ロシアからの濃縮ウラン輸入が急増、中国共産党の目的は何か?

2024/06/27 更新: 2024/06/27

中国ロシアから前年比で大幅に濃縮ウランの輸入を増やしている。この急増は、中国とロシア間の核協力が強化していることを示している。本記事では、この核協力が国際安全保障に与える影響と、西側諸国が直面するリスクについて分析する。

ロシアのメディアによると、中国共産党が公表した統計データによれば、2024年5月に中国はロシアから濃縮ウランを含む化合物を合計2億3300万ドル(約372億円)で購入した。このうち濃縮ウランの購入額は2億3150万ドル(約369億円)で、残りの化合物は140万ドル(約2億2千万円)である。これは2015年に統計を開始して以来の最高額である。

今年4月のデータによれば、中国共産党が購入した濃縮ウランは約7千万ドルだった。

5月に購入量が急増し、年初からの5か月間で中国はロシアからウランとその他の放射性元素を合わせて3億1100万ドル(約496億円)分を購入した。昨年末までの累計では、ロシアから中国への放射性元素の販売額は4億4千万ドル(約702億円)で、その中で濃縮ウランが4億1800万ドル(約667億円)を占めている。

ロシアと中国の核エネルギー協力の深化

ロシアの国営原子力企業は、世界の核燃料供給者の中で「最大の濃縮ウラン供給者」としている。2022年2月のウクライナ侵攻後も西側の厳しい制裁を受けながら、ロシアは依然として大量の濃縮ウランを輸出している。

イギリス王立統合軍種研究所の分析によれば、世界各国は2021年にロシアから約12億9千万ドル(約2千億円)分の濃縮ウランを輸入し、2022年と2023年の輸入額はそれぞれ約20億3千万ドル(約3千億円)だった。今年は27億ドル(約4千億円)に増加する見込みである。

2022年、ロシアの国営原子力企業のEU諸国への濃縮ウラン供給は全体の約30%、アメリカの公共事業会社への供給は23%を占めている。

西側諸国はロシアに依存しない核燃料供給体制を構築するため、ウラン濃縮技術の向上や新しい核燃料製造施設の建設に取り組んでいる。一方、中国はロシアからの濃縮ウラン購入を増やし、昨年から今年にかけて7億ドル以上購入している。この背後にはどのような戦略があるのか?

ロシアからの濃縮ウラン供給は、中国で核反応の燃料や核兵器製造に不可欠な原材料として使用されている。

中国は核エネルギー分野で世界をリードし、現在55基の原子炉が稼働中で、さらに22基を建設中である。2022年から今年5月にかけて、中国共産党はロシアから大量の濃縮ウランを輸入し、国内の核燃料供給と戦略的備蓄を確保した。中国原子力工業公司は、価格変動や供給網の不確実性に対応するため、濃縮ウランの国内備蓄増加を推奨している。

核兵器製造も濃縮ウランの輸入目的の一つである。中国共産党とロシアの核分野協力は1950年代に始まり、最初、ソ連が支援したが、後に両者の関係が悪化し支援は中断された。21世紀に入り、中露は核分野での協力を再開し、特に近年はその結びつきを強化している。

2023年3月、習近平はロシア訪問中、プーチンと会談した。ロシアの国有原子力企業と、中国の国家原子力機構が、高速増殖炉と核燃料サイクルシステムの開発に関する長期協力契約を締結したと発表した。5月4日、ロシア政府はロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社の燃料サイクル部門であるTVELの、新型核燃料の中国への輸出を正式に認可した。これにより、今後3年間で、濃縮度30.4%以下のウラン-235を中国福建省の霞浦高速増殖炉プロジェクトに供給することを決定した。このプロジェクトでは、合計600メガワットの発電能力を持つ2基の高速増殖炉が計画されている。

自然界に存在するウランのうち、ウラン-238が99.2%を占め、これは核分裂が起こりにくい特性を持っている。一方、通常の原子炉で使用される燃料ウラン-235も0.8%存在する。これは自然に核分裂を起こしやすい唯一のウランである。ロシアがウラン-235の輸出を承認したことで、中国はウラン精製の工程を省略できるようになった。

西側国家の対応と国際安全保障への影響

さらに、高純度の濃縮ウランを入手した中国は、高速増殖炉を通じてプルトニウムの生産能力を得た。プルトニウムは核兵器製造に不可欠である。昨年、アメリカのボイス・オブ・アメリカが報じたところによると、アメリカ遺産財団の元核政策分析官パティ・ジェーン・ゲラー氏は、中国とロシアの核エネルギー協力が深まることに懸念を示している。「ロシアからの核燃料供給が増えるほど、中国のプルトニウム生産量も増加し、それに伴い中国が製造可能な核兵器の数も増える」と警告した。

一方、アメリカの核兵器史研究者で核兵器シミュレーション「NUKEMAP」開発者のアレックス・ウェラースタイン氏は、異なる見解を示している。彼は、ボイス・オブ・アメリカに対して、「国際裂変材料グループの推定によれば、中国共産党は約14トンの高濃縮ウランと約3トンのプルトニウムを保有し、すでに多くの核弾頭を製造できる」と話した。

2023年のスウェーデンのストックホルム国際平和研究所の報告によると、中国は世界で第3位の核武力を持つ国だ。2022年の350発から2023年には410発に増加し、今後も増加する見込みである。同研究所は、中国が必要と判断した場合、2030年までにアメリカやロシアに匹敵する大陸間弾道ミサイルを保有する可能性があるという。

2023年のアメリカ国防総省の報告によると、中国は核兵器の生産を加速し、2035年には最大1500発の核弾頭を持つとしている。中国はこの件について明確に肯定も否定もせず、最近の核兵器開発は防衛目的であると主張している。

中国共産党の核弾頭数の増加は、ロシアの核産業との連携強化、およびロシアからの濃縮ウランの輸入増加と密接に関連している。

対ロシア制裁回避

これらの目的を追求する一方で、中国共産党は西側諸国からのロシアへの制裁を利用し、濃縮ウランの輸出から利益を得ようとしている。ロシアの原子力関連企業と中国の国営原子力機関が密かに合意を交わし、制裁の影響を受けていない中国を通じて濃縮ウランを輸出することで、中国共産党が利益を得るとも言われている。

イギリス王立統合軍研究所の報告によると、2022年の中国の濃縮ウラン輸出量は97トンで、前年の95トンとほぼ変わらなかった。しかし、2023年には前年比288%増の368トンに急増した。この増加は主にアメリカ市場の需要が原因であり、中国の公式統計では175トンをアメリカへ輸出したとしているが、アメリカ側のデータでは293トンを輸入したとしている。

さらに、中国原子能工業会社は韓国の水力及び原子力電力会社と2026年から2031年まで供給契約を締結した。この契約には何か他の意図があるのだろうか。

中国共産党が濃縮ウランの輸入を急増させているため、アメリカやヨーロッパを含む西洋諸国は警戒を怠ってはならない。これには2つの理由がある。1つは、核弾頭の増加を防ぐため。もう1つは、濃縮ウラン供給網で、ロシア依存がもたらすリスクを避けるためである。

周曉輝
関連特集: オピニオン