2024年1月13日に台湾で行われる中華民国総統選挙は、台湾の未来の政治方向を決定するだろう。現在、台湾の総統選挙には、与党の民進党から頼清徳、野党第一党の国民党から侯友宜、野党第二党の民眾党(みんしゅとう)から柯文哲が立候補している。国民党と民眾党は協力して選挙に臨むも、合意に至らず決裂した。中国共産党(中共)は、これらの中でどのような役割を果たしているのだろうか。
中国共産党の台湾総統選挙介入、情報工作が先陣を切る
台湾の中華アジア安全治理研究所の研究員、廖天威氏は新唐人テレビ『菁英論壇』の番組で、中共の選挙介入について語った。彼は、APECサミットでバイデン氏が習近平に対し、台湾の選挙や米国の選挙への介入を慎むよう強く要請したことを指摘する。中国とロシアが過去の米国の選挙に何らかの形で介入していたことは、学界の共通認識だ。
台湾が1996年に初めて総統を民選して以来、中共の軍事・政治的な圧力は一貫している。しかし、結果はどうか。例えば、2千年の陳水扁、2016年の蔡英文の選出は、「中共はもう介入しない方がいい、それが逆効果になる」というメッセージを発している。
中共側も評価し、慎重になるが、介入はやめないだろう。例えば、最近では中共軍機が毎日台湾海峡の中間線を越えるなど、軍事的圧力を強めている。政治的手段には政治界や商界の影響、インターネットを通じた情報操作などが含まれ、我々が見える範囲と見えない範囲で、中共が行動しいる。
テレビプロデューサーの李軍氏も『菁英論壇』で、中共の党首習近平がバイデン氏との会談で「2027年や2035年に台湾侵攻の計画はない」と述べた一方で、「台湾は必ず統一されるべきだ」とも発言していることに注目した。これは武力に限らず、他の手段も用いる可能性を示唆している。彼は、より柔軟で隠微な方法、多様な戦略を取る可能性があると指摘した。特に「認知戦(Cognitive Warfare)」が重要な部分として挙げられている。
中共内部には、台湾の人々が必ずしも知ることのない「コンテンツファーム(Content farm)」と呼ばれる組織が存在している。この組織は、1-2分または3-5分の短い動画や様々な記事を専門的に制作し、中共が伝えたい思想や影響を与えたい世論を含んでいる。これらのコンテンツは多様なチャンネルを通じて台湾に浸透している。中共はアクセス数の生成に長けているので、話題を作り出しており、人々はその話題がどこから来たのか分からない。
中国国内でも、このような宣伝は大きな影響を与えている。多くの一般市民は「人民日報」や中央テレビを信用せず、視聴しないこともある。しかし、インターネット上には多くの「専門家」や「学者」がおり、視聴者は彼らの言葉が共産党の宣伝ではなく事実だと考えることが多い。だが、これらのいわゆる専門家の情報は、すべてコンテンツファームによって作成されたものである。
台湾の民衆に対しては、中共は「疑米論」、「無用論」、「経済論」、「戦争論」などの考えを注入している。「疑米論」とは、米国が台湾を助けないだろうと感じさせること。「無用論」とは、台湾政府が無能で、中国が攻めてきたらすぐに打ち負かされるだろうということ。「経済論」とは、台湾が中国と協力しなければ、経済は断絶されて大きな問題が生じ、人々が飢えるだろうということ。さらに、どの候補を選んだら戦争が起きるとかの考えは直接的に表現されることはなく、潜在的に影響を浸透させるものである。
大紀元の主筆・石山氏は『菁英論壇』で述べた通り、これらのコンテンツファームは、民間企業が運営して作るが、実際には中共から資金を受け、掲載内容の審査と大量生産を行う。これは台湾だけでなく、米国に対しても近年強化されているのだ。
「台湾侵攻しない」というのは戦略的欺瞞だ。台湾選挙による中共政権の大危機
中文「大紀元時報」の総編集長である郭君氏は、『菁英論壇』での発言において、前回の台湾総統選挙で国民党の候補だった韓国瑜氏が、初期の世論調査でリードしていたことを指摘した。郭君氏がその時香港にいて、中共が香港でどのように操作していたかを実際に目撃した。中共は香港で絶対的な優位性を持ちつつ、香港民主化デモを鎮圧するために極めて暴力的な手段を用いた。その結果、香港の自由は失われ、生命力も消滅した。香港民主化運動が中共によって残酷に鎮圧された後、台湾の世論は大きく変化し、「一国二制度」の機能不全が明らかにされたのだ。台湾選挙の際、香港の人は台湾の街頭で標識を掲げ、
「私は香港人です、我々は一度しか示すことができません、歴史を鑑にして盛衰を知ることができます」
と書いていた。これにより民意は呼び起されて、最終的に、蔡英文氏が逆転し、総統に再選された。
郭君氏は、台湾の人々が、まだ完全には理解していないかもしれない一つの重要な問題を強調した。それは、今回の台湾選挙が中共の高層部の政権崩壊につながる可能性があるということだ。中共の現在の高層は、国家統一と民族主義、特に台湾統一を叫んで再選を果たした。台湾統一の可能性が失われ、特に米国が深く介入した場合、中国人の目には台湾が統一できないと映り、それは中共高層存在の合理性と権力の喪失に関わる問題となり、中共内部で巨大な危機を引き起こすことになると言うのだ。
したがって、今回の台湾選挙は、表面上は台湾の選挙であるが、実際には中共政権にとっての重大な危機でもあるに違いない。中共の党首は、台湾問題を中共の核心的利益の中心として位置づけている。しかし、中共内部の運営を理解していない外部の人々は、この問題の深刻さに、まだ気づいていない可能性がある。
郭氏は、中共の党首が、サンフランシスコのAPECサミットで、2027年または2035年に台湾への攻撃計画がないと、米国の官僚に語ったと述べた。これを欺瞞の行動と見なしており、主に米国をターゲットにしていると考えている。過去数年間、米国の軍事関係者や戦略的シンクタンクでは、中共が台湾攻撃の準備を進めていると指摘してきた。これは彼らの基本的な見解であり、米国のインド太平洋戦略の核心であり、ほとんどの米国の戦略が、この結論に基づいて準備されている。
しかし、中共が台湾への攻撃計画がないと言うのは明らかに嘘である。もちろん、軍事に関するものでは、敵を欺くことは非常に一般的な事である。私たちが理解している限り、実際、中共は、第19回大会前に、台湾に対する作戦計画と、様々な準備を大幅に加速させていた。
習近平は党章と憲法を改正し、制限を破り再選を果たした。台湾統一を武力行使することは、党内での再選を支持する条件と基礎・基本となっている。よって、中共軍は台湾攻撃の準備を決して放棄しておらず、常に準備を進めている状況だ。彼らの台湾に対する作戦は「反介入作戦」と呼ばれ、これは米軍が台湾の戦闘に介入することへの、周到な準備なのである。
中共中央の台湾対応作業チームは1956年に設立された。当時は軍の役割が最も重要であった。当時、李克農と羅瑞卿が担当しており、李克農は軍事情報を、羅瑞卿は軍の参謀長兼国防部長を務めていた。他のメンバーには、軍事情報を担当する羅青長や、国家安全部の凌雲などがいた。このチームは戦闘を目的として設立された。
鄧小平の時代になると、台湾対応作業チームは当初周恩来の妻鄧穎超が、後に楊尚昆がリーダーを務め、軍事目標が変わった。政治や交渉を通じて平和的な統一を目指すことが望まれた。江沢民と胡錦涛の時代には、台湾対応作業チームは、党首が直接リーダーを務め、引き続き平和が主体で、軍事は補助的な役割を果たした。作業チームには軍部以外に統一戦線部、外交部、商務部も含まれ、経済的結びつきを強化し、平和を目指す意図が明らかだった。
しかし、習近平の中共第19回大会後、台湾対応作業の焦点は再び軍事に傾き、統一戦線作業や「認知戦」も、実際には軍によって調整されている。すべての計画には明確なタイムラインがあり、それは2027年から2035年の間である。
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