デンマーク首相 米国と北極防衛に協力 グリーンランドは外国献金を全面禁止

2025/02/05 更新: 2025/02/05

2月3日、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は、グリーンランドの売却を断固として否定し、欧州連合(EU)に対し、アメリカの発言に強く対応するよう求めた。

一方で、フレデリクセン氏は「中国共産党(中共)が国家安全保障に脅威を与えている」とするアメリカの見解には同意し、北極地域の防衛強化を約束した。

トランプ米大統領が、グリーンランドの獲得を視野に軍事・経済的な措置を検討する可能性に言及したことで、国際社会の注目を集めている。

フレデリクセン氏は、アメリカが北極圏の安全保障に懸念を抱くのは理解できるとし、中共とロシアの活動が同地域で活発化していることを認めた。

米AP通信の報道によると、フレデリクセン首相は「アメリカの見解に全面的に同意する。北極地域は、防衛・安全保障・抑止の面でますます重要になってきている」と述べた。

また、デンマークとアメリカがグリーンランドの安全保障体制をより強固にできるとの考えを示した。

デンマーク政府、北極防衛に20億ドル規模の投資を決定

先週、デンマーク政府は、グリーンランドおよびフェロー諸島(Faeroe Islands)の自治政府と協議し、安全保障強化計画に合意した。計画の予算は約146億デンマーククローネ(約20億ドル)にのぼる。

デンマーク国防省の発表によると、この計画には以下の施策が含まれる。

・北極海域に3隻の新型海軍艦艇を配備

・遠隔監視用のドローン2機を追加導入

・衛星監視システムの強化

NATO事務総長「トランプ氏の見解は正しい」デンマークに交渉を促す

NATOのマーク・ルッテ事務総長は、グリーンランドをめぐるトランプ氏の見解を支持し、特に防衛の観点から「トランプ氏は正しい」と評価した。

さらに、ルッテ事務総長はデンマーク政府に対し、「トランプ大統領と直ちに交渉を開始するべきだ」と促した。

同氏は、北極圏の防衛は、グリーンランドにとどまらず、アイスランド、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、カナダにも関わる国防上の重要課題だと強調した。

一方で、グリーンランドのムーテ・エゲデ自治政府首相は、独立を強く望んでおり、アメリカの領土になることも、デンマークの統治下に留まることも望んでいないとの立場を改めて表明した。

グリーンランド自治政府は、かねてよりデンマークからの完全独立を目指しているが、今回の議論がその動きを加速させるかどうかが注目される。

グリーンランド 外国からの政治献金を全面禁止へ—地政学的リスクを懸念

グリーンランド政府は2月3日、地政学的利益を守るための緊急議会提案を発表し、政党が外国や匿名の個人から政治献金を受け取ることを全面的に禁止する方針を示した。この法案には欧州評議会の勧告を受け、政治活動での個人献金に上限を設ける規定も含まれた。

英紙フィナンシャル・タイムズによると、この禁止措置は、トランプ氏のグリーンランド購入発言を受けたグリーンランド政府の最初の具体的な対応である。提案された新法は、デンマーク国会およびグリーンランド議会の現職議員や候補者、さらに今後のデンマーク国会・グリーンランド議会選挙に出馬する候補者すべてに適用される。

グリーンランドは4月6日に総選挙を予定しており、政府は外国資金の影響に対して警戒感を強めている。政府関係者は、「他国では少額の献金でも、人口5.7万人のグリーンランドにとっては『巨額』の資金になり得る」と警告した。

政府の声明によれば、外国または匿名の献金は、グリーンランドの政党の選挙活動における公平性を大きく損なう可能性がある。

新提案によると、政党が年間で受け取る個人献金の総額は20万デンマーククローネ(約433万円)を上限とし、単一の個人または団体からの献金は2万デンマーククローネを超えてはならない。

この措置は、特定の外国勢力や大口献金者がグリーンランドの政治に影響を及ぼすのを防ぐことを目的としている。

北極の戦略的重要性が増大

近年、地球温暖化による氷床の融解が進み、北極航路の通航可能期間が長くなりつつある。その結果、北極圏は国際貿易や軍事戦略の面でますます重要な地域となっている。

ルビオ米国務長官は1月30日、米国のトーク番組メーガン・ケリー・ショーに出演し、北極が今後の海上輸送の要所となると指摘した。

ルビオ氏は、中共が北極航路の利用を強化し、国有企業を通じてグリーンランドでの影響力拡大を狙っている可能性があると警戒。その上で、「米国はこの地域を守るための対策を講じる必要がある」と強調した。

 

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