちを再検証すべきだ」とウォーシュ議長は記した。

「経済成長が過熱し、労働者の賃金が上がり過ぎることがインフレの原因だという教義は捨て去るべきだ。インフレは政府が支出し過ぎ、お金を刷り過ぎることで引き起こされる。ウォール街のカネは緩み過ぎており、メインストリートの信用は締まり過ぎている」

アンドリュー・モランは10年以上にわたり、ビジネス、経済、金融について執筆。「The War on Cash.」の著者。
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