【プレミアム報道】中共、アフリカメディアへ統制強め、反米プロパガンダ推進(1)

2024/06/13 更新: 2024/06/13

ヨハネスブルグ—

中国共産党(中共)は、アフリカ各地のメディアを掌握し、市民が公平で正確なニュースを得る機会を大きく狭めている。アフリカにおける中国の影響力に詳しい2人の専門家の研究が、中国(共産党)政府はこのニュースにより、反米的なメッセージを自由に拡散する余地を持っていると指摘した。

アフリカ戦略研究センターのポール・ナントゥリヤ氏と米国外交政策評議会及び米ノートルダム大学准教授のジョシュア・アイゼンマン氏の報告によると、中共政権がアフリカで宣伝活動や誤情報、偽情報を広めることに成功しているという、懸念すべき状況が浮き彫りになっている。

これらの専門家の調査結果は、アメリカ政府がアフリカのメディア環境における中国の優位性に対して、ほとんど対策を講じていないことを示している。実際、予算削減の影響で、アメリカ政府の国際放送機関であるボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、アフリカの事務所を閉鎖し、アフリカでの報道活動を大幅に縮小せざるを得なくなっている。

ナントゥリヤ氏は報告書の中で、中共が支配するメディアがアフリカ全土のニュースと情報のエコシステムに「埋め込まれ」ており、真実を「歪曲」し、「統治、社会、経済など、さまざまな問題に関する国民の議論を形成する独立した情報」へのアクセスを制限していると述べた。

ナントゥリア氏とアイゼンマン氏の調査によると、中共の工作員がアフリカ全土で活動する4つの主要報道機関に何百人ものアフリカのメディア関係者を採用している。

これらのメディアは、新華社通信、チャイナ・グローバル・テレビジョン・ネットワーク(CGTN)、中国日報、中国国際放送局である。新華社と中国国際放送局はともに官製メディアで、中共の代弁者であり、CGTNと中国日報は、中共宣伝部によって管理されている。

研究によると、中国の組織は高額の給料を提供して、著名なアフリカのメディア関係者を採用し、自身のプロパガンダに「信頼性」を持たせている。

アイゼンマン氏は、「これら4つのメディアは、膨大な国家資源を受け取っているため、国連の6つの言語(アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語)において、さまざまな種類のメディア(印刷物、テレビ、ラジオ、オンライン)を使って豊富な記事を報道する」と結論付けた。

同氏は、各社が「Facebook、Instagram、Twitter(X)、YouTubeなど、中国ではブロックされているプラットフォームで、数百万人のフォロワーを持つ多言語対応の外向きのソーシャルメディアアカウントを多数持っている」と述べている。

アイゼンマン氏によると、中共は新華社通信、CGTN、中国日報、中国国際放送局を通じて、多くの経営難に陥っているアフリカのメディアを資金援助し、その見返りに「好意的な」報道を要求している。

同氏は報告書に「中国の声を統合するために、中共宣伝部は、無料のコンテンツを提供し、政府や民間の放送局とコンテンツ共有契約を交渉し、補助コンテンツに多額の費用を支払い、最先端の機器を提供し、主要なメディア企業の株式を買い取り、さら研修も提供している」と書いている。

「これらの研修は、アフリカのジャーナリストが中国へ行き、全額支払われた旅行でファーストクラスの待遇とガイド付きツアーを受けることで、肯定的なイメージと経験を植え付ける、終わりのないように見えるベルトコンベアのようなものだ」

多くのアフリカの若いジャーナリストは中国で訓練を受け、中国のメディア組織から報酬を得ている。2013年にノルウェーの研究機関CMIが発表したシュビ・リ氏とヘルゲ・ロニング氏の報告によると、ケニアだけで500人のジャーナリストや地元スタッフが中国のメディア機関に雇用され、月に少なくとも1800件の英語のニュースを報じていた。

 

2013年12月、ケニアのナイロビにある印刷所で、技術者が中国資本の新聞「チャイナ・デイリー」のコピーを検査している (TONY KARUMBA/AFP via Getty Images)

広範な存在感

アイゼンマン氏によれば、中国のメディアの存在感は、2008年の世界金融危機直後に「著しく拡大し始めた」。

同氏は「予算削減により、多くの西側のニュースメディアが海外報道を縮小せざるを得なかった一方で、中国は『対外プロパガンダ(Big Foreign Propaganda)』と呼ばれる世界規模の72億5000万ドルのキャンペーンを開始した」と述べた。

ナントゥリア氏によると、このプロパガンダ活動が世界中で持続的に行われており、特にアフリカで顕著だ。アフリカ大陸が近い将来、どれほど重要になるかが明らかになっているためだ。

多くのアフリカ諸国には、風力タービンや太陽電池、コンピューター、携帯電話、兵器システムなどの代替エネルギー製品の製造に必要な希少金属や貴金属、鉱物が大量に埋蔵されている。

中国の主要な国営メディアである新華社は、中共宣伝部に直属する。

ケープタウン大学メディア学科長のハーマン・ワッサーマン教授は大紀元に、「新華社のアフリカ報道は、中国、共産党、習近平について肯定的なニュースだけを報道するという同社の方針を反映している。新華社の主な役割の一つは、米国を否定的に描くことだ。例えば、最近ではバイデン政権が中国のエネルギー製品に対する税金を引き上げたことを取り上げ、その決定がアメリカにとって裏目に出るだろうと報じている」と述べた。

新華社は、アフリカ54か国のうち14か国を除く全ての国に拠点を置いている。アフリカ大陸のどのメディアよりも多く、40のアフリカ支局を持ち、約千人の従業員を抱えている。そのほとんどがアフリカ人だ。

一方、VOAはアフリカ大陸に1つの支局しか残っていない。VOAの上級スタッフは大紀元に「5年前には5つの支局があり、それぞれアフリカの異なる地域をカバーしていた」と語った。

 

 

続く

 

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