中国のミネラルウォーター最大手の「農夫山泉(Nongfu Spring)」がこのほど、まるで「空から降ってきた」ような災難に見舞われている。
なんと、商品の包装に「日本的な要素が含まれる」などの理由で、小粉紅(中共の愛国主義者)たちによる格好のバッシング対象になったのだ。
もちろん、まことに迷惑で、理不尽な「言いがかり」である。
しかし今の中共統治下の中国では、多くの民衆が正確な情報を得られず、また中共の抑圧のため人々が巨大な不満を抱えていることもあって、攻撃対象が1つ見つかれば「万民が、ストレス解消のため同調する」という集団暴走状態になりやすい。
中国人が好きな「浅草寺の五重塔」もダメなのか?
ことの発端は今年2月に病死した中国飲料大手の杭州娃哈哈集団(ワハハ)の創業者、宗慶後氏の死を悼むため、あるネットユーザーが行った「ワハハと農夫山泉の商品対比」である。
中国のミネラルウォーター大手である2社の商品対比の結果、「ワハハのほうは、包装に中国的な要素がある。それに対し、農夫山泉のほうは日本的な要素が含まれる」ことが指摘された。
その「ご指摘」とは、例えば以下のようなものだ。
例えば、農夫山泉が発売する「東方樹葉」という緑茶ドリンクの場合。そのパッケージに、抹茶の起源について紹介する文字と、東京・浅草寺の五重塔を思わせるデザインがあること。また、農夫山泉のボトルにある模様が、日本の幕末に流通した銭貨・文久永宝(ぶんきゅうえいほう)に似ている、などだ。
緑茶のなかで、日よけをかけた柔らかい茶葉を石臼でひく「抹茶」や、炒った玄米を混ぜて香りを楽しむ「玄米茶」は、いずれも日本独自の製造法であり、中国茶のなかに同類のお茶はない。つまり、日本をいくぶん意識した「商品」であるとしても、そこに何らかの政治性や親日へ誘導する意図など、他の要素は一切ないのは明らかだ。
「五重塔」ペットボトルのラベルには、日本の臨済宗の僧・南浦紹明(なんぽじょうみょう)が1267年に中国から日本へ伝えた緑茶が、後の抹茶(日本の茶道)の起源になった、という中国語の記述がある。
そのような鎌倉時代の歴史を商品ラベルに記載して、なぜバッシングを受けるのか。もちろん、小粉紅の思考はもとより条理に基づくものではないので、すべて不当な「言いがかり」と見るしかない。要は、ただ民衆を扇動するための、没義道な「いちゃもん付け」なのだ。
それにしても、東京の浅草寺と言えば、多くの中国人が訪れる観光の定番ではないか。境内では、日本茶の無料サービスも行われている。浅草寺の五重塔が本当にダメならば、その浅草へ行く「大量の中国人観光客はどうなのか?」と、小粉紅の誰かに聞いてみたくもなる。
「文久永宝」の図柄に似ているというのは、今の日本人でも思いつかない「揚げ足取り」を、よくぞ中国人の小粉紅が見つけたと、少々ホメてやりたい気もする。
ただし、日本の図柄としては、伝統的な織物の「青海波(せいがいは)」にその原型があり、幕末の銭のデザインが最初ではない。「いちゃもん付け」の小粉紅に、そこまでの知識はないだろう。
「鯉のぼり」に至っては、どこが気に入らないのか知れないが、要するに「日本っぽいのは、全てダメ」ということらしい。
暴走する世論、ついに商品の撤去まで
商品パッケージ以外にも、小粉紅がつける「言いがかり」は止まらない。農夫山泉の創業者である鍾睒睒氏が「(中)国を愛していないことの証拠」として、鍾睒睒氏の息子が、米国へ移住したことも指摘されている。
いずれにせよ最初の発見者というものは、往々にして、狂気じみた興奮と自己顕示欲に陥りやすい。
これら「世紀の大発見」に気づいた小粉紅たちは「農夫山泉が、辱華(じょくか、中国を辱める)した」と騒ぎ立て、たちまち暴走するようになった。
その影響の1つとして、飲料を売る同業者に対し「農夫山泉を仕入れるな!」と呼びかける店が相次いで現れた。
さらには「愛国心あるならワハハを飲め」と呼び掛けるプラカードを掲げる動画や、商品ボイコットを示す「農夫山泉を吐き捨てる」動画が人気を集めた。
(「農夫山泉」のボイコットの動きはさまざま。うっかり飲んだ「農夫山泉」を吐き捨てる者。「只喝娃哈哈(飲むのはワハハだけだ)」のプラカードをもつ人など)
こうした「怒涛の世論」の圧力をうけて、各地のスーパーマーケットやコンビニでは農夫山泉の商品が商品棚から撤去される動きが相次いだ。
このため、過去には1日に10万~25万元(約204~510万円)はあった売上が、今では5000~7500元(約10~15万円)と、90%以上減少している店舗もある。
「農夫山泉」の株価が一気に下落
繰り返すが、こうした暴走的な「世論」は、極めてヒステリックで筋違いな感情によるものであり、メーカーの「農夫山泉」に落ち度があるわけではない。
食品の安全性に極めて問題の多い中国ではあるが、今回は「農夫山泉」のお茶やミネラルウォーターに品質上の問題があったわけではなく、ただ日本調の商品ラベルに理不尽な「言いがかり」をつけられただけである。
そのため「空から降ってきたような災難」と呼ぶしかない。しかし中国の場合、そうした低レベルの無知から発した事象が、ときに社会問題となって大爆発することがあるため、まことに厄介である。
実際に「辱華」のレッテルを貼られた「農夫山泉」の株価は、連日のように下落している。
3月1日~8日までの8日間だけで6.53%下落し、近頃の一連の騒ぎを受けて、中国一の富豪でもある「農夫山泉」の創業者・鍾睒睒氏は、これまでに「農夫山泉」傘下の子会社12社の法定代表者の職を辞している。
そうした民衆心理の深層には、最大手メーカーなど一部の富裕企業に対する嫉妬や恨みの感情がないとは言えない。しかし、やりすぎて歯止めがかからない暴走ぶりは、時に「中共体制批判」へと突然変異する可能性を含んでいる。
そのため、中共による日本などへの「憎悪」扇動も、その矛先が180度転ずれば、中共が革命によって倒されることにもなりかねない。実は、そのことを最も恐れているのは中共自身なのだ。
「辱華」は中国人の病(やまい)
この「辱華(じょくか)」とは、生まれた時から中国共産党の洗脳を受けてきた中国人が罹患しやすい、中国特有の病(やまい)である。いったんこれに罹れば、精神に異常をきたし、かなり重篤になる。
この病(やまい)を治し、心身ともに正常な人間に戻るには、中国共産党を完全否定して、神仏を敬う清らかな信仰をもたなければならない。
中国でそれに相当するのは、法輪功(法輪大法)を学ぶ人々である。
ともあれ「辱華」とは、全く一方的に「中国の誇りを傷つけられた」と逆上し、興奮して、感情的に相手を糾弾する行為を指す。日本をはじめとする外国、あるいは外資系企業、なかには中国企業や中国人も「運悪く」そのようなレッテルを貼られることがある。
今回の「農夫山泉」も、ただ飲料のラベルが日本調だったというだけで、これほど社会的に攻撃され、膨大な損失を受けてしまった。
記憶に新しいのは昨年4月、上海で行われた上海国際モーターショーで、ドイツ車のBMWのブースで無料配布したアイスクリームについて、一部の中国人客から「外国人だけに配った。中国人を差別した!」とクレームがあがり、大騒ぎになったことがある。
たかがアイスクリームである。しかし彼ら(彼女ら)は、その恥ずべき幼児性に気づいていない。
同じく、日本の飲食店が「中国人へ。当店の魚は福島産です」と小さな黒板にチョーク書きしただけで、狂ったようにわめき、警察を呼ぶ騒ぎを起こすのだ。もちろん、これらの小粉紅は、自身の報酬や知名度を上げるため、わざとカメラに映りながら吠えるのである。
現在、中国で起きている「狂気的な民族主義」の現象について、中国人のなかからも「文化大革命の再来か」という懸念が高まっている。
「恨みの対象は、誰でもいい」
中国経済が破綻し、社会危機が深刻化するなか、民衆の生活はますます困窮している。
中共当局は批判の矛先を逸らすため、絶えず国民の愛国感情を操り、他者への憎悪を煽っている。日本へ多くの中国人(富裕層)観光客が来て、日本の寿司を喜んで食べることと、あいかわらず日本産の魚介類を排撃することは、彼らにとって全く別の思考方法であるらしい。
先月には、サッカーのアルゼンチン代表・メッシ選手が香港での試合に欠場したことで、そして今月は中国企業「農夫山泉」の日本調ラベルが批判され、小粉紅の槍玉に挙げられた。
そこでネット上には、こんな声がある。「じゃあ来月は、誰を恨めばいいんだ?」。
さらに「恨みの対象は、誰でもいいんだろ」「中国人は、永遠に恨みの対象を探している。恐ろしい国だ」。そうした皮肉たっぷりのコメントが、同じ中国人のなかから多く寄せられている。
ほかには「いつどこで、辱華のレッテルを貼られるか分からない」「こんな(中国の)環境で経済を良くしようなど、無理な話だ」「拝まぬ神にたたりなし。投資家は逃げている」「辱華は予測不可能な災難だ」など、中国の投資環境のさらなる悪化への嘆きも広がっている。
いっぽう、中国公認の愛国ブランドであるファーウェイ(華為)にも「辱華」の要素がある、と「反撃」に出るユーザーもいる。その投稿は華人圏で広く拡散され、いまや格好の「お笑いネタ」になっているほどだ。
ファーウェイによる「辱華」の疑いとは、例えば「ファーウェイの自社設計チップの名が麒麟(Kirin)。これは日本語のキリンの音訳である」ことや、ファーウェイの孟晚舟(副会長兼CFO)の多重国籍問題などが指摘されている。
中共の愛国主義は「憎悪主義」
中共当局は一貫して、国民の「愛国(党)心」や「ナショナリズム」を煽動して日本や米国を恨ませ、国内のガス抜きに利用してきた。
しかし、中共のいう「愛党」「愛国」とは、何であるか。
エポックタイムズ『九評』編集部による『共産主義の最終目的』の一節を以下に紹介する。
第六章「(上)『憎悪』を国家の支柱とする」
共産党は「憎悪」をもって立国し国を治める。その大げさに宣伝している「愛国主義」は、実をいうと、「憎悪主義」である。
「党」の辞書の中での「愛国」とは、米国を恨む、西側を恨む、日本を恨む、台湾を恨む、チベットを恨む、自由社会を恨む、普遍的価値観を恨む、「真・善・忍」を修める善良な人を恨む、中国共産党のいわゆる「敵」を恨むことを意味する。
「愛党」とは、自己に挑戦してくる一切の人と物事を恨むことを意味する。
中国共産党は、教育、メディア、芸術などさまざまな手段を通して、この「憎悪」の物質を広くまき散らす。若者や学生、民衆を貪欲的、悪辣(あくらつ)的、悪毒的な守るべき境界線をもたないろくでなしの狼子に変えてしまう。
(中共の「愛党」という名の憎悪教育。すでに幼稚園児から始まっている。日本兵のワラ人形を、銃剣で刺突させている)
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