世界最大の仮想通貨取引所バイナンスの創業者で元最高経営責任者（CEO）の趙長鵬（チャンポン・ジャオ）被告（46）に対し、米検察当局は23日、マネーロンダリング（資金洗浄）の罪で禁錮3年の実刑判決を求刑した。趙被告は昨年11月、反マネロン法違反の罪状を認めており、30日にワシントン州シアトルの連邦地裁で量刑が言い渡される。

検察当局は法廷文書の中で、「被告は前代未聞の規模で意図的に米国の法律を無視した」と指摘。バイナンスが過去にハマスやアルカイダ、「イスラム国」など指定テロ組織との間で、10万件超の不審な取引を報告していなかったことなどを挙げ、「犯罪の重大性を反映させるため」に、量刑基準で示された上限の2倍となる禁錮36か月が適切だと主張した。

趙は認罪合意で、量刑基準の上限となる禁錮18か月以下の判決には上訴しないことに同意している。昨年11月にCEOを退任した際、反マネロン法違反を認め、巨額の罰金と和解金の支払いに応じた。バイナンスは制裁金として18億1000万ドル（約2400億円）、被害弁償として25億1000万ドル(約3968億円）を支払うほか、被告個人も5000万ドル（79億円）の制裁金を支払う。

バイナンスをめぐっては、米証券取引委員会（SEC）が昨年6月、取引量の水増しや顧客資金の不正流用などを理由に、趙やバイナンス傘下の関連企業を相手取り、民事訴訟を起こしている。バイナンスは2017年の創業から急成長し、わずか1年足らずで世界最大の仮想通貨取引所に躍り出た。

検察当局は法廷文書で、「被告は捕まらないと高をくくっていたが、犯罪の代償を支払わなくてはならない」と述べ、厳しい処罰の必要性を訴えた。趙被告は現在、1億7500万ドル（約277億円）を保釈金に保釈中だが、量刑後は服役先の刑務所に移送される見通しだ。

趙は1977年9月中国江蘇省生まれ。1980年代後半に一家でカナダに移住した。父親は中国で大学教授だったが「知識分子」と呼ばれ国外追放された。大学卒業後、東京証券取引所の下請け会社でインターンシップを経験したこともある。