中国では今、景気の低迷による「史上空前の就職難」が大きな社会問題になっている。
実家に戻り親の支援に頼って生計を立てている人もいるいっぽうで、故郷の家族の生活を支えるために出稼ぎをしなければならない人もいる。
仕事が見つからず、所持金を使い果たし空腹で路上で気絶する失業者を捉えた動画がSNSに多く投稿されており、なかには、あまりにお腹が空いたため、苦しさのあまり橋から飛び降りようとする人もいた。
3月4日、広東省の個人経営の飲食店に、ある仕事探しの出稼ぎの若者がやってきた。その時の若者と店主のやりとりを記録した監視カメラ映像はSNSに投稿されて、話題になった。
「働かせてください! 給料はいりません!」
この日、店へやってきた若者は、食事中の店主に対し、「すみません、こちらではまだ人手足りていますか?」と声をかけた。
すると、店主は「人手なら足りている」と断った。
諦めきれない男性、彼は再度、「自分はどんな仕事でもしっかりやりますし、何でもやります」とお願いした。
それでも店主は「悪いが、もう雇ってしまった」と再度断る。
2度断られた男性は、とてもがっかりしたように見えた。彼は一度、店の出口に向かったが、そこで少しためらったのち、振り返って、再度勇気を振り絞って店主にこう懇願した。
「すみません、ここで2日間だけ働かせてもらえませんか? 給料はいりません。ごはんだけいただければ十分です、2日経ったら離れますから…」
店主は「え? ごはんだけでいいのか?」と再度確認する。
すると男性は「そうです、2日間ごはんさえいただければ大丈夫です。これ以上何もいりません」と約束した。
店主は続けて「あんた、どこから来たの? なぜここまで落ちぶれたんだい?」と尋ねた。
「自分は湖南省出身で広東省には仕事を探しに来たけれど、見つかりませんでした。1日以上食べていません。ここで2日働いて、ごはんをいただいて、力が沸いたら別の仕事を探しに行きます」と男性は答える。
目の前の若者がお腹を空かせているとわかった店主は、すぐに厨房に向かった。
それを見た男性は「先に仕事をしますから」と止めるが、店主は「いいから、外で待ってて」と言い、厨房へ向かった。
男性は店主に対して、「ありがとうございます」と何度も頭を下げた。
しばらくして、店主は大盛りのごはんとおかずを出した。男性のガツガツと食べる様子は動画越しでも、その惨めさがひしひしと伝わってくる。
(その時の様子)
動画はここで終わったが、出稼ぎ労働者の大変さと心優しい店主のこの「物語」は中国SNSですごい勢いで拡散された。
「店主はいい人だ! その店はきっと繁盛するよ! きっといいことがある!」と店主の善行に多くの称賛が寄せられた。
この店主は後に中国メディアの取材に対して、こう話している。「あの男性は足が悪いみたいだった、嘘を言っているようにも見えなかったから、メシを食わせた」「『今後ごはんを食べるお金がないときは、うちに来なさい、代金はいらないから』と彼に伝えた」「たった一人で出稼ぎするのは本当に大変なことだ、自分も昔はそうだった、他人に助けられてここまで来たんだ」
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