2021年の東京オリンピック(五輪)に出場した中国代表の競泳選手23人について、ドーピング疑惑が浮上している。世界反ドーピング機関(WADA)は「検体の汚染」だと否定しているが、米議員は中国共産党による国家ぐるみの不正行為の可能性があると指摘。今夏のパリ五輪を前に、国際オリンピック委員会(IOC)に対して真相究明を求めている。
今月22日、超党派からなる米下院の対中国共産党特別委員会は中国代表選手23人によるドーピング疑惑について、IOCのバッハ会長宛に書簡を送った。書簡は4月24日付のニューヨーク・タイムズ紙の報道を引用し、23人は東京五輪開催7か月前の検査で、指定薬物のトリメタジジンの陽性反応があったと指摘した。
報道によると、中国当局は選手を「陰性」と判定して五輪出場を容認。WADAは中国選手によるドーピングや隠ぺい行為を示唆する情報を各国関係者から得ていたにもかかわらず、対処しなかったという。
WADAは陽性反応があったとの報道を受け「検体の汚染が原因」と説明。中国選手のドーピングを否定し、「誤解を招く可能性のある中傷的な報道だ」と反論した。
コロナ禍で開催された東京五輪では、30選手からなる中国競泳チームが金メダル3個を含む6個のメダルを獲得。これらの選手の多くは現在も中国代表として活動しており、一部選手は今夏のパリ五輪出場も見込まれている。
WADAが23人の出場を許可した背景には、賄賂の可能性も浮上している。AP通信によれば、2019年から中国共産党政府はWADAに対して、年間200万ドル以上の資金援助をしていたという。
米下院の対中共特別委員会は中国共産党とWADAの隠ぺいや不作為を批判。「いかなる国も国際社会における法的・倫理的スポーツ基準の最高水準から逸脱できない」と指摘した。
委員会はIOCバッハ会長のほか、米司法省と連邦捜査局(FBI)にも書簡を送付し、中国共産党の組織的なドーピング疑惑を解明するよう求めた。米国はトランプ政権時代の2020年、国際的なドーピングの共謀に関わった米国あるいは外国の個人・組織に制裁を科す法律を制定している。
「中華人民共和国はロシアが以前行ったような、五輪で不当な競争をするための国家ぐるみの戦略を行っている可能性がある」とし、中国当局によるドーピング疑惑や隠ぺいに関して、6月5日までに議会に報告するよう求めた。
マーシャ・ブラックバーン議員らは同様の書簡を23日までにWADA宛に送付し、ドーピング疑惑のかけられた選手を出場させた経緯について説明を求めている。
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