[ムンバイ 5日 ロイター] – インドの株式市場が中国に代わって急成長する主要新興国市場とみなされ、内外から資金流入が続いている。
主力銘柄で構成するニフティ50指数は過去10カ月間で約33%上昇し、2023年の外国人投資家の資金流入額は200億ドルに達した。
今年に入っても、国際的な投資家が低調な中国株の代わりに資金を振り向ける場所を探していることや、4-5月に予定される総選挙でモディ首相の与党が勝利し、政権続投で従来の経済政策が踏襲されるとの期待感が追い風になっている。
そのためインド株の割高化や選挙での波乱といったリスクを、投資家はあまり気にかけていないようだ。
M&Gインベストメンツのアジア株ポートフォリオマネジャー、ビカス・ペルシャド氏は「最近の値上がりや選挙が近づいているという点にもかかわらず、インドは長期投資家にとって優良な市場だと思う」と述べた。
インド国内でも機関投資家が買いを入れているほか、個人投資家の積み立て購入資金が現在、毎月平均で20億ドルと着実に流入している。
ゴールドマン・サックスは、足元で2万2000ポイント前後のニフティ50指数が年末までに2万3500ポイントまで上昇すると予想。ICICIセキュリティーズも、同指数の企業利益が14%近く跳ね上がると見込んだ。
シュローダーズのマルチ資産グロース・インカム責任者、レミ・オルピタン氏は、こうしたインド株の好調さについて、国際的な投資家が新興国で最も明るさのある市場の一角を保有したいと考えていることが材料になっていると指摘した。
ただ、同氏はそれはインド株の脆弱(ぜいじゃく)さとリスクの評価が十分でないことも意味すると警告。「長い目で見れば、われわれはインドを好み、同国の成長ストーリーに完全に同意しているが、現時点で醸成されつつあるリスクについて市場が織り込んでいない可能性だけが心配だ」と述べた。
実際、インド株は世界屈指の割高水準になっている。ニフティ50指数構成銘柄の12カ月予想利益に基づく株価収益率(PER)は22.8倍で、中国よりずっと高いだけでなく、米国のS&P総合500種の20.23倍さえ上回っていることが、LSEGのデータで分かる。
コタク・ミューチュアル・ファンドのニレシュ・シャー最高投資責任者は、インド株の高いバリュエーションの根拠が他の市場の低調さにある以上、それらの市場が堅調になり始めれば、事態が一変しかねないとの見方を示した。
ウィズダムツリー・インベストメンツの株式戦略責任者ジェフ・ウェニガー氏も「目下のインドの魅力は『中国ではない』という部分が、大半を占めている」と語る。
その中国では、当局による経済と市場の安定化に向けた取り組みがまだほとんど実を結んでいないものの、外国人投資家は最終的な相場反発を期待して株式市場に戻りつつある。
とはいえ投資家のリスク見取り図の中心に存在するのは、やはり総選挙だ。モディ氏は絶大な支持率を誇り、与党のインド人民党は議会で引き続き多数派を確保する見通しだ。
だが、選挙結果が予想より低調だった場合、これまで株価を押し上げてきた経済政策の遂行能力に陰りが差す恐れが出てくる。
S・CUBEキャピタルのヘマント・ミシャー最高投資責任者は「政治的リスクが最も高いと思われる。これは起こる確率が低いが、波及力は一番大きいイベントで、現実化すれば、中東を巡る危機よりもインド市場のセンチメントに重大な影響を及ぼすだろう」と述べた。
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