百家評論 全てが悪化、内部疲弊、内部闘争、潤(海外移住)、献(社会報復)、躺平(諦め)

2024年の中国 経済下降から社会不安まで 6つのキーワードで見る内部危機

2024/12/29 更新: 2024/12/29

2024年、中国は大幅な経済の下降、政府に対する信頼度急落、そして社会的動揺の特徴的な年であった。経済崩壊内卷(ないけん:過当競争内部疲弊)、権力争い、躺平(とうへい:寝転がって何もしない)の現象が相次ぎ、国民の生活に深刻な影響を与えた。この記事では、これらのキーワードを通じて、中国が直面する内部の危機を深掘りし、その背後にある複雑な要因と市民の反応を探る。

2024年の中国を振り返ると、下降、内卷、闘争、潤(逃避する=海外に移住する)、献(献忠:社会報復)、躺平(諦め)の6つのキーワードがその年の状況を最もよく表している。皆さんはどのようなキーワードを思い浮かべるだろうか?

中国で「下降=悪化」の声が広がり、「内部疲弊」の激化が絶望を招く

テレビプロデューサーの李軍氏は、新唐人の「菁英論壇」番組で、2024年に最も多く目にした言葉は「下降=悪化」と「内卷:内部疲弊」であり、この2つの言葉には非常に深い感慨があると述べている。

李軍氏は、2024年が多くの中国人にとって過去30年で最も困難な年であり、社会の多くの側面で下降の兆しが見られると述べている。

特に目立つのは不動産価格の下落で、一般的に40%から50%の下落が見られる。

北京や広州などの大都市の郊外では、80%から90%も下落した物件があり、多くの三流都市では、大げさな例えで「白菜のような価格」にまで下がっているという。

不動産価格の大幅な下落に続き、不動産販売も30%から40%減少した。

さらに、地方政府の土地販売収入はほぼゼロになり、地方財政に深刻な影響を及ぼしている。

また、「下降(悪化)」は消費の減少にも現れている。

電気自動車や小型車の価格競争は年初から年末まで続いた。中小企業は耐えきれず、次々と閉鎖に追い込まれた。化粧品、高級時計、高級バッグなどの国際ブランド製品の中国大陸での販売も減少した。

外資系企業は撤退するか、規模を縮小している。個人にとっては、最大の問題が、給与削減の波である。

銀行や証券会社、公務員、事業単位、大型国有企業、さらには民間企業の一般労働者に至るまで、給与削減の声が広がっている。また、大学生の就職率も継続的に低下しており、卒業と同時に失業することが、大学生の共通認識となっている。

2024年に最も大きく下降したのは、一般市民や体制内の官僚を問わず、中国共産党政府に対する「信頼の喪失」である。多くの人々が、中国共産党政権に完全に絶望している。中国共産党がどんなに明るい未来を語っても、どんなに巨額の経済刺激策を打ち出しても、「心は既に死んでいる」状態には勝てない。政権に期待を持てなくなった人々は、資金撤退すべき時には撤退し、株式市場から退出すべき時には急いで退出する。これが中国共産党政権が直面している最大の危機である。

李軍氏は、「内巻=内部疲弊」は内部の「悪性の過当競争」であり、中国共産党の統治下で長期的に存在する問題だと指摘している。簡単に言えば、内部闘争や内部消耗であり、経済の悪化がその触媒となっている。

最近、メディアは各地の政府が資金を集めるために大規模に地域を越えて、民間企業や外資系企業を取り締まることを報道している。地方政府の財政収入が大幅に減少する中、互いに足を引っ張り合い、あなたが私の企業を潰したため、私はあなたの企業に罰金を課し、閉店に追い込むつもりであるというような、すべてが根本から崩れ去るような状況を生み出しており、これが深刻な内巻の現象であるのだ。すでに混乱が生じており、多くの業界で企業が次々と倒産し、多くの人々が内巻によって絶望的な状況に陥っている。

李軍氏は、今年の飲食店、理髪店、ミルクティー店、美容院、自動車ディーラーの閉店ラッシュが、経済の不振に加え、過当競争による相互疲弊が重要な要因であると述べている。個人的には、この問題は経済の下降よりも深刻で、解決が難しいと考えている。それは考え方の変革を必要とするからである。

高層部の権力闘争が白熱化し、殺し合いにまでエスカレート

ベテランジャーナリストの郭君氏は『菁英論壇』で、「内卷」という言葉が中国では、一般市民が生活や収入のために悪性競争をすることを指すと述べているが、高層部でも非常に激しい内卷が行われていると指摘している。権力闘争における競争の悪質さは、一般市民以上に深刻である。

最近、内モンゴル自治区の官僚・李建平(りけんぺい)が死刑にされたが、彼の地位は高くなかった。しかし、彼の逮捕は、他の高位官僚を狙ったものであった。昨年の李克強首相の突然の死も大きな出来事であったが、今年は軍の将領や高級官僚が大量に失脚している。税関総署長も拳銃自殺したとされている。これらは、すべて高層部の内卷によるものである。この権力闘争を表す「闘争」という言葉も年間キーワードの候補になると考えられている。

郭君氏は、高層部の内部闘争が、今年の中国の重要な問題の一つであると指摘している。戦区司令官や海軍出身の多くの軍人、総政治部の苗華(びょうか)も突然失脚した。これらは生死を賭けた闘争の性質を示している。2024年には、部長級以上の高官が9人も失脚する見込みである。最新のケースは、前国家体育総局局長の苟仲文(こうちゅうぶん)のことで、12月19日に逮捕が発表された。

他には、台湾民主自治同盟中央副主席の李鉞鋒(りえつほう)、江西省政協主席・前司法部長の唐一軍(とういちぐん)、農業農村部書記・部長の唐仁健(とうじんけん)、全国政協常務委員・チベット自治区前党委書記の呉英傑(ごえいけつ)、海南省前党委書記・全国人民代表大会華僑委員会副主任委員の羅保銘(らほめい)、湖南省前政協主席・全国政協人口資源環境委員会副主任の李微微(りびび)などがいる。また、湖南省の現職財政庁長が建物から投げ落とされて死亡する事件もあり、これも内部闘争が原因である可能性がある。

苛政(かせい:過酷な政治)は虎よりも猛し  中国人のストレスは山のごとし 大量の人々が国外逃亡

郭君氏は、中共内部の内紛が激化し、一般市民がこの巨大な圧力に直面すると、「逃げる」しか選択肢がないと述べている。最近では「潤」(run、逃げる)という言葉が使われている。2024年も海外へ逃げる状況は非常に深刻である。例えば、今年4月にはメキシコのビーチで8人の中国人の遺体が発見され、事故で溺死したとされている。

密入国して米国に行くのは、通常、中国の底辺の人々の選択である。米国に到着後、ほとんどの人が就労許可証を申請でき、自活が可能だからである。他国では不法移民の就労が認められないか、仕事を見つけるのが難しいため、下層の人々は米国を目指す。もちろん、ある程度の資金がある人はこのような方法を選ばない。資金が多ければヨーロッパ、日本、または東南アジアに行けるし、少なければアメリカ大陸の他の国々に行くこともできる。

郭君氏は言う。「以前、私たちは番組で、多くの中国人が日本に移住し、住宅価格を押し上げていると話しました。また、英国の投資移民コンサルタント会社の調査によると、中国の富裕層の半数以上が、移民を計画しており、2024年には資産が10億元以上の15,000人が中国を離れると見込まれています。お金があってもなくても、みんな逃げ出しています。これは確かに『苛政は虎よりも猛し』で、プレッシャーが増し、抵抗できないため、逃げるしかないのです」

高層部の内紛の影響が既に民間に広がり、献忠事件が各地で発生している。

「老北京茶館」チャンネルのホスト、李政氏は『菁英論壇』で次のように述べている。「私が年間のキーワードとして挙げるのは『献』である。中共の官界での激しい内紛が民間にも広がり、無差別な底辺層同士の争いが発生している。献忠事件は非常に深刻である。張献忠(ちょうけんちゅう)は明代末の農民反乱軍の指導者であり、李自成(りじせい)と同様に反明政府軍の大将であった。彼は四川で帝王を名乗り、地元の民衆を大量に虐殺した。

2024年、中国の各都市の街頭では、面識のない人同士の間で、個人的な恨みがないのにも関わらず、予告もなく車で人をはねたり、刃物で人を切りつけたり、小学生を殺傷したりする事件が、毎日のように、時には1日に何件も発生している。これは特に恐ろしい事態である。

ネットユーザーは言う。中国社会は以前は魔法の世界と呼ばれていたが、今は地獄の世界とされている。一人で外出すると、命を落とす危険があり、帰れない可能性がある。そのため、底辺層同士の争いは一般の人々に大きなプレッシャーを与え、耐えられず、解消手段もなく、最終的に暴力的な行動が選ばれるのである。

李政氏は言う。「底辺層の人々は無差別に他人を傷つけるだけでなく、今では官僚に対しても攻撃を始めている。中共の官僚同士の争いや、民衆による官僚の襲撃は激化しており、官僚たちも非常に恐れている。10月1日、湖南省邵陽市の市長兼公安局長が、国旗掲揚式で部下に銃で撃たれて死亡し、銃撃犯も自殺した」

大紀元の主筆の石山氏は『菁英論壇』で次のように述べている。「私たちはこれほど多くの文字について話しましたが、最も恐ろしいのはおそらくこの『献』という字である。この種の事件が中国人や社会全体にもたらす害は、社会の基本構造を崩壊させる可能性がある。」

中国経済の崩壊が加速し、国民は仕方なく「躺平(寝ころぶしかない)」

李政氏は『菁英論壇』で次のように述べている。「2024年のもう一つのキーワードは『躺』(タン)である。中国経済が急速に崩壊しているため、影響を受ける人々が増え、多くが失業し、ローンの支払いができなくなっている。多くの人々は、極端な暴力に走ったり、人生を諦めたりすることはないが、消極的に生活水準を下げることを選んでいる。

以前、『五不』青年が現れた。彼らは家や車を買わず、消費せず、結婚や子供を持たない生活を送り、支出を極限まで抑えている。それでも多くの人々は収支が合わず、仕方なく『躺平』(タンピン)を選ぶ人が増え、中国全体が生気を失ったように感じられる。時には極端な混乱が起こり、献忠事件が発生して恐怖を感じることもあれば、生気を失うこともある。

先日、ある学者が次のように述べていた。北京の街中で、青春に満ちた中学生を何年も見かけず、つまり、この社会は完全に活気を失っており、皆が自分の道を必死に進んでいるが、頑張れなくなると躺平するのだと。みんな消費もせず、街を歩く気力もないため、中国社会全体が人々に与える印象は、爆発前の蒸し器のようだ。ある人々は一見躺平しているように見えるが、いつ突然爆発して献忠事件の主導者になるかわからない。これは本当に恐ろしいことだ。

李政氏は続けて言う。「中国全体の内需循環は、今や人々にポケットに残っているお金を使わせようとしているが、保障も福祉もないため、稼ぐ金額は減少し、お金を使う勇気もない。その結果、誰も消費せず、内需循環も回らず、経済は悪化するであろう。いままでの改革開放の成果は使い果たされ、経済は立ち直れなくなっている。中共体制内の人々、特に高層部はこのことを理解しており、中共はまもなく崩壊するだろうと考えている」

李軍氏は次のように述べている。「献忠であれ、躺平であれ、経済の悪化は重要な側面である。人は利益を重んじるため、経済に問題が生じると、心理状態が悪化し、矛盾が増える。これは社会現象である」

しかし、中国では、さらに重要な2つの要因があると考えている。1つは政治的要因である。中国共産党の統治方式や政治の左傾化、政権維持のために採用した極端な措置、例えば3年間の「ゼロコロナ政策」や「戦狼外交」、「不動産バブルの無制限な膨張を放置」することなど、これらはすべて統治維持のための愚かな措置である。

さらに、中共は組織的に中国の「道徳システム」を破壊し、「社会全体が嘘をつく」ことや争うことが習慣化し、何事も極端に走っている。これらの要因の悪影響が2024年に集中して爆発した。そのため、2024年は多くの中国人にとって非常に困難な年となった。中共の統治が続くなら、2025年はさらに困難になり、2026年はさらに厳しくなるであろう。中国人がいつまで耐えられるかは不明である。

関連特集: 百家評論