中国共産党が打ち出した住宅市場の救済策が、目標の8%にも満たない実績に終わり、市場に与える影響が限定的であることが明らかになった。3千億元(約6兆3千億円、1元=約21円)の再貸付計画に対し、わずか247億元の融資が実施されたことで、政府と市場の間の期待と実際の成果に、大きな隔たりが存在している。
この支援策は、中央銀行である中国人民銀行と国有銀行に対して、保障性住宅向けの再融資を行うよう指示し、地方政府には市場に売れ残った新築住宅の購入を支援するよう命じる内容を含んでいる。これらの住宅はその後、社会住宅として賃貸される予定である。
金融時報によると、中国人民銀行の最新データからは、この計画のもとでの融資が247億元に留まっていると報じられている。ゴールドマン・サックスの中国経済専門家、王立勝氏は、「中国の政策実施には常に大きな困難が伴う」と指摘しており、不動産価格に関する銀行、地方政府、関連機関間の合意形成が難しいとされている。
政府の再貸付計画は当初、市場から熱烈な支持を受けたが、わずか1か月で不動産株は再び下落。ゴールドマン・サックスの分析によれば、新築住宅の在庫は月間平均販売量の30倍に達しており、市場価格の半額でこれらの売れ残り住宅を購入し、過去9か月間の平均販売量を維持するには7兆7千億元の投資が必要だとされている。
中国人民銀行の再貸付プログラムは最大3千億元の資金を提供し、銀行はこれを活用して貸出本金の最大60%を補助することが可能である。しかし、このプログラムの効果は非常に限定的であり、必要とされる資金のわずか6%に過ぎない。
中国人民銀行の最新四半期報告によると、6月末の時点での自己資金の引き出し額は121億元にとどまり、未返済の貸出総額は247億元に上っている。
アナリストたちは、現行の再貸付プログラムでは賃貸収益率が低いことから、銀行が貸し出しに積極的になる動機が不足していると指摘している。さらに、地方政府の官僚が新規プロジェクトに消極的であることも問題とされている。
北京大学光華管理学院の金融学教授、マイケル・ペティス氏は、公式のデータが中国経済の全般的な弱さを示していると指摘し、「高品質な成長は厳しい予算の制約のもとで達成されるべきであり、その主要な推進力は国内消費と民間企業の投資である」と述べている。
中国共産党は、国際通貨基金(IMF)が年次報告で提案した、中央政府の予算を使って住宅供給を保証するよう求める提案を正式に拒否し、「政府が全てを保証するという期待を持たせ、道徳的ハザードを招くのを避けるため」と説明している。
この政策の失敗は、市場の不安定さを引き起こし、多くの市民に影響を与えている。現状、政府による追加の措置が必要とされているが、実行に向けた明確な動きはまだ見られない。
編者補足: 中国で不動産価格に関する銀行、地方政府、関連機関間の合意形成が難しい理由は、複数の複雑な要因が絡んでいる。
経済的利害の対立: 地方政府は、土地売却や不動産開発からの収入に依存している。高い不動産価格は税収や土地使用権の売却による収入を増やし、地方財政を支える一方、銀行は不動産価格の下落が与信リスクを増大させるため、価格安定を重視する。したがって、銀行は不動産価格の上昇に慎重で、価格調整を求める傾向がある。
金融システムへの影響: 不動産は中国の金融システムにおいて大きな役割を果たしており、多くの住宅ローンや不動産開発ローンが銀行によって提供されている。不動産価格の急落は銀行の不良債権の増加を招き、金融システム全体に悪影響を及ぼす可能性があるため、銀行は価格の安定を求める。
住宅市場の需要と供給のバランス: 地方政府は、地域の経済発展や都市化の推進を理由に、住宅開発を奨励している。しかし、過剰供給や需要の減少が起こると、不動産価格の下落を招くリスクが生じる。このため、価格を適正に保つことが難しく、関連機関との合意形成が困難になる。
政策の方向性の不一致: 中央政府は、不動産価格の抑制や住宅の過剰供給を防ぐために政策を強化してきたが、地方政府の財政ニーズや経済成長の目標と一致しない場合が多く、政策の調整が難航することがある。
社会的安定の懸念: 不動産価格の急激な変動は、社会的不安定を引き起こす可能性があり、地方政府はこれを避けるために慎重な対応を求められる。価格の引き下げがもたらす影響を懸念し、現状維持を望む声も強い。
これらの要因が絡み合い、銀行、地方政府、関連機関の間で不動産価格に関する合意形成が難しくなっている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。