John Davison
[18日 ロイター] – イエメンの親イラン武装組織フーシ派による紅海での船舶への攻撃が激化していることを受け、海上貿易に混乱が生じている。世界的な海運大手などがスエズ運河の航行を避け、喜望峰を回る迂回(うかい)ルートを取っているためだ。
フーシ派は18日、紅海での貨物船への無人機(ドローン)攻撃を開始したと発表。業界アナリストによると、コンテナ船大手のスイスMSCを含む複数の海運大手が喜望峰を経由する航行を開始し、コスト増と遅延が発生、今後数週間で一段の悪化が見込まれるという。
ABNアムロのアナリスト、アルバート・ヤン・スワート氏はロイターに対し、船舶を迂回させた海運会社を合わせると「世界のコンテナ船市場の約半分を占める」と指摘。「紅海を避けることは航行期間が長期化するためコストアップにつながる」と述べた。
英エネルギー大手BPも紅海経由の輸送を全て一時的に停止。フーシ派による攻撃はこれまで主に貨物輸送に影響を及ぼしてきたが、エネルギー輸送にまで波及する懸念が台頭し、18日は原油価格が上昇した。
フーシ派の攻撃によって、企業はイスラエルとの関係見直しも余儀なくされている。台湾の長栄海運(エバーグリーン・マリン)は18日、イスラエル貨物の受け入れ一時停止を決定したと発表した。「船舶と乗組員の安全のため」という。
フーシ派による攻撃を受け、米国およびその同盟国は紅海での航行の安全を確保するタスクフォースの設置を巡り協議。これに対し、イランはそのような行動は間違っていると警告している。
<国際貿易への深刻な脅威>
INGのシニアエコノミスト、リコ・ルーマン氏は、迂回することによりコンテナ船の航行期間は少なくとも1週間は延びると言及。通常、上海からロッテルダムまでスエズ運河経由で27日を要する。
ルーマン氏は「少なくとも12月下旬の遅れにつながり、1月、そしておそらく2月にも次の運航の遅れにつながるだろう」と指摘する。
一方、情報会社フレイトスのツビ・シュライバー最高経営責任者(CEO)は、航行が長期化すれば運賃も上昇する可能性が高いが、現時点では海運会社は余剰の運航能力を活用する方法を模索していると指摘。「新型コロナウイルス禍で経験した水準まで運賃が高騰する可能性は低い」とした。
国際海運会議所(ICS)は15日、先月から始まったフーシ派の攻撃は「国際貿易に対する極めて深刻な脅威」であり、同地域の海軍に対し、攻撃を阻止するために全力を尽くすよう求めた。
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