米民間調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、中国における法輪功迫害は依然として深刻な状況にあることが明らかになった。同機関の報告は、共産党政府による不当な拘束や虐待によって死に至った退役軍人の例を取り上げた。
5日発表の「国際的な宗教弾圧」に関する報告書には、「殺害」に及んだ迫害ケースとして法輪功の犠牲者の例をあげた。2017年に連行された法輪功学習者で元人民解放軍の陸軍大佐の公丕啓(ゴン・ピーチー)さんは、獄中で「突然の脳出血」により死亡したと当局は発表したが、遺族や友人は遺体に拷問の痕跡があったと主張している。
法輪功は「真善忍」を理念とする気功修煉法。90年代には学ぶ人が増え党員数に近づき、中国共産党の江沢民元国家主席が1999年に弾圧を開始。以後20年以上にわたり全面的な迫害が続いている。チベット仏教徒やウイグル人ムスリムなどに比べ、法輪功迫害についてはこれまであまり周知されていない。
ピューはこれまでも中国の宗教の自由に関する調査を行っており、共産党当局による宗教弾圧の実態を度々報告している。例えば2022年の報告書では、中国の宗教規制スコアが10点満点で9.3点と、調査対象国で最も高かったことが示された。
腐敗のなかに吹く清廉な風
「腐敗した軍の官僚社会にあって、清廉な一陣の風のような存在でした」。退役軍人、公丕啓さんについて、サンフランシスコ湾岸地区のシリコンバレーで働く娘の公暁燕(ゴン・シャオイェン)さんが語った。
連行された2017年当時、サンフランシスコの中国総領事館前で、公暁燕さんら在米法輪功修煉者は集会を開いた。
公丕啓さんは定年退職した陸軍大佐で、1995年から法輪功を学び始め、退職前は山東省予備役高射砲師団の副参謀長を務めていた。2017年10月16日深夜、青島の警察による不法な家宅捜索を受け、現金15万7千元(約250万円)とパソコンなどの私物を押収され、父と母が連れだされた。
公さんによれば、母親は翌日釈放されたが、父親の公丕啓は現在も山東省即墨(ジーモー)市普東拘置所で不当に拘束され、虐待され、歩行ができない状態にまで追い込まれた。
明慧ネットの報道によると、中国共産党第19回全国代表大会(2017年)を前に、各省市の法執行機関に対し、法輪功学習者への「戸別訪問」を指示する公安部の内部文書が出回っていたという。これは、1999年に記録された全ての学習者を一人残らず調査するよう求めたものだ。
公暁燕さんは家族が法輪功と出会った経緯と、父が法輪功を学んだ後の心身の変化を振り返った。
「父は軍人でしたが、中国の官僚の世界には汚職と腐敗が蔓延しており、特に軍隊でその問題は深刻でした。法輪功を学ぶ前の父は、毎日高級タバコ3箱を吸い、連日宴会に明け暮れる生活でした。しかし学び始めてからは、たちまちタバコとお酒を完全に断ち、二度と手を付けませんでした。仕事では清廉潔白を貫き、私腹を肥やすようなことはしませんでした。腐敗した軍の官僚社会にあって、清廉な一陣の風のような存在でした」
しかし1999年、江沢民が法輪功への弾圧を開始して以来、一家の平穏な生活は脅かされるようになった。母親は頻繁に警察に連行され、何日も、時には何十日も強制的な「思想改造」を受けさせられた。当時未成年だった公暁燕さんは、毎日恐怖に怯えながら過ごしたという。
2005年5月、両親の家が警察に不法捜索され、母親は5年の懲役判決を受けて投獄され、父親は1年近く青島市の610弁公室(法輪功弾圧を担当する部署)の洗脳施設に拘束された。法輪功を中傷する映像を強制的に見せられ、拷問によって白髪になり、歩くのも人の助けが必要なほどに衰弱し、内臓破裂の重傷を負わされた。祖母も、この弾圧による家族の不幸に耐えきれず、涙を流しながら他界したという。
公暁燕さんは「中国共産党が仕掛けたこの残酷な法輪功弾圧で傷ついているのは、法輪功学習者だけではありません」「共産党のプロパガンダに惑わされ、善良な学習者を憎悪の目で見るようになった多くの一般市民も傷ついています。弾圧は全ての中国国民を傷つけ、中国人の善良さを破壊しているのです」と語った。
公丕啓さんは21年4月、山東省の刑務所で亡くなった。
法輪功迫害について国際的な関心は強まっている。米国務省が発表した「2022年国際宗教自由報告書」のなかでも、「拘束された多くの法輪功学習者が厳しい環境下での睡眠の剥奪、強制的な薬物投与、電気ショックを含む拷問や虐待を受けたとの報告がある」と記している。
欧州議会は今年1月、中国共産党による法輪功学習者への迫害を非難する決議を採択した。信仰を放棄させるための拷問や虐待、恣意的な拘束が続いているとし、1999年から続く迫害によって少なくとも数千人が死亡したと指摘した。
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