中国当局が「抗日戦争勝利80周年」を記念して制作した愛国映画『南京写真館』を観た子供たちが、「日本人を皆殺しにしたい」と泣き叫ぶなど、極端な反応を示している。中国共産党(中共)の政治的意図が色濃くにじむこの作品に対し、国内外で懸念の声が高まっている。
2025年、中国共産党は記念年に合わせて、子供の夏休みに複数の「抗日愛国映画」を公開。その中でも『南京写真館』は、日本軍による残虐行為を描いたセンセーショナルな内容で、興行収入も群を抜いた。一方で、映画を観た子供たちの間で怒りや憎悪を爆発させる異常な反応が続出している。
安徽省(あんきしょう)の母親が投稿した動画では、映画の一部を見せただけで息子が日本地図を工具で叩きつけた。河南省(かなんしょう)では、9歳の男児が鑑賞後に大切にしていた日本のアニメカードを破り捨てた。SNS上には、「日本人を殺したい」と泣き叫ぶ少女の映像も出回っている。こうした光景は、教育の域を超え、憎悪と暴力的感情の植え付けに他ならない。
(2025年8月、中国当局が制作したいわゆる「愛国映画」の『南京写真館』を見た後、地図上の日本を激しく叩く中国の子供)
台湾の政治学者・曾建元(そう・けんげん)氏は、「中共は反日映画を用いて国民感情を操作し、国内問題から意識を逸らす常套手段として利用している」と分析する。また、ジャーナリストの矢板明夫氏も「この映画は史実に基づくとされているが、内容は歴史的事実と矛盾しており、完全なフィクション」と指摘。
映画が「歴史の伝承」ではなく「憎しみの再生産」を目的とするなら、それは次世代の心を蝕む深刻な害悪である。無垢な子供に植えつけられた偏った歴史観が、やがて現実の暴力へと変わっていく可能性もある。いま本当に必要なのは、過去への怒りを繰り返すことではなく、事実と向き合い、歩み寄る勇気ではないだろうか。

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