山東省青島市でイギリス車メーカーのランドローバー・SUVを運転していた女性が、交通トラブルで退役軍人を殴った事件が大きな問題となっている。報道によると、多くの退役軍人が青島に集まり抗議しており、青島市は緊張状態にあるとされ、警察は厳戒態勢を敷いている。
退役軍人たちは、長年の不満を背景に自発的に集まり抗議を行い、これが中共(中国共産党)政府にとって大きな脅威となっているという。
実は、毎年退役軍人が北京に権利を求めて訪れていて、2017年には、2万人以上の退役軍人が一夜にして北京に押し寄せ、軍事委員会の建物や中共中央紀律委員会の建物を包囲する大規模な権利要求事件が発生し、当局を驚かせた。この事件の背後に軍の支持があるのか? 退役軍人の集団は中共にとって最大の脅威となっている可能性があるという。
「ランドローバー女性」暴行事件 大勢の退役軍人が青島に集結して抗議
テレビプロデューサーの李軍氏は新唐人の『菁英論壇』で、青島の「ランドローバー女性」王慧による暴行事件が、8月28日に発生したと報告した。「ランドローバー女性」王慧は確かに傲慢であり、警察の対応も明らかに偏っていたため、これが人々の怒りを引き起こし、事件は国内外で広がり続けている。
この事件は、ランドローバー・SUVを運転していた王慧が逆走して違反運転をし、正しい方向で運転していたドライバーの林さんとトラブルになったことから始まった。王慧は傲慢な態度で罵声を浴びせるだけでなく、林さんに対して十数回の平手打ちを加えた。退役軍人である林さんは耳と鼻から出血していたが、決して反撃しなかった。
ネットユーザーの情報によると、王慧の背後には青島市の副市長兼警察局長の于氏がいて、警察の支局長に王慧を保護するよう要求したため、民衆の不満を引き起こした。世論の圧力の下、事件の翌日、青島市警察局は王慧に対して10日間の行政拘留と1千元(約2万円)の罰金を科す処分通知を発表した。
しかし、市民によると、王慧は逮捕されず、今も自宅にいて、その態度は相変わらず傲慢であるため、ますます多くの人々の怒りを買っている。多くの退役軍人が自発的に青島に駆けつけ、林さんを支援した。その中には、遠く雲南から車で向かう人もいた。大連の退役軍人たちは20台以上の大型バスを手配して支援に向かったと言われている。現在、青島当局は非常に緊張しており、一部の高速道路の出入口は封鎖され、都市部の一部地域では戒厳状態に置かれ、各地の退役軍人が青島に来るのを厳しく警戒している。中国国内のメディア、特に中共の中央テレビもこの状況を報道しており、事態はすぐには収束しそうにない。
退役軍人の抗議 中国全国からの動員
大紀元の主筆の石山氏は『菁英論壇』で、中国社会は確かに民衆の恨みが高まっており、社会の中で敵意が非常に強く、官僚に対する不満も大きく、さまざまな矛盾が非常に絡み合っていると述べた。現在、注目を集めているのは退役軍人団体である。過去十数年、退役軍人のグループは基本的に無敵であり、さまざまな場所に出征し、多くの権利擁護事件を引き起こしてきた。政府は彼らを非常に恐れている状況だ。
元中共海軍中校の参謀である姚誠氏は『菁英論壇』で、青島での一般的な交通トラブルが、なぜ全国の退役軍人の抗議を引き起こしたのかを説明した。それは、退役軍人たちが抑圧された恨みを抱えているからである。
姚誠氏によると、中共は1949年に政権を樹立して以来、約6千万人の退役軍人が転職してきた。退役軍人たちは、軍の改革に関連して、数回の大規模な権利擁護活動を行っており、その一つが1985年の大規模な軍縮、もう一つが1992年の軍隊の精簡調整(軍の規模を効率的に縮小し、組織や運用を合理化すること)である。特に重要なのは、習近平の軍隊改革以降、軍隊が習近平政府に対する信頼を徐々に失い、ますます失望しているという点である。
1985年には、中共が150万人の軍縮を実施し、多くの軍官や兵士が退役させられたが、中共は彼らに仕事を提供しなかった。地方企業に転職した者もいたが、企業改革の結果、工場が閉鎖され、彼らは職を失った。また、同時期に国家機関に転職して公務員になった仲間たちと比べると、彼らは生活に困窮した。差別が生じ、退役軍人たちは自分たちの待遇の回復を求めるようになったのだ。特に軍官にとって、これは顕著な問題であった。
1992年、部隊は精簡調整を行ったが、その規模は小さかった。1993年以降、退役軍人の権利擁護活動が増加した。最も大きな動きは2017年2月に起こり、約2万人の退役軍人が非常に厳密に組織され、一夜のうちに北京に進出した。姚誠氏はこの件について比較的詳しい情報を持っている。当時、これらの退役軍人は事前に北京周辺のいくつかの軍隊の宿泊施設に滞在し、一部は北京周辺で働きながら待機していた。北京に進出した最初の段階では、彼らは中共軍事委員会の建物を包囲して請願するつもりだったが、最終的には中共の中央紀律委員会の建物を包囲した。この動きには軍隊の支持があったためである。なぜなら習近平が、軍隊で多くの人を逮捕したため、将軍たちは不満を抱き、軍隊の宿泊施設が、これらの退役軍人を受け入れ、車で彼らを北京に送ったからである。
これらの退役軍人の中には、非常に困難な状況に置かれている人々がいた。特に1979年の中越戦争で負傷した人は2万人以上いた。彼らは怪我のために働くことができず、毎月の年金が、わずか300元(約6千円)程度である。300元で何ができるのか?
その後、2018年に大きな事件が発生した。当時、全国の各地方退役軍人たちは連絡を取り合い、8月1日にそれぞれの地方政府の入口を封鎖するよう動いた。しかし、この情報は漏れ、抗議活動は鎮圧された。警察は退役軍人を殴り、一部の退役軍人はひどい目に遭った。退役軍人たちは非常に怒っていたという。当時、退役軍人事務部も一部の資金を割り当てたが、その資金は省に送られ、省で一部が差し引かれ、市や県、村でもそれぞれ差し引かれた結果、最終的に退役軍人の手元にはお金が残らなかったというのだ。
現役軍人と退役軍人の間には非常に強い結びつきがあるという。同郷の人々や戦友とのつながりは非常に深い。退役軍人の行動は、現役軍人の不満を大いに反映している。現役軍人は退役軍人の厳しい状況を見て、自分が退役した後も同じような状況になるのではないかと考え、不安を抱えるのは当たり前だ。したがって、今回の全国退役軍人の青島事件は、心の中の不満を発散するために、自発的に青島に集まった結果であると言えるだろう。
中共の無節制な軍事費の増加が、軍人への給与支払い能力を低下させる
姚誠氏は、なぜ中共は軍人の給与を上げないのか? それは国家に資金がないからであると指摘している。
航空母艦や多くの先進的な武器が製造されたが、それらを維持するには費用が必要であり、それを使用するための戦備訓練にかかる費用や投資額も非常に大きい。現在、J-10機が1時間以上飛行するには100万元(約2千万円)が必要である。以前、私は寧波の海軍航空兵第12団を訪れ、軍官から聞いたのだが、第12団が1日飛行するためのコストは、寧波市の工業と農業の総生産額に匹敵するといわれた。軍事費の支出は非常に大きく、特に習近平が政権を握ってからは、軍事に対する支出が無制限に増加している。したがって、結局のところ中共は、資金不足に直面しているのだ。
姚誠氏は、現在、パンデミックが始まって以来、部隊の給料は一銭も増えておらず、また反腐敗に関する一連の文書が発表されたと指摘している。
実際、多くの部隊の補助金や待遇が取り消されており、古い問題は解決されず、新たな問題が生じている。退役軍人たちと話をしたところ、彼らはパンデミック後に物価が急騰し、生活水準が大幅に低下したため、多くの退役軍人が家族を養えなくなったのが現実だ語っている。
住宅価格は下がっているが、野菜や穀物の価格は上昇している。家や車を買わなくても構わないが、食べ物は必要である。さらに、軍人たちは未来に対する信頼を失い、未来がないと感じている。もっと重要なのは、習近平が彼らに戦争を強要していることである。この戦争は勝てないのに、彼らを死に追いやっているというのだ。
中共崩壊前夜、退役軍人の集団が意外な役割を果たす可能性
「大紀元時報」の編集長である郭君氏は『菁英論壇』で、軍人同士には友情があり、独自のシステムが存在し、退役後も彼ら自身の動員システムを維持していると述べている。中国には他の民間組織のシステムはほとんど存在せず、唯一、退役軍人のこのシステムが、残っている民間組織である。退役軍人は通常、軍隊との多くのつながりや関係を持っている。したがって、中共政権が弱体化する際には、この力が影響を及ぼす可能性があるかもしれないという。
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