アメリカでは950ドル(約13万円)以下の万引きは微罪として扱われるようになった。カリフォルニア州を筆頭に、各地で集団万引き(略奪も)が横行し、耐えられなくなった店が次々に閉店している。米国におけるこのような略奪は中国語で「零元購(直訳:タダで購入)」と呼ばれている。
そんな「零元購」は中国の路上でも起きたことがわかった。
8月22日午後、中国広東省潮州市のある店の入り口に置かれた商品が白昼堂々、大勢の市民によって略奪される事件が起きた。
略奪を行う市民を店員が必死に止めようとするも空しく、なんと、通りかかった松葉杖のよぼよぼの老婆までが「強盗」に加わっていたことが監視カメラの映像によって明らかになり、物議を醸した。
関連動画が華人圏で拡散され、米国で横行する「零元購」にちなんで、「中国式零元購」などと呼ばれるようになった。
この日、商店の店主は店の外の舗道に商品を一時的に置いていった。これに気づいた中高年の市民らはしばらく辺りを見回した後、商品が置かれた場所へ近づき、商品に群がった。この状況を見た他の市民も相次いで「略奪」の仲間入りをした。
さらには、通りかかった松葉杖をついた老婆までがよぼよぼの足取りで小走りで「犯罪現場」に向かい、他の略奪者が略奪中に地面に落とした品物をかがんで拾っていた。
後になって、騒ぎを聞きつけた店員が店の中から出てきて、直ちに略奪を止めるよう叫び、一部の商品を取られないよう守ったが、略奪者たちは店員を完全無視していたため、この事態に店員もどうしようもなく、為すすべもなかった。
「なぜ頻繁に、こんなことが起きるのか」
「中国は一体どうなってしまったのか」
とネット上では嘆きが広がっている。
問題の根源
中国では近年、民衆による大規模窃盗や集団略奪事件が頻発している。一部の穀物畑や、スーパーマーケット、野外音楽フェスティバルなどで起きた事件は報じられているが、表面化していない事例も多くあるだろう。
穀物畑を襲った「犯人」たちは、いずれも付近の村の住民たちだ。本来は純朴なはずの農民が、まるで道に落ちている薪を拾うように、他人の畑の作物を平気で盗んでいくのだ。
2023年9月に、河南省南陽市で開催された野外音楽フェスティバルで起きた大規模な窃盗事件においては、付近の住民にして窃盗者の1人である中年女性は「そこにあるから盗ったんだよ」と、いささかも悪びれずに言っていた。
2023年11月に河南省南陽市で起きた穀物畑での集団略奪事件では、人の畑から作物を盗んだあげく、平然と持ち主を罵る者まで現れた。「あんたたちは、恥知らずだ!」「恥知らずなのは、お前だよ!」道徳観念はどこまで欠落しているのか、まさに目を疑う光景だった。
こうした中国の現状について、中国政法大学の国際法修士、賴建平氏(米国在住)はかつて、エポックタイムズの取材に対して、次のように分析した。
「窃盗事件は中国社会全体の問題だ」
「 問題の根源は、中国共産党のもつ(共産主義の)理念、およびそれが影響を及ぼす社会全体の雰囲気にある。なにしろ共産党自身が、毎日のように民衆を搾取し、その財産を強奪しているのだ。そのような『悪のお手本』が身近にあるため、底辺にいる庶民たちが同じことをするようになっただけだ」
「民衆は、法不責衆(ほうふせきしゅう)。つまり、悪いことでも皆でやれば怖くないという心理を持っている。そのうえ、現地の警察も手が出せず、見て見ぬふりをする。なかには犯罪を犯す村民をかばったり、励まして助長している地方の村さえある」
なお「法不責衆」という中国語は「ある行為が違法であっても、それを行う人間があまりにも多い場合は、法律では処罰しにくい」ことを指す。この点は、中国人がとくに陥りやすい「社会道徳の落とし穴」であろう。
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