中国陝西(せんせい)省渭南(いなん)市では、今月4~6日、「高校生の不審死」をきっかけに大規模な抗議運動が勃発した。
数万単位の市民が街に出て抗議を行ったが、この動きは当局による力づくの弾圧や大量逮捕により、6日以降収束したことがわかった。
現地市民は「どうすることもできない、妥協するしかない、プレッシャーが大きすぎる 」などと嘆いている。
現地の高校生の親は当局から誓約書にサインさせられ、「家で、生徒を3日間管理する。外出させない。ネット上で発言させない」ことを誓わさせられた。学校からも「抗議活動に加わるな」と脅す電話がかかってきたという。
言う通りにしないと子供が学校で「特別扱い」を受けるかもしれないと、子供を人質にとられた形で保護者たちは妥協せざるを得なくなった。しかし、その不満が消えたわけではない。
抗議活動を力づくで鎮圧された後、現地ユーザーは相次いでSNSに「口を封じられている」ことのイメージ画像を投稿し、不服を表した。しばらくしてそれら「口封じ画像」も事件関連投稿と同様、片っ端から削除された。
なかには、関連投稿のコメント欄に「111(『いいね!』の意のネット用語)」と打ち込んだだけでアカウントを封鎖されたというユーザーも。
血眼になって情報封鎖をする当局の狂気にも非難の声が殺到している。
「高校生の不審死」
大規模抗議運動のきかっけは、2日に現地の高校で起きた男子生徒の墜落死事件だ。
当局は「自殺」と断定したこの「事件」について、「本当は集団いじめで、現地役人の子女によって突き落とされた」とする証言が相次ぎ、遺族は真相究明を求めて学校前で抗議するも、当局によって逮捕され暴行された。
遺族を声援するために市民らは、自発的に学校前に集結して抗議を行った。抗議の様子がSNSを通じて拡散されると、やがて、他の省のからの支援者も相次いで駆け付けて、抗議活動に加わる事態となった。
抗議活動の過程で、当局が安定維持のために派遣した警察は、生徒や抗議市民に対して暴力を振るったため、民衆はこれに怒り、警察に反撃したり、学校へ強行突入して学校食堂やオフィスなどの施設を破壊するなど、一部暴動となった。
警察に民衆が集団で反撃するという、まさしく「官民大戦」が繰り広げられたのだ。
民衆の数があまりに多かったためか、警察は一度は「負け」たが、現地当局は暴動鎮圧すべく、大量の機動隊を他省から手配し、抗議する民衆に対して力づくの鎮圧を行った。
(抗議する市民を殴打する警察)
当局は高速道路を封鎖して援軍(他省から駆け付ける抗議の市民)の到来を断ち、抗議市民を大量逮捕した。
(警察に逮捕される抗議者)
学校付近では厳戒態勢が敷かれ、町を歩いているだけで警察に職質される事態となった。
7日昼になっても、問題の学校から1キロ離れた交差点は依然として封鎖状態にあり、現地の駐車スペースのほとんどがパトカーに占拠されていた。
母親が「妥協」(させられた?)
6日、死亡した生徒の母親が「妥協する」動画を公開した。
母親は「当局は家族の疑問について説明してくれた、現在関連部門もこの件に介入しており、いまは話し合いの段階にあります。皆さん、どうかデマに踊らされて学校へ行って集まらないように」と動画のなかで淡々と伝えた。
画面の中の母親は反応が遅く、その目はまさしく「死んでいた」。
母親の妥協動画について、「台本を読んでいるんだろう、気持ちわかるよ」「彼女は無理やり撮影させられたんだ」と指摘する声も多い。
「和解せず、最後まで戦ったらどういう結果が待っているのか? ほとぼりが冷めたら、どれだけの人が、彼女を支え続けると思う? 妥協するのもしょうがない」
といった理解の意を示すユーザーも多い。
母親が妥協したのは、当局による弾圧のほか、200万元(約4300万円)の口封じ費を提示されたからだとする情報も拡散されている。
(母親による「妥協動画」)
民意の現れ
今回の大規模「官民大戦」は「民意の現れ」と専門家は分析する。
NTD新唐人テレビの取材に応じた米国在住の時事評論家、藍述氏は、
「中国共産党の支配下におけるこうした問題や矛盾は昔から存在していた。中国経済の悪化に伴い、ますます多くの矛盾がこうして表面化してくる」
と評した。
米国在住の時事評論家、邢天行氏も、
「抗議や反抗は民意そのもの、人々の蓄積した当局に対する内心の不満が噴出しただけ。最初は小さな力でも、放って置くと、やがては手がつけられなくなる、そうなったとき、中共による統治は終わるだろう」
と指摘する。
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