アメリカ政府は12月2日、先端半導体製造装置および高帯域幅メモリの中国への輸出を制限する新たな禁令を発表した。中国共産党（中共）政府はこれに反発し、翌3日に、ガリウムなど、軍事転用可能の希少金属のアメリカへの輸出を禁止すると発表した。専門家は、アメリカの制裁が中国の半導体産業の弱点を突いていると指摘する一方、中共の措置は効果が限定的であり、西側諸国の独立したサプライチェーン構築を促進するとみている。

アメリカの最新制裁　軍事用途の半導体を標的に

アメリカ商務省は今回、新たに中国企業140社を事実上の禁輸リスト（エンティティリスト）に追加した。この中には20社以上の半導体企業および100社以上の半導体装置関連企業が含まれている。また、24種類の半導体製造装置と、半導体の開発・生産に使用される3種類のソフトウェアツールも規制対象となった。

禁輸リストに追加される企業の多くは、中国最大の半導体受託生産企業である中芯国際（SMIC）や華為（ファーウェイ）のサプライチェーンに関連している。さらに、半導体装置メーカーの北方華創（ナウラ・テクノロジー）も対象となっている。

新たな規制は高帯域幅メモリーと「先端ノード」集積回路（IC）の製造に必要な半導体製造装置を対象としている。「先端ノード」ICの製造に使用されるトランジスタが3ナノメートルという極小サイズで、これによりチップ上に多数のトランジスタを配置でき、情報処理能力が格段に向上する。

中国の技術発展に打撃を与える狙い

アメリカ商務省の産業安全保障局によれば、新たな制裁措置は、中共が次世代の先端兵器システム、人工知能（AI）、軍事用途において重要な役割を果たす「先端ノード」半導体を製造する能力を削ぐことを目的としている。

台湾国防安全研究院の王繡雯・準研究員は、大紀元の取材に対し、「この制裁はバイデン政権による中共への最終的な制裁であり、半導体装置という中共の最大の弱点を狙ったものだ」と述べた。アメリカは技術および時間的な優位性を確保するため、中共の先端技術の進展を遅らせようとしていると指摘した。

また、アメリカ政府は量子技術、AI、半導体といった分野での中共の進展を遅らせることに焦点を当てており、中共が新たな技術を開発できない限り、その進展は遅延を余儀なくされるとしている。

アメリカはここ2年間で3回目となる中国に対する半導体の禁止令を出した。

台湾国防安全研究院の蘇紫雲所長は大紀元に対し、今回の制裁は主に比較的成熟したプロセスの半導体に焦点を当てており、従来のハイテク技術を対象としたものではなく、より広範囲の一般的な用途に影響を与えると述べた。これには一部の工業製品も含まれ、中国全体の工業製造の安定性に打撃を与え、その品質にも影響を及ぼす可能性があると指摘している。

中共の対抗措置　逆効果のリスク

アメリカの制裁に対し、中共政府は3日、軍事転用可能な材料のアメリカへの輸出を原則禁止する措置を発表した。特に、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、超硬材料などの輸出が対象とされ、グラファイトについても厳格な用途審査が導入された。これらの材料は半導体の材料として使用され、軍事用途への転用も可能だ。

ただし、中国はこれら鉱物の世界最大の生産国であるものの、独占的な地位にはないとされる。王繡雯氏は、「今回の対抗措置はアメリカの制裁が中共の半導体および高技術開発の急所を突いていることを示している」と述べた。

同氏は中共の手段は非常に限られていると考えている。また、希土類を含む軍民両用物資の対米輸出を制限する措置も目新しいものではない。これにより、アメリカは他の供給源を模索したり、代替品の開発を強化したりするだけであり、長期的には中共の対抗措置の効果は限定的だと指摘している。

蘇紫雲氏も、「中共の対抗措置は短期的には効果があるように見えるが、長期的にはアメリカや西側諸国が独立したサプライチェーンを構築する動きを加速させるだけだ」と指摘している。

トランプ政権の対中政策への期待

来月から2期目を迎えるトランプ政権は、バイデン政権よりもさらに厳しい対中政策を展開する可能性がある。王繡雯氏は、トランプ政権が貿易戦争や技術戦争、金融戦争などの分野で中共に圧力をかけることに優れていると述べ、「中共の高技術発展にとって、大きな挑戦となる」と分析している。

中国問題専門家の王赫氏は、「中共が制裁を回避しようとすればするほど、アメリカは制裁の網をさらに強化する。このサイクルが続く限り、トランプ政権も同様の方針を取るだろう」と述べた。アメリカは引き続き精密な制裁を導入し、中共に対抗していく姿勢を崩さない見込みだ。