トランプ大統領は、南アフリカの土地収用政策(土地の再分配と公正な所有権の確立を目指している取り組み)が論争を引き起こしていることを受け、アメリカがこの問題を調査し、今後南アフリカへのすべての援助を一時的に停止することを発表した。この措置の結果、南アフリカの通貨は下落した。
トランプ氏は2月2日にTruth Social上で、南アフリカ政府の最近の措置が、当局に不公正に土地を没収させ、特定の階級の人々に対し「非常に悪質に扱っている」とし、不平等だと非難した。
トランプ氏は「アメリカはこのようなことを許さない。我々は行動を起こす……。この状況が徹底的に調査されるまで、南アフリカへの今後の資金提供をすべて打ち切る!」とした。
トランプ氏の発言を受け、南アフリカの通貨である「南アフリカ・ランド」は1.9%下落し、1ドル=19ランドとなった。
その後、トランプ氏はブリーフィングで記者に対し、南アフリカの指導者たちが「恐ろしいこと、目を覆いたくなるようなことをしている」と述べた。
トランプ氏は「この件は現在調査中だ。我々は南アフリカが何をしているのかを理解するまで決定を下すことはない」と述べ「彼らは土地を奪い、押収しているが、実際に彼らが行っていることはそれ以上にひどいかもしれない」と付け加えた。
南アフリカの土地法がなぜ論争を引き起こしているのか
長年にわたり、南アフリカの土地問題は論争の的となっている。白人支配時代の不平等を是正することを目的としたこの取り組みは、保守派からの批判を招いており、その中には世界一の富豪であるイーロン・マスク氏も含まれている。マスク氏は南アフリカ出身で、トランプ大統領の有力なアドバイザーである。
先月、南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ大統領は、特定の状況下で、公益のために奪われた財産に対して、政府が補償を行う必要がないことを定めた法案に署名した。
南アフリカ政府のウェブサイトによると「地方、各州、国家の当局は、この法律を利用し、さまざまな公共の利益のために土地を収用し、包摂性(多様な人々を受け入れ、調和を図ること)の促進や自然資源の取得を行うことができる」としている。
しかし、一部の団体は、1980年に独立後のジンバブエで起きたように、補償もなく白人の商業農場が強制的に収用される事態が発生するのではないかと懸念している。
データ入手可能な最後の年である2023年、アメリカは南アフリカに対して約4億4千万ドルの援助を行った。
最近、アメリカのトランプ大統領は国務省に対して、すべての対外援助を90日間停止し、その後の再評価を行うよう指示した。このため、アメリカ政府の主要な国際援助機関である「アメリカ国際開発庁」(USAID)の将来は不透明な状況にある。現在、USAIDのウェブサイトは閉鎖されており、数十人の職員に休暇を取るように指示している。
先月、南アフリカのラマポーザ大統領はダボスで開催された世界経済フォーラムにおいて、両国の関係について「心配していない」と記者に述べた。ラマポーザ大統領はトランプ氏の当選後、トランプ氏と会話をし、トランプ政権との協力を期待していると語った。
南アフリカは今年、20か国グループ(G20)の議長国を務めている。
トランプ大統領は1期目の任期中に、白人農民が広範囲に殺害された疑惑をアメリカ政府が調査すると発言した。 一方で南アフリカ政府は、この疑惑は根拠のないものだと考えている。
マスク氏 南アフリカの極左派が「民族浄化」を推進していると批判。
マスク氏は南アフリカで生まれ、2023年に南アフリカの極左政党が、反アパルトヘイトの古い歌「ボーア人を殺せ」(Kill the Boer)を歌っている映像をリツイートした。ボーア人は、南アフリカに住むオランダ、フランス、ドイツの白人移民の子孫である。
この映像をリツイートする際、マスク氏は「彼らは南アフリカの白人に対する民族浄化を、公然と推進している」と批判し、ラマポーザ氏をタグ付けして「なぜ何も言わないのか?」と疑問を呈した。
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