中国経済は悪化の一途をたどっている。そのようななか、いまやスターバックスカフェに代わって、無料で利用できる公共図書館が「失業者の居場所」として利用されるケースが増えている。
このごろ、北京や上海、広州、深センなど多くの都市の公共図書館が、毎日のように利用者で「満員」になっていることを示す動画がSNSに多く投稿されている。土日ではない平日の昼間であっても、なぜか図書館には多くの人が来ているのだ。
館内にいる人の多くは「失業した人たち」であるという。しかも、家にいると家族に心配かけてしまうため、仕事に行くふりをして図書館に来ているのだ。
「今は収入がないから、コーヒー1杯だって無駄にはできない。だからこそ無料で入れる図書館が失業者の居場所になったんだ」「失業した中高年は、スターバックスカフェではなく、図書館に集まっている。こんな現象からも、中国経済が悪化していることが浮き彫りになっている」。そう指摘する声の主も、今は失業者である場合が少なくない。
今年8月、中国統計局は「全国の都市部における若者の失業率について、公表を停止する」と発表した。
この発表の真意について、中国では普遍的に「失業率のデータがひどいので、皆しばらく見ないでください、という意味だろう」あるいは「もうこれ以上、でっちあげられないからに決まっている」と受け止められている。
若者の失業率の公表が停止される以前、今年の4~6月までの中国の若者の失業率は20.4%~21.3%に上昇。歴史的な新記録を、毎回連続で更新していた。
しかし、北京大学の張丹丹副教授は、以前に「過小評価されている可能性のある若者失業率」という記事のなかで、「躺平(寝そべり)族や親の援助を受けて働いていない1600万人を失業者とみなすならば、3月の中国の若者の実際の失業率は最大で46.5%に達する」といっている。
中共当局は、低い就業率を少しでも高く見せかけるためなのか、その統計方法は驚くほどルーズになっている。例えば、週に「1時間」働いただけでも、就業者とみなしているのだ。
また、インターネット上でアカウントを登録するだけで「大学生が起業した」とみなして、就業者にカウントしていた。
図書館に「一時避難」することはできても、そこに食べ物はない。なんとか生きる道を自力で切り開かなければならないが、大量の失業者を生んだ中国経済の低迷は、もはや回復不可能な段階に至っていることは明白である。
若者だけでなく、中国における実際の失業率は、すでに「恐ろしい数字」になっていることは間違いない。
(深センの図書館内の様子)
(広州市の図書館内の様子)
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