マクロン大統領 仏の「核の傘」を欧州に拡大 検討へ 「米が味方にならない際に備える必要」

2025/03/06 更新: 2025/03/06

マクロン仏大統領は5日、自国の核抑止力をヨーロッパ防衛に拡大することについてヨーロッパ各国と議論を進める考えを示した。ヨーロッパの安全保障において、対米依存からの脱却を加速させたい考えだ。

マクロン大統領は5日夜、6日にブリュッセルで開かれるヨーロッパ連合(EU)特別首脳会議に先立ち、国民に向けテレビで演説を行い、「フランスが有する核の抑止力を活用して、ヨーロッパの同盟国などにも拡大することについて戦略的議論を開始する」と表明。フランスの「核の傘」をヨーロッパに広げることについて検討を始める考えを明らかにした。

ロシアが巨額の軍事費を支出し軍事力を大幅に増強していることを挙げ、「現下のロシアがウクライナだけで止まると誰が信じられるだろうか」と述べ、ロシアによる脅威がヨーロッパに差し迫っていると訴えた。

「アメリカが私たちの味方であり続けると信じたい。しかし、もしそうでなくなった場合にも備える必要がある」と語った。核兵器使用に関する最終的な決定権は、フランス大統領に委ねられることになるとしている。

この検討についてマクロン大統領は、中道右派「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」を率い、次期首相が確実視されるメルツ氏からも要請があったと明かしている。

従来からトランプ米大統領が、NATO加盟国の防衛費負担の不均衡を強く批判していることを受け、ヨーロッパ諸国は防衛政策の見直しを迫られている。

トランプ大統領は、特にドイツやフランスなどの加盟国が国防費を十分に支出していないと指摘し、「アメリカはヨーロッパの防衛を一方的に負担している」と批判した。

2018年のNATO首脳会議では、加盟国に国防費をGDPの2%以上に引き上げるよう強く要求し、達成しない場合はアメリカはNATOを脱退する可能性を示唆した。  

フランスは約290発の核弾頭を保有しており、米ロに比べて少ないものの、依然として強力な抑止力を維持する規模となっている。フランスの核戦力は、海洋・航空戦力を中心とした「二本柱(デュアル・コンポーネント)」で構成されている。

フランスは「独立した核抑止力」を国防戦略の中核に据え、NATOの核共有体制には参加していない。

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