カナダグース「米関税の影響は限定的」と発表 株価は急騰

2025/05/22 更新: 2025/05/23

カナダグース・ホールディングス(Canada Goose )は5月21日、自社のサプライチェーンがカナダ国内にあることから、アメリカによる関税措置の影響は極めて限定的であると明らかにした。同日、同社の株価は急騰した。

カナダグースはカナダ発の高級ダウンウェアブランドであり、北米市場では1着あたり平均900ドルで販売されている。価格の高さから「ダウンのエルメス」とも称され、高い人気を得ている。特に1500ドルのパーカ(厚手防寒着)は象徴的な商品である。

関税の影響は軽微 カナダ国内生産を維持

ブルームバーグによると、カナダグースの幹部は「約75%の製品がカナダで製造されており、ほぼすべての工場がアメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の基準を満たしているため、アメリカの関税対象には該当しない」と説明している。

最高経営責任者(CEO)のダニー・リース氏は投資家向けの電話会議において、「当社製品の大部分はカナダ国内で製造しており、現時点ではアメリカが最近発表した輸入関税の影響は受けていない」と述べた。

カナダグースはオンタリオ州、マニトバ州、ケベック州に計7つの工場を保有しており、同国における縫製および裁断産業の労働者のおよそ5分の1を雇用している。同社は職人の技能と品質を重視しており、海外移転の計画はないとしている。

同日、カナダグースは最新の四半期決算を発表し、売上高および利益がいずれもウォール街の予測を上回った。これを受け、ニューヨーク証券取引所における同社株は29.6%上昇し、2021年2月以来最大の上昇幅を記録した。

業界全体は関税圧力に直面

トランプ米大統領は、ほぼすべての貿易相手国からの輸入品に対し10%の基本関税を課す方針を打ち出しており、相互関税の発動は90日間猶予されている。多くのアパレル企業が中国やベトナムといったアジア諸国に生産を依存しており、これらの地域が関税強化の主な対象となっている。

カナダグースの一部製品はヨーロッパで生産されているが、ヨーロッパもまた関税引き上げの対象となる可能性がある。しかしながら、同社幹部は「これらの関税による財務的な影響は極めて軽微である」と強調している。

高級ブランドとしての地位を確立

1957年創業のカナダグースは、プレミアムなダウンジャケットブランドとして世界的な名声を得ており、多くの著名人やファッション関係者からも支持を集めている。同社は本物の素材を用い、製品の設計から製造までをカナダ国内で完結させている。ブランド名の「Canada Goose(カナダグース)」は、カナダの国鳥であるカナダガンに由来している。

また、同社は基本的に割引販売を行っておらず、これはラグジュアリーブランドに共通する「高い価格維持力」という特徴を示している。中核商品であるパーカの代表格「スノー・マントラ(Snow Mantra)」は、極地で作業するカナダの労働者のニーズに応じて設計された、高い保温性を誇るジャケットである。

国産(カナダ製)にこだわり、品質管理を徹底

カナダグースは、コスト削減を目的とした海外生産への移行には否定的な立場を取り続けており、「顧客は自分が着るジャケットがどこで作られたかを重視している」との信念を持っている。

ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、同社は設計チームの近くに工場を置くことで製造工程の管理を徹底しているという。元従業員および現職者の証言によると、デザイナーは頻繁にトロント本社の1階にある工場を訪れ、製品が仕様どおりに作られているかを確認しているという。