1月27日に米国株式市場が急落する直前、中国共産党政府と関係のある大量のアカウントが、米国のSNS上で中国のAI企業「DeepSeek」に関する情報を拡散していたことが分かった。
SNS上での情報操作を指摘する報告書
1月30日、ロイター通信は、米国政府に提出された報告書を引用し、ニューヨークのオンライン分析会社 グラフィカ(Graphika) が、中国共産党(中共)政府と関係のあるアカウントが先週、米国のSNSプラットフォーム上でDeepSeekの情報を拡散していたと報じた。
報告書によると、これらのアカウントには 中共の外交官、大使館、国営メディア などが含まれており、DeepSeekに関するニュースを拡散するとともに、「DeepSeekが米国のAI技術の優位性に挑戦する存在である」といった主張を広めていた。
Graphikaは、これらの情報は 中国国内の「今日頭条」や「微博(Weibo)」といったSNSだけでなく、米国向けのX(旧Twitter)、Facebook、Instagram などでも拡散されていたと指摘している。
Graphikaの ジャック・スタブス 情報責任者はロイターの取材に対し、「今回の動きは 北京が迅速に多数の関係者を動員し、地政学的競争の中でAI技術開発の分野で米国を上回ることを狙っている 」と述べた。
さらに、「中国(中共)政府と関係のあるアカウントは、公開・非公開を問わず、AI技術を活用し、情報操作を行っている」とも付け加えた。
DeepSeekに関する検索が急増
Graphikaによると、DeepSeekが1月20日にAIモデルを発表した直後は、X上での検索や関連情報の投稿は小幅な増加にとどまっていた。しかし、1月24日以降、投稿数が急増し、週末にかけてさらに拡散が加速したという。
Google Trendsのデータでも、1月20~26日にかけてDeepSeekに関する検索が急激に増加 していたことが確認されている。
ブルームバーグは、この動きについて 「異例のタイムラグ」 を指摘している。
報道によると、DeepSeekのニュースが最初に報じられた1月20日当初は、市場への影響はほとんどなかった。しかし、1月24日になると関連報道が急増。1日で878本の関連記事が出され、前日比で600本近く増加 した。
その後の週末にかけてSNS上での拡散が活発化し、1月26日の夜にはGoogle Trends上で「DeepSeek」の検索がピークに達した。
そして27日、米国のハイテク株が突如急落。これを受けて、DeepSeekの話題が米国市場に影響を与えた可能性が浮上した。
市場への影響—AI関連株の大幅下落
1月27日、世界中の投資家が米国のハイテク株を一斉に売却。
特に、半導体メーカーエヌビディアは、1日で約6千億ドル(約90兆円)の時価総額が消失し、ウォール街史上最大の1日での市場価値の損失を記録した。
報道によると、DeepSeekが主張する 「低コストでAIを訓練できる」 という説明には多くの疑問があり、さらに 高性能チップを使用せずに訓練を行ったとされる点についても不透明な部分が多い という。
米政府がDeepSeekを調査
米国では、DeepSeekに関する知的財産権の侵害やOpenAIをはじめとする米国企業の技術を不正に入手した可能性について、懸念の声が上がっている。ただし、これらの疑惑については現時点で明確な証拠は示されていない。
また、米国商務省は現在、DeepSeekが米国の輸出規制対象となる半導体を違法に使用している可能性について調査を進めている ことが明らかになった。
今後の展開次第では、AI分野における米中競争が新たな局面を迎える可能性もある。
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