スターバックスは、厳しい時期を迎えているようだ。
第1四半期のレポートには、予想外の「同店売上の減少」、「年間予測を大きく下方修正した」など、悪いニュースが記されている。これにより、同社の株価は17%も下落し、市場価値はたったの828億ドル(約12兆7995億円)に落ち込んでしまった。
正直なところ、私はスターバックスのコーヒーが好きではない。ただし、近くに他の選択肢がない場合の旅行中に時々行く。
それでも、創業者であり元最高経営責任者(CEO)のハワード・シュルツ氏が、グリニッジ・ヴィレッジ(ニューヨーク市マンハッタン区ダウンタウンにある地区の名称)の古いコーヒーショップを改装し、一般の人々にとっても安心して利用できる場所にしつつ、ボヘミアン(ロム〈ジプシー〉) な雰囲気を残して、彼のカロリーたっぷりのフラペチーノ(コーヒーとミルク、クリームなどを氷とともにミキサーにかけたフローズン状のドリンク)を購入することがクールだと感じさせるマーケティング手腕には敬意を表す。
しかし、なぜ現在このビジネスモデルが機能しなくなったのか?
シュルツ氏は、各店舗の手抜きによるメンテナンス不足を批判して、「店舗は、商人の視点から顧客体験に徹底的に注力する必要がある。解決策はデータにあるのではなく、店舗にある」と述べた。
このコメントはLinkedInに投稿されたもので、一般向けの発言だ。
一方、バンク・オブ・アメリカのアナリスト、サラ・セナトーレ氏は、スターバックスの中東政策の失敗を原因として挙げているが、これは少し無理があると思われる。スターバックスの国内店舗の来店客数は7%も大きく減少した。スターバックスの中東政策を知っている、またはそもそも存在するかどうかを知っている顧客が、わずか半分の1パーセント以上いるとは考えにくいし、店舗でそのような情報が公開されているわけでもない。
スターバックスの凋落の本当の理由は明らかだ。故ジャーナリストのH.L.メンケン氏がよく引用する言葉にもあるように、「問題はお金のことだ」ということ。
今現在、スターバックスのような高価なカフェでたかが飲み物に多額なお金を支払う人は減っている。他にも安価な選択肢がたくさんある。
これは労働者階級だけでなく、ブルジョワジー(資本家階級)にも当てはまる。彼らはよく自宅でキャラメルマキアートなどを、お店よりずっと安く作れる機械を持っている。
スターバックスが直面している問題は多くの人にとって、それほど重要ではないかもしれないが、それは私たちの国が今どのような状況にあるかを示す一つのサインだ。パンデミックが始まって以来の「金持ち」と「お金持ちでない人」の格差は縮まるどころか、むしろ拡大している。
一方で、「ZeroHedgeゼロヘッジ」によると、少なくとも短期的にはコーヒーの価格見通しは芳しくない。
「国際コーヒー機関の新報告によると、コーヒー市場は非常に厳しい状況にあることが示されている。*ロブスタコーヒーの価格は45年ぶりの高騰を記録し、供給不足の深刻さと世界最大の生産国での豆の買いだめが進んでいることを示している」
* ロブスタはアラビカ種よりも少糖類の含有量が少なめ。 そのため、アラビカ種のようなコーヒーらしいコクや香りが控えめ。 一方、ロブスタはカフェインの含有量が多く、アラビカ種のおよそ2倍。日本や米国でカフェで流通しているのはアラビカ種。しかし全体としてはロブスタの価格に影響されるということ。
ロンドンを拠点とするあるグループが月次レポートで、深刻な情報を伝えた。国際コーヒー機関(ICO)の卸売価格指数は、主要な市場での即時価格を基にしており、4月には17%も急上昇し、1979年以降で最も高い水準になった。さらに、報告ではベトナムのロブスタコーヒー産地が連続した不作に悩まされている状況も指摘している。
私は、甘い軽質原油の価格よりも、この問題がより気がかりだ。何年もの間、私はコーヒー中毒者で、1日に6杯以上を飲む。これを作家としての必要な習慣だと自分に言い聞かせている。しかし、私の消費量は、「コーヒーの快楽と苦痛」を書いたり、「人間喜劇」シリーズで90作以上の小説や短編を残した天才作家、オノレ・ド・バルザック(19世紀のフランスを代表する小説家)には遠く及ばない。彼は1日に50杯ものコーヒーを飲んだと言われている(これには異論もある)。
それでも、コーヒーは長年にわたって私のお気に入りの嗜好品だ。カフェインが適量であれば健康に良いという研究結果には嬉しく思っている(私はその適量を少し超えているかもしれないが、気にしている人はいるだろうか)。
スターバックスであれどうであれ、コーヒーの高価格には耐えるしかない。あなたも同じように耐えるべきだ。私たち全員がそうすべきだと思う。
1960年代には「自分でタバコを巻く」のが流行したが、今は自宅でコーヒーを淹れる時代だ。インターネット上には様々なレシピが溢れており、エポックタイムズに掲載された記事「どのコーヒーの淹れ方が最も優れているか? プロのバリスタが評価」には多くのアイデアが紹介されている。
私たちはバリスタほどこだわりはないが、自宅でいくつかの方法を試し、今ではスターバックスと同等か、それ以上のコーヒーを淹れることができるようになった(ピートのコーヒーほどではないかもしないが)。
私たちがなつかしむのは、コーヒーハウス特有の雰囲気だ。友人と一緒にコーヒーを飲みながら語り合ったり、ノートパソコンを開いてまるで「偉大なアメリカ小説」を執筆しているかのように見せかける場所だ。(実際に私も後者を試みたことがあるが、残念ながら全くの失敗だった。結局、パソコンを閉じて家で仕事をすることにした)
このような雰囲気がないことが、シュルツ氏がLinkedInで触れた「顧客体験」の問題点を指しているのかもしれない。いずれにせよ、チェーン店でそのような体験をすることは難しいだろう。そして、コーヒーショップでの体験が過去のものになりつつあるかもしれない。そうだとしたら、私たちは大切な何かを失っているのかもしれない。私が考えるに、今のコーヒーハウスで素晴らしいと感じる秘訣は、心地よい人たちが集まる場所を見つけることだ。その「心地よさ」は人それぞれに異なっている。
スターバックスの困難を中東紛争のせいだとするセナトーレ氏のコメントに関しては、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、南カリフォルニア大学、テキサス大学オースティン校、ハーバード大学、ボストンカレッジの上空に「イスラエルに神のご加護を」と書かれた横断幕を掲げ、スターバックスへの支援を真に正面から表明している別の企業に注目したほうが良かっただろう。ただし、スターバックスを支持するPatriot Mobile社は、顧客が離れるどころか、逆に新たな顧客を獲得しているという。
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