欧州連合(EU)は29日、31日から中国製EVに45%の関税を導入すると発表した。中国からの安価なEVによる市場の不均衡を是正することを目的としている。
EUは10月29日、数か月にわたる中国との交渉が進展しなかったことを受け、中国製EVに対して最大35%の追加関税を徴収する方針を発表し、新たな関税率(45%)で10月31日から発効、今後5年間にわたり継続される見込みだ。
中国からのEV輸入に関する調査を終えようとしている欧州委員会によると、中国共産党(中共)政府が自国のEVメーカーに多額の補助金を提供し、EU市場で不当に低価格で販売することで、欧州の産業が圧迫されていると判断し、今回の措置を決定した。欧州委員会の貿易担当者であるオロフ・ギル氏は「問題解決にはWTOの規定に合致する方法が必要だ」と述べ、関税導入後も中国との交渉は継続する方針を示した。
公表された最終決定によると、中国の大手EVメーカーであるBYDには17%、Geely(吉利汽車)には18.8%、SAIC(上海汽車)には35.3%の追加関税が課される。
上海にギガファクトリーを持つアメリカのEVメーカー、テスラには7.8%という最も低い追加関税が適用される。協力的と判断された他の中国メーカーには20.7%、非協力的とされるメーカーには最高の35.3%の追加関税が適用される。
この決定は、10月30日にEUの公式官報に掲載されると法的に発効する見込みだ。中共はEUの追加関税に対してWTOに提訴し、関税引き上げを回避するためにこれまで8回の交渉を行ってきた。
中国商務部は豚肉や乳製品を含むEUからのさまざまな輸入品に対する独自の反ダンピング調査を開始しており、これによりEUから中国への輸出品に関税が課される可能性がある。
中共は10月8日にはEU製ブランデーに対する暫定措置を発表した。EUがEV関税の導入を承認した直後の措置となった。EUは中共の対応をWTOに提訴する方針を示し、「貿易防衛手段の不当な使用には断固として対処する」としている。
追加関税の導入により、EUは中共からさらなる報復措置を受けるリスクがあるものの、専門家は今回の関税が中共政権に大きな影響を与える可能性があると指摘している。
米国を拠点とする中国貿易政策研究者のデイビッド・ホワン(黃大衛)氏は、「この措置は、中国製EVが欧州市場で競争力を失うだけでなく、中国が国策として推進してきたEV産業の拡大が停滞する可能性を示唆するものだ」と述べた。
ホワン氏は、中共が「新エネルギー車」と称してEV産業を推進する背景には、環境改善や二酸化炭素排出削減の意図はなく、中国のエネルギーの半分以上が石炭に依存していると指摘した。
「これらのEVを充電する電力は、石炭火力発電や水力発電が主体であり、実際にはガソリンよりも環境への負荷が大きい」とし、中共が「新エネルギー」という概念を用いて国際社会を誤解させようとしていると批判した。
バイデン米大統領は5月14日に、 中国製EVに対する関税を25%から4倍の100%に、車載用電池は現行の約3倍の25%に引き上げると発表した。
カナダ政府は8月26日、中国から輸入されるEVに対し、10月から100%の関税を課すと発表した。
EUが米国や他国と連携し、中国の貿易政策への監視を強める中、ホワン氏は「中国が気候変動交渉でEVを交渉材料として利用することが難しくなっている」との見方を示した。
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