台湾総統選挙が大詰めを迎える中、台湾大徳基金会は1月8日、著名な時事評論家である唐靖遠(とう せいえん)氏、李大宇(り だいう)氏、陳薇羽(ちん びう)氏、台湾大学政治学部名誉教授の明居正(めいいせい)氏を招き、シンポジウムを開催した。4人のゲストは中国共産党(中共)の洗脳手段を分析し、台湾の人々に中共の認知戦の危険性を認識するよう呼びかけた。
“友人作り”で認知戦を実現
明居正氏は、中共に対する長年の研究に基づき、中共が権力に対して「病的に」執着していると結論づけた。多くの事象をこの観点から考えると、「どうやって権力を握り、どうやって権力を固めるか」という中共のロジックを容易に認識できる。
明居正教授は、「台湾社会が中共を十分に理解していないため、常に騙されている」と指摘した。毛沢東はかつて、国民党に対処するために党建設、統一戦線、武装闘争の3大戦術があると述べた。実際に、プロパガンダと諜報活動の手段も用いられた。統一戦線とは、「友人を作る」こと。中共はビジネスや交流、媽祖(⦅まそ⦆中国沿岸部で崇拝されている航海・漁業の守護神)の話など様々な手段を通じて「相手の好みに合わせる」ようにして誘い、本当の目的はプロパガンダで洗脳することなのだ。
中共は「人間の弱点を掴んで、権力を好む者には権力を、金を好む者には金を、美女を好む者には美女を使って、最終的には個人の意志を崩壊させる」と分析した。中共は「友人たち」に少しずつ影響を与え、中共の言うことに一定の道理があると感じさせ、最終的には中共の政治思想を受け入れさせ、さらには完全にコントロールできるようにする。
明教授は、台湾の民進党と国民党の政治的対立は、民主的な社会の常態だと考え、双方は民主主義の下のライバルであって、敵ではないと認識し強調した。現在、「深紅」(中共)が入り込んでおり、民進党と国民党双方が争い続ける限り、深紅(中共)の陰謀や策略を見抜くことは難しいと指摘した。
両岸の現状維持 主導権は中共にある
唐靖遠氏は、台湾の有権者の多くは、現状維持を望んでおり、台湾独立の話題に深く触れたくないことに気づいた。しかし、最大の問題は、統一か独立かの決定権は台湾自身にはなく、現状を維持できるかどうかも台湾や米国が決められるものではないと指摘した。なぜなら、中共は現状を維持したくないからだ。
同氏は、用語の内包を再定義し、修正することが一つの認知戦の手法だと解釈した。
蒋介石は「一つの中国」を認めていたが、彼の考える「一つの中国」とは中華人民共和国ではなく中華民国のことであったからだ。しかし現在、中共の「台湾独立」定義は大きく変わり、中華民国を主張すること、さらには現状維持して、中共に統一されたくないことも台湾独立と表現するようになった。唐靖遠氏は「これこそ中共の認知戦だ」と指摘した。
中共は過去の両岸関係の曖昧さをすべて排除し、絶対的な明確化を求めている。中共が求めるのは、「台湾は中共のものであり、一つの中国とは中華人民共和国である」というものだ。政治的圧力にせよ、軍事的脅威にせよ、中共党首の習近平は自分の生きているうちに台湾を掌握することを目指している。
台湾の各政党候補者は、台湾を守りたいと考えている。一部の人は親中路線を主張し、他の人々は親米路線がより効果的だと考えている。
唐氏の見解では、「中共が台湾を併合したいという政治的動機は変わらない。台湾が親中共か、あるいは中共に厳しい態度をとるかとは関係ない。これは中共の固有の政治ロジックによって決定されている」。
「同じ民族」の札を切るが 中共は台湾に良い意向を持っていない
時事評論家・陳薇羽氏によると、類は友を呼ぶというように、米国と台湾も共通の価値観、民主主義と自由という価値を共有して、同盟を結び、侵攻に対抗する。
中共は台湾と言語、文化、人種が同じだと主張し、民族主義のカードを切り、同じ家族だと言うなど、台湾を併合する口実を見つけようとしている。本質的には、中共は中国人の信仰と価値観を破壊し、台湾と真の民族主義を築くつもりはない。
中共が台湾を取り入れるのは、実は米国や日本に対抗するためだ。陳薇羽氏は、このような状況下で、台湾がまだ米国や中共と等距離外交を続けようと考えているならば、台湾は誰も助けてくれない状況に陥るかもしれないと指摘した。
中共は決して台湾と対等に交渉しない
李大宇氏は、台湾が米中と等距離の関係を築くという主張は「偽の議題」だと考えている。中共は台湾を中国の一つの省と見なしており、中共中央の指導者が「格下げ」して、省の省長と同等に交渉するという状況は可能性が低く、つまり、中共が台湾と対等に交渉することはない。
李大宇氏によると、中共は現在、「武力による台湾統一」と「平和統一」の二つの選択肢がある。武力統一はコストが高いため、実際には中共はそれを望んでいない。平和統一は、民間交流を通じて、台湾の村長や学生などと広範囲に接触し、これらの人々を親中共派に引き込むことを目指している。もし台湾で親中共派政党が政権に就いたら、中共は台湾への浸透を強化し、さらには台湾内に代理人を育成することになるだろう。
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