「どれだけクリーンなのか?」バイデン政権主導の70億ドル水素ハブの費用対効果

2023/10/31 更新: 2023/10/31

一部の水素ハブ(水素の生産拠点)は、化石燃料由来のエネルギーを使用することになる可能性がある。

バイデン政権は、クリーンエネルギーアジェンダの一環として、米国の17州にまたがる7つの水素ハブへの資金提供を発表したが、そのようなプロジェクトがどれほど「クリーン」であるかについての懸念が残っている。

ホワイトハウスは10月13日の発表で「低コストでクリーンな水素市場を米国国内で加速するために、水素ハブには2021年の超党派インフラ法から70億ドル(約1兆488億円)を与える予定である」と述べた。

ハブでは、年間300万トンを超える「クリーン水素」の生産を目指しており、それにより、クリーン水素の2030年生産目標の3分の1が達成される。ホワイトハウスによると、ハブは合わせて、年間550万台以上のガソリン車が排出するCO2を削減できるという。

水素エネルギーは、電気を使って水を水素と酸素に分解する電気分解と呼ばれるプロセスによって生成される。エネルギー省によればクリーン水素の生成法には2つがあるという。

1つ目は、再生可能エネルギー源を動力源とする電気分解であり、生成された水素は「グリーン水素」と呼ばれている。2つ目は、再生可能エネルギーの代わりに天然ガスを使用するもので、メタンのスチーム・リフォーミングと呼ばれるプロセスと炭素の回収・貯蔵とを組み合わせるもので、これによって生成された水素を「ブルー水素」と呼ぶ。

資金提供が予定される7つの水素ハブは以下のとおりである。

・ペンシルベニア州、デラウェア州、ニュージャージー州をカバーする中部大西洋水素ハブ

・ウェストバージニア州、オハイオ州、ペンシルベニア州をカバーするアパラチア水素ハブ

・カリフォルニア州をカバーするカリフォルニア水素ハブ

・テキサス州をカバーするガルフコースト水素ハブ

・ミネソタ州、ノースダコタ州、サウスダコタ州をカバーするハートランド水素ハブ

・イリノイ州、インディアナ州、ミシガン州をカバーする中西部水素ハブ

・ワシントン州、オレゴン州、モンタナ州をカバーする太平洋岸北西部水素ハブ

ホワイトハウスは、「選択された7つの地域のクリーン水素ハブは、400億ドル(約5兆9991億円)以上の民間投資を促進し、数万の高給雇用を創出、水素ハブにまつわる公的、民間の投資総額は約500億ドル(約7兆4898億円)になる」と述べた。

バイデン大統領のインフラ法は、エネルギー省のクリーンエネルギー投資に650億ドル(約9兆7362億円)を確保していた。その中には、地域クリーン水素ハブ・プログラムへの80億ドル(約1兆1983億円)も含まれていた。

必ずしもクリーンではない

政権はクリーンな燃料として水素を推進しているが、現実は複雑である。たとえば、グリーン水素は再生可能エネルギーから供給されると言われるが、電力は通常、100%再生可能ではない電力網から供給される。

木曜日の記者との電話で、バイデン政権の当局者は「一部のハブはクリーンエネルギーを使用するが、他のハブはグリッドによってすでに供給されている電力に依存する」と認めたと「The Hill」は報じた。そのため、石炭やガスなどの化石燃料から生成された電力が、水素ハブの一部に電力を供給する可能性もある。

「The Hill」への声明の中で、天然資源防衛評議会の連邦水素擁護者であるエリック・カムラース氏は、「米国財務省は現在、個別の税額控除の対象とするために、水素エネルギーが「クリーン」と見なされる状況をどのように決定するかを検討している」と指摘した。

「財務省のガイドラインが弱ければ、水素ハブから得られる気候変動への恩恵が大きく損なわれる」とカムラース氏は言い、一方で「米国の水素が排出ガス問題を引き起こさないよう、強力なガードレールが必要だ」と付け加えた。

昨年のエポックタイムズの解説で、豪州の機械エンジニアであるピーター・キャッスル氏は、グリーンとブルーの水素がもたらす課題を指摘している。

仮に、グリーン水素の動力源として太陽エネルギーを利用する場合、リサイクル不可能な多数のソーラーパネルを使用する、広大なソーラーファームの展開が必要になる。パネルの製造には、通常は再生不可能なエネルギー源から供給されるエネルギーが使用されるため、パネルは「クリーン」ではない。これらのパネルがそれらの製造段階で使った総エネルギーを相殺するには、数年の運用が必要になる。

さらに、ソーラーパネルには、環境に対して非常に有毒な材料が含まれている。ドイツの放送局Weltによると、ドイツのシュトゥットガルト大学の衛生工学、水質、廃棄物管理研究所の研究者グループは、2016年までにソーラーパネルが世界中に約1万1千トンの鉛と800トンのカドミウムを拡散させたと推定したということだ。

一方、ブルー水素は、有限のエネルギー資源である埋没メタンから作られている。メタンには何十年も続く十分な埋蔵量があるが、それでもいつかは枯渇する。このように、ブルー水素は、長期にわたって人類にエネルギーを提供できる無限の動力源ではない。

水資源への懸念

水素ハブの海水淡水化も懸念されている。ハブが大量の水素エネルギーを生成するには、大量の水が必要になる。これには、塩水を取り入れ含有された塩分を分離する淡水化プラントの設置が必要になる。

一部の環境保護論者は、大規模な海水淡水化プラントが稼働すれば、沿岸地域の生態系に悪影響を与える可能性があると述べている。

米国には現在、何百もの海水淡水化プラントがあるが、これらは主に内陸の水源からの穏やかな条件の汽水(海水と淡水の中間の塩分を持つ水)を利用している。大量の塩水を変換するとなると、より大きな問題が発生する可能性がある。

テキサス州コーパス・クリスティに拠点を置く環境団体である『環境を保護するための沿岸同盟』は、今年初めに、エネルギー長官のジェニファー・グランホルム氏に書簡を送った。

「生態系全体を破壊し、健全な湾システムに依存する他の経済を脅かし、住民の水源を奪うような、クリーンなエネルギー源と称されるものを作るのは筋が通らない」と同団体は主張している。

(翻訳・大室誠)

英語大紀元記者。担当は経済と国際。
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