気候変動に関する朗報

2024/08/23 更新: 2024/08/23

論評

最近、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)はこのように報じた。

「これまで気候変動の原因に対処する取り組みは十分ではなかった。そのため、症状(現象)に対処するための大規模な取り組みが進められている。政府や民間の資金が洪水対策、極端な暑さへの対応、気候変動による過酷な天候に耐えられるインフラ強化に投入されている」

なんと嬉しい報告だろう。この報告は、知恵と常識が勝利したことを意味している。

天候が時折破壊的で命を脅かすことがあることは、誰もが知っている。したがって、この強力な自然の力に対して、私たち自身を守る努力が必要である。しかし、その対策に関しては意見が分かれることもある。

これまでの政策は、破壊的な気象現象の頻度や強度を減らすことを目指してきた。具体的には、エネルギー消費やライフスタイルの大幅な変更を通じて、地球の気候、特に平均地表温度を安定させようとするものである。私はこれを「理想主義的アプローチ」と呼んでいる。このアプローチの提唱者たちは文字通り、世界を変えようとしているのだ。

一方で、私も含めて、こうした政策に反対する人々は、気候が変動していること、激しい気象現象が周期的に発生すること、人間がその被害を最小限に抑えるためにできる限りの努力をすべきであることには同意している。

しかし、WSJ の記事にもあるように、私たちは地球の気候を制御しようとするのではなく、避けられない激しい気象現象を生き延びて耐えることを可能にする技術的および物理的ツールの構築と開発に焦点を当てるべきだと考えている。私はこれを「現実主義的アプローチ」と呼んでいる。

理想主義的アプローチには二つの大きな問題がある。第一に、莫大な費用がかかること。第二に、その効果が不確実で限られていること。2050年までに「ネットゼロ(温室効果ガスの排出と除去のバランスが取れた状態)」を達成するには、数百兆円もの費用がかかるとされている。例えば、マッキンゼーの調査によると、275 兆ドル(約4京21兆3千億円)もの費用がかかる。バンク・オブ・アメリカの研究によると、 150兆ドル(約2京1794兆円)の費用が必要だ。その効果は地球の平均気温を数百分の 1度から十分の一、2 分の 1 度下げるにすぎない。そして、それは気候に影響を与えるさまざまな力の働きについて、科学者たちが正しく理解しているという前提に基づいているが、その前提は豊富な証拠に反している。また、気候変動に関するモデルが極めて不正確だったことを考えれば、このような巨額の投資が果たして効果的かどうかには疑問が残る。

一方、現実主義的アプローチは、耐風性や耐雨性の高い建築物の開発や、排水システムの改善などの技術に重点を置いている。これらの対策は理想主義的なアプローチに比べて、2 つのメリットがある。1 つ目、現実主義的アプローチが機能することがわかっていること。2 つ目ははるかに低コストだ。

理想主義的アプローチのもう一つのリスクは、地球の気候を制御できるという保証がない (また、CO2 排出量の削減によって実際に洪水、ハリケーン、干ばつ、火災などが減少するという保証もない) ことに加え、膨大な費用がかかるために社会が貧困化し、その結果、インフラ整備や他の有効な対策に必要な資金が不足する恐れがあることである。

経済学者サイモン・クズネッツ氏の「クズネッツ曲線」の教訓を忘れてはいけない。1970年代には、人類が繁栄すればするほど、環境が悪化すると警鐘が鳴らされていたが、実際には、一人当たりの所得がある程度以上(現在の一人当たり所得をはるかに下回るレベル)になると、汚染はむしろ減少することが分かった。これは、人々が環境の質を重視し、十分な経済的余裕ができれば、過去の汚染を修復するか将来の汚染を軽減する対策に喜んでお金を払うことができるからだ。

同様に、将来人々が裕福になればなるほど、天候や気候の影響に対抗するための防御策も強化されるであろう。「人間を重視した環境主義」が求められている。貧困は長らく人類にとって最も致命的な条件であり、逆に豊かさは、不利な気象条件に対する最も効果的な防御策となるのである。

したがって、天文学的な費用をかけて気候を制御しようとする理想主義的なアプローチから、破壊的な自然の力に対抗するための実用的で手頃な対策に移行することは非常に有望である。これは非常に喜ばしいニュースである。

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