[ロンドン 19日 ロイター] – 世界各国で19日、大規模なシステム障害が発生した。交通網が混乱し、テレビ放映が中断したほか、金融機関や医療サービスなどの多くの分野で業務に影響が広がった。米サイバーセキュリティー企業クラウドストライクのセキュリティーソフトが原因だったとみられる。
<何が起きたか>
クラウドストライクのセキュリティーソフト「ファルコンセンサー」の更新によって、マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」がクラッシュし、「死のブルースクリーン」と呼ばれるブルースクリーンが表示されるなどのトラブルが相次いだ。
クラウドストライクのジョージ・カーツ最高経営責任者(CEO)は、ウィンドウズ向けのコンテンツ更新プログラムで欠陥が見つかったとし、「セキュリティーの問題やサイバー攻撃ではない」と強調。修正プログラムを展開しているとも説明した。
英国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)の元トップ、キアラン・マーティン氏は、「前例がないわけではないが、これほどの規模の障害は思い出せない。最大規模の障害の1つだ。ただ、問題の本質は実は非常に単純で、短期間で解消する公算が大きい」と述べた。
<背景>
政府や企業による少数の相互接続されたテクノロジー企業への依存度はここ20年ほどで高まっている。こうした傾向は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)によっても加速された。また、多くの企業がサイバー攻撃への対策としてサイバーセキュリィー製品を使用していることが背景だ。
英国を拠点とするサイバーセキュリティー・コンサルタント会社PwnDefendのダニエル・カード氏は「クラウドへの移行に加え、クラウドストライクのような企業が巨大な市場シェアを獲得した。同社のソフトは世界中の何百万台ものコンピューターで稼働している」と指摘。サイバー障害はオンライン化が進む世界のリスクを浮き彫りにしたと述べた。
<障害の影響>
運輸業界への影響が大きく、東京、アムステルダム、ベルリン、スペインなどの空港でシステム障害により欠航や遅延が発生、予約システムなどにも影響が及んだ。
アメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド航空など米大手航空会社は19日未明、通信障害で出発できない状態となった。
英国では医院の予約システムがオフラインとなり、主要ニュース局のスカイニュースは一時放映できなくなった。
オーストラリア、インド、ドイツ、南アフリカなどでは銀行や金融機関が顧客サービスを中断した。
<クラウドストライクとは>
米テキサス州オースティンに拠点を置くサイバーセキュリティー企業。企業向けにクラウドベースのセキュリティーソリューションを提供する。19日の大規模障害の原因となった「ファルコン」ソフトは、異常な動作や脆弱性を特定し、マルウェアなどの脅威からコンピュータシステムを保護するという。
今年1月時点で、170カ国以上で事業を展開し、7900人超の従業員を擁する。直近の四半期決算によると、売上高は9億ドルを超え、その約70%を米国で稼ぎ出す。
<主な顧客や競合>
世界で約2万9000社の顧客を抱える。アルファベットのグーグル、アマゾン・ドット・コム、インテルなどのハイテク大手のほか、小売大手ターゲット、F1チーム「メルセデスAMGペトロナス」、米政府などが含まれる。
パロアルトネットワークスやゼットスケーラー、フォーティネットなどと競合する。
<株価動向>
19日の取引で、クラウドストライクの株価は一時14%超急落。LSEGのデータによると、18日終値時点での時価総額は約835億ドル、年初来34%程度値上がりしていた。
競合のパロアルトの株価は年初来約10%値上がりし、時価総額は約1048億7000万ドル。
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