今秋実施される米国大統領選挙では、共和党候補トップのトランプ前大統領が再選する可能性が浮上している。「予測不能」「台湾を気にかけない」などの米主要メディアが懸念を報じるなか、元国務長官首席顧問は「安心してほしい。彼は商人であり背景には戦略的な重心がある」と前政権を振り返りトランプ氏の対中姿勢を語った。
台湾のシンクタンク、福和会は1月31日、トランプ政権時代の国務長官の中国政策首席顧問を務めた余茂春(マイルズ・ユー)氏を招き「米国の台湾海峡政策:現状と未来」というテーマで講演会を開いた。
余茂春氏は、トランプ政権の外交政策の成果について「中国(共産党)を従来の地域的脅威からグローバルな脅威として再定義したことだ」と語った。中国共産党は台湾や周辺国への脅威を含め、国際的な秩序を破壊し、米国の戦略的優位を技術的、軍事的、経済的に脅かそうとしていると述べた。
米国は第二次世界大戦後の数十年、重要な戦略的重心を欧州・中東に置いてきたと余茂春氏は指摘。このために北大西洋条約機構(NATO)を設立し、その年間予算の70~80%を米国が負担してきた。いっぽう、トランプ政権以降は米国がこの地域から手を引き、欧州諸国に自律できる力を発展させるよう促しており、「これはトランプ氏だけが実行できたことだ」と主張した。
さらに、ロシア・ウクライナ戦争勃発後は、欧州諸国が自国のエネルギー、貿易、経済、安全保障における依存度の高さを痛感し、自国の国防戦略と立国の基盤を再定義しているとした。
大統領時代、トランプ氏は拠出金をめぐりNATO脱退を示唆していた。いっぽうストルテンベルグNATO事務総長は先月31日、CNNのインタビューで、トランプ氏が再選したとしてもNATOが弱体化することはないと強調した。
トランプ氏はなぜ、厳しい対中政策の転換に舵を切ることができたのか。「彼は商人であり現実的なアプローチを重視し、結果を重んじている」と余茂春氏は述べ、求める結果に応じて貿易や安全保障においても強弱をつけて対応すると述べた。
もしトランプ氏が再選した場合、米国第一主義を掲げる同氏にとって「台湾は軽視される」(オバマ政権時代高官)との報道もある。これについて、余茂春氏によれば、中国共産党を米国の戦略的重点にした以上、トランプ氏が再選しても米台関係は「大きな影響はないだろう」と見解を語った。
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