ウォールストリートで高い評価を受けている経済学者、ヤン・ハッツィウス氏は、米国経済が不況に突入することはなく、米国が今後1年以内にソフトランディングを達成すると予測している。
ゴールドマン・サックスのチーフエコノミストであるハッツィウス氏は、2008年に住宅ローン危機が重大な経済危機を引き起こす可能性があると早期に警鐘を鳴らした。また2023年の米国経済はソフトランディングに成功するという経済予測も的中させた。
これらの予測の正確さにより、彼はウォールストリートやワシントンD.C.で高い評価を受けている。
ハッツィウス氏は、ローレンス・R・クライン賞を2009年と2011年に受賞しており、精度の高い経済予測で知られる数少ない経済学者の一人だ。
CNNのインタビューで、ハッツィウス氏は、インフレ率が予想を上回る現状になっても、米国経済は今後12か月でソフトランディングを達成する見込みだと述べた。
また過去1年間を振り返り、経済全体は楽観的な状況にあり、インフレ率が大きく減少しているにも関わらず、依然として予想以上の水準にある。
経済活動の顕著な弱まりは見られない中で、経済の下降が生じていることが問題だが、「不況、あるいはその一歩手前の状態には至っていない」との見解を示した。
インフレに立ち向かうため、FRB(連邦準備制度)は2022年から2023年にかけ、前例のない速さで金利を上げた。
この措置により、失業率は急増した。COVID-19流行後の経済回復が阻害されることを懸念しているが、消費者の支出と雇用市場は予想以上に堅調である。
ハッツィウス氏は、今後12か月で米国経済が不況に陥る可能性は15%とし、これは通常年度の平均リスクと同程度だと強調している。
連邦準備制度、6月に利下げの可能性
また、6月までにインフレ率が低下すれば、FRBは利下げをすることが見込まれる。この利下げが、住宅ローン、自動車ローン、クレジットカードの借入れコストの軽減に寄与するだろう。
「経済データに依存されるが、現在の予測と市場の見通しによれば、最初の利下げは6月に実施されると考える」とハッツィウス氏は述べている。
雇用市場が弱まり始める兆しが見えれば、FRBは金利を下げるペースを加速するかもしれない。
ハッツィウス氏は「労働市場が悪化する兆しを見せた場合、我々は迅速に行動を取る必要がある」と述べている。
米国の雇用募集活動は依然として活発だが、2月の失業率は3.9%に上昇し、2023年7月に記録した歴史的な3.5%を超えた。
失業率が4%を超えると、FRB内での緊張が高まり、金利の引き下げを早める可能性があると、ハッツィウス氏は指摘している。
米中関係が米国経済に与える未知なる影響
予期せぬ出来事が将来、米国経済に大きな変動をもたらす可能性はあるだろうか?
ハッツィウス氏は「原則として、衝撃は全てマイナスである。私が最も心配しているのは、地政学的なリスクだ」と語っている。
「私たちは不安定な世界に生きている。軍事衝突、ウクライナや中東の戦争、そして米中間の緊張も高まっている」
また、彼は4年前に発生したCOVID-19パンデミックを挙げ、「過去数十年、あるいは史上もっとも極端な未知の要素であった」と述べた。
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