中国での景気低迷に伴う消費の減退は、中国のコーヒー業界にまで波及している。大手コーヒーチェーン店は今年、遠のく消費者をなんとか取り込むため、コーヒー1杯9.9元(約200円)などの「価格戦」を始めた。
そうした背景には、やや高めに価格設定をしている独立系コーヒー店が相次いで閉店へ追い込まれている現状がある。不完全な統計ではあるが、これまでに少なくとも4.4万のコーヒーショップが閉店している。
中国の新興カフェチェーン「Cotti Coffee(庫迪咖啡)」が、コーヒー1杯の価格を8.8元(約185円)に設定した。その直後、同じく新興カフェチェーンの瑞幸咖啡(ラッキン・コーヒー)も単価を9.9元(約200円)に値下げするなど、熾烈な価格戦が繰り広げらることになった。
その結果、多くのカフェ店やファストフード店までもが、コーヒーの価格について「期間限定の値下げキャンペーン」を余儀なくされている。
コーヒー専門店ではないケンタッキーやマクドナルドといった大手ファストフードチェーンも、頻繁に「コーヒー1杯、9.9元」などの割引価格を打ち出すようになった。ただし、これらの大手ファストフードチェーンの場合、コーヒーの値下げはしても全体の売上は大きく伸びており、店舗数も増えている。
カフェチェーン大手の米スターバックスは、1999年に北京に1号店を出した。安価なインスタントコーヒーは40年ほど前から中国でも普及していたが、高級品としての本格コーヒーが一般向けとなって中国に登場したのは、この頃からである。当時はまだ、中国経済が良好であった背景もある。
以来、コーヒーは、専門店で味わう比較的高価な「ぜいたく品」として位置づけられてきた。しかし、瑞幸咖啡(ラッキン・コーヒー)の台頭によってテイクアウト型の気軽なコーヒーが流行し、コーヒーはより大衆的な飲み物となった。
今年2月に公表されたスターバックスの決算(2022年10~12月期)によると、全体の売上高は前年同期比8%増であるのに対し、中国市場は31%減となった。
今回の「価格戦」の影響をまともに受けたのが、コーヒー1杯の単価が20元~30元(約420~630円)であった独立系コーヒー店だ。中国の外食市場調査・分析を手掛ける紅餐ブランド研究院による統計では、10月29日時点で閉店した中国のコーヒーショップは約4.4万店に上る。
こうした「価格戦」に敗れて閉店を余儀なくされたある店主は、「我われがどうあがいたって、8.8元のCotti Coffee(庫迪咖啡)や9.9元の瑞幸咖啡(ラッキン・コーヒー)には太刀打ちできない」と嘆いた。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。